アルコール依存症136
「敵の回し者を信じる程俺達は愚かではないし。当然ここでは俺達の話しが老人連合の上層部に筒抜けならば、脱獄など絶対に不可能な道理にはなるしな」と悪友はいみじくも言った。
死刑囚が脱獄を再度否定する。
「例えば脱獄に成功してもここは水中都市だし、結果として逃げ道はなく、又捕まるのが落ちならば、やはり脱獄する事自体が無意味だと俺は思う」
悪友が暫し黙考してから尋ねる。
「あんたは何故この監獄に移管されたのだ。俺達に様々な情報を入れて死ぬ覚悟をさせる為にか?」
死刑囚が首を傾げ答える。
「いや、俺はこの監獄が死刑寸前の、つまり死刑執行前の監獄だと聞かされたんだ。だから脱獄は無理だと強調しているだけで、それ以外の思惑は無い」
悪友が猜疑心を以って言う。
「しかしそれを信じろというのは無理な話しだろう。敵の回し者を信じる程俺達は愚かではないし。当然ここでは俺達の話しが老人連合の上層部に筒抜けならば、脱獄など絶対に不可能な道理にはなるしな」
死刑囚が複雑な顔付きをしてから言った。
「信じる信じないは自由だが、俺は自分の考えを素直に言っている、あんた方と同じ死刑囚だという事さ」
悪友がいみじくも尋ねる。
「同じ仲間だと主張し、同類相憐れむを実践しているのか?」
死刑囚が頷き答える。
「まあ、そんな処かな」




