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アルコール依存症174
「ロボットに成り切れない生身のロボットもどきが奴らか?」と死刑囚が悪友に尋ねた。
ベッドで昏々と眠っている行雄を尻目にして悪友が死刑囚に語りかける。
「やはり植物人間になった婆さんはこの病院にいるな」
死刑囚が頷き答える。
「奴らのあの人形然とした泳ぐような瞳が論拠になっているのか?」
悪友が恭しく頷き言った。
「そうだ。看守と言い、あの看護師達と言い、同じような瞳の動きをしたではないか」
死刑囚が身震いしてから言った。
「二人の看護師が揃って同じ瞳の動き方をしたのは、無機質で少なからず薄気味悪い感じだったが、あれは嘘をついた時の心の動揺を示しているのかもしれないな…」
悪友が同意する。
「それは正論だと思う。いくら冷徹に振る舞っていても奴らとて人間の端くれならば、情けはあるからな。その情けが心の窓たる瞳の揺れとなって顕れているのだろう、きっと」
死刑囚が頷き言った。
「ロボットに成り切れない生身のロボットもどきが奴らか?」
悪友が相槌を打ち答える。
「そうだ」




