アルコール依存症186
「ど、どうあっても脱獄不可能ならば、婆さんを助ける最後の手段として、俺の命で購う事は仕方ないではないか…」と行雄は言った。
悪友が物憂い感じで瞼を伏せ尋ねる。
「その最期の嘆願を言った後、お前は婆さんを甦らせる為ならば、死んでもいいのか?」
ベッドに座ったまま行雄が涙ぐみ答える。
「逆に言えば、それが俺の本来の夢と希望じゃないか」
悪友が瞼を伏せたまま言った。
「しかし命有っての物種だろう。お前は愛しい婆さんと添い遂げたくはないのか?」
行雄が涙を拭い答える。
「ど、どうあっても脱獄不可能ならば、婆さんを助ける最後の手段として、俺の命で購う事は仕方ないではないか…」
悪友が瞼を伏せたまま死刑囚を一瞥してから言った。
「お前が老人連合の奴らに最期の嘆願をした時点で、何かしら脱獄への突破口が見出だせる可能性はあると俺は思うのだが…」
行雄がかぶりを振り言った。
「逆に言えば、それは 婆さんが植物人間ではなく、まともな意識を持っている場合だろう。今までの推移から見てその可能性は殆ど無いと俺は思うのだ。それならば腹を括るしか無いじゃないか」
悪友が唸りを一声上げてから尋ねる。
「一縷の望みも捨てるのか?」
行雄が恭しく相槌を打ち答える。
「ここまで来たら仕方ないではないか…」




