アルコール依存症178
「それは確かにそうだが、あの看護師の言う通り、あんたの友達の最期の嘆願がまだ決まっていないのも事実だし、あんたの友達の最期の望みは一体何なのだろう。酒を飲む事か?」と死刑囚が悪友に尋ねた。
看護師が立ち去った後悪友が腕を組み嘆息して言った。
「そうだな。何処の誰にどう殺されようが、自殺しようが、事故に遭って死のうが、どんな死に方をしようが、迎える死は死以外の何物でもなく、それ以上でもなければ、それ以下でもなく、外の何物でもないものな。しかし俺達はこいつの愛しい婆さんを助け出す大義名分があり、それを一縷の望みと成しているからな。逆に言えば死んでなんかはいられず、何とか突破口を見出だす為には婆さんの行方を特定するしか道は無いからな。俺の推理はその為のものなのだが…」
落胆顔の死刑囚が顎を引きおもむろに頷き答える。
「それは確かにそうだが、あの看護師の言う通り、あんたの友達の最期の嘆願がまだ決まっていないのも事実だし、あんたの友達の最期の望みは一体何なのだろう。酒を飲む事か?」
悪友が眠っている行雄を慈しむように見詰めとつとつとした口調で答える。
「禁断症状が抜ければ文句無しに婆さんの事だろうが、このままの状態ならば最期の嘆願も、酒しかないだろうな、多分…」




