181/260
アルコール依存症181
「分かったわ。主治医の先生に私の方からお伺いを立ててみるから待っていなさい」と背の低い看護師が言った。
悪友がナースコールを押すと、背の低い看護師がドアを解じょう、押し開き現れたので、悪友はすかさず用件を切り出した。
「こいつが死刑執行前の嘆願をするにしても、こんな状態じゃ出来ませんよね。完治する薬は処方されているのでしょうか?」
看護師が答える。
「今は禁断症状を収めるのが先決だから、安定剤が処方されているのよ」
悪友に目配せをしてから死刑囚が尋ねる。
「酒を毛嫌いする薬は処方されているのですかね?」
看護師が訝る。
「いないわ。何故そんな薬が必要なわけ?」
死刑囚を制して、再度悪友が尋ねる。
「アル中のままではまともな嘆願が出来ないのではありませんか、看護師さん?」
間を取るように看護師が行雄の脈をとりながら軽く頷き答える。
「分かったわ。主治医の先生に私の方からお伺いを立ててみるからあなた方は待っていなさい」




