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アルコール依存症128
「あんたの愛しの婆さんを甦らせる為に、私はあんたをここに呼んだのさ」と看守と一緒に現れた老婆が行雄に向かって言い放った。
二人の騒ぎに、再び看守が現れた。だが看守は一人ではなく、一人の老婆を引き連れていた。
その老婆を見て行雄が焦点を定め言った。
「お前は婆さんではない。誰だ、あんたは?」
老婆が微笑み答える。
「残念ながら、私はあんたの愛しの婆さんではないが、あんたをここに呼んだのは、確かに私だ。だから私は結果として、あんたの愛しの婆さんという事になるわけだ」
唖然としている悪友を押し退け行雄が喚く。
「婆さんは何処だ。婆さんを出せ!」
そんな行雄を品定めするようにじっと見詰め老婆が言った。
「あんたの愛しの婆さんを甦らせる為に、私はあんたをここに呼んだのさ」
行雄が喚く。
「それはどういう意味だ?!」
老婆が首を振りいみじくも言った。
「それは言えないね。後のお楽しみさ。あんた方はもう少しここでゆっくりとするんだね…」




