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アル中の歌  作者: 岩本翔
104/260

アルコール依存症104

「それは俺がやる。後気休めかもしれないが火を焚いて、緊急時には木に登る作戦を取ろう」と悪友が小刻みに震える行雄に向かって言った。

行雄が禁断症状を引き起こしているのも構わずに、二人は手錠を掛けられ目隠しをしたまま車で刑場に連行された。




堅牢な鉄条網に覆われた刑場は鬱蒼とした森で、奥行きが深く、ところどころにオレンジ色のナトリウム灯が設置されているのだが、そのナトリウム灯が逆に森の闇を際立たせ、言い知れぬ不気味さを醸しだしている。




二人は目隠しを外され湖畔に隣接した山林に入った時と全く同じ装備とライフル、弾丸を与えられ、鉄条網の中に半ば強制的に放り込まれた。





小刻みに手が震えている行雄が言った。





「畜生、手の震えが止まらねえよ。酒さえ飲めば何とか凌げるのにな」




悪友が天を仰ぎ言った。





「どうやら地上は夜らしいな。空としての硝子が見えない」





行雄がため息をつき言った。





「そんなのんびりとしてていいのか。ここには猛獣がいて、そいつらが既に俺達の臭いを嗅ぎ付けているのかもしれない局面なのだぞ」




悪友が深く深呼吸してから言った。





「とりあえず、この堅牢な鉄条網を背にして、ここでライフルを構え、敵の襲撃を待つしかあるまい」





行雄が手の震えを止める為に息を吐きだしてから言った。





「俺はこの有様だからライフルなんか使えないぞ?」





悪友が答える。





「それは俺がやる。後気休めかもしれないが火を焚いて、緊急時には木に登る作戦を取ろう」





小刻みに震え続ける行雄が頷き答える。





「わ、分かった」

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