アルコール依存症175
「ちょっと待ってくれ。あんたの友達の婆さんは植物人間なのだろう。それに純正な思惑があると言うのは矛盾した話しではないか?」と死刑囚は悪友に尋ねた。
死刑囚が尋ねる。
「婆さんの存在を確かめる秘策は何かあるのか?」
悪友が苦笑いして答える。
「秘策では無いが気がついた事柄を順次言えば、まず二点、死刑執行前の嘆願が通る事と、こいつの命は死刑執行まで失われてはならない事が鋭意分かったわけだ」
死刑囚が頷き促す。
「先を続けてくれ?」
悪友が行雄を一瞥してから死刑囚に視線を戻し言った。
「つまり、こいつは死刑執行以外の事で死んではならず、婆さんを甦らせる事と併せて、死刑執行前の嘆願を陳述しない限り、死刑執行にはならないと言う事だ。それはつまりあんたも同じ理屈になると俺は思うんだ」
眉をひそめ死刑囚が言った。
「それはつまり俺もあんたの友達と同じように、嘆願を陳述し、誰かを甦らせる最期の時までは死刑執行は無いと言う事柄に結び付くが、しかし逆に言えばあんたは既に嘆願を陳述しており、いつ死刑執行されてもおかしくはないと言う事だろう?」
悪友が息をつき頷きいみじくも言った。
「俺が嘆願を陳述して、俺達三人の命が一つとなり、それがこいつの愛しい婆さんを甦らせる為に必要な条件、方便ならば、今迄俺達が行って来た行い全ては婆さんを甦らせる為の道筋、方法論であると類推措定出来ると思うのだ。その類推推理が当たっていなければ、おそらく俺の死刑執行は直ぐさま為されるだろうな」
死刑囚が再度眉をひそめ尋ねる。
「つまりあんたの友達の愛しの婆さんは老人連合に取って欠かす事の出来ない重要人物であり、俺達三人の命が婆さんを甦らせる為に必要ならば、俺達三人は死刑執行の瞬間まで死なないという事か?」
悪友が瞼を伏せ相槌を打ち答える。
「俺の読みが外れていなければそうなるわけだ」
「外れればあんたは直ぐさま処刑されるわけだな?」
悪友がゆっくりと顎を引き答える。
「そうだ。後は老人連合に取って最重要人物である、こいつの愛しい婆さんの思惑次第となると思うのだ」
死刑囚が訝る。
「ちょっと待ってくれ。あんたの友達の婆さんは植物人間なのだろう。それに純正な思惑があると言うのは矛盾した話しではないか?」
悪友が首を振り言った。
「いや、婆さんは植物人間になっていようが、己の超人的不死身の思惑一つで老人連合全体を機能させ、動かせる霊媒師ならば、矛盾など一つも無い道理となるわけさ」
死刑囚が驚嘆の表情を作り言った。
「あんたの友達の愛しの婆さんは、不老不死の超人不死身霊媒師である事を貫徹するために、植物人間になり、俺達三人の命を礎にして甦る事が必要ならば、それはまるで脱皮のような蘇生術なのか?!」




