新たな旅立ちをすることにしましたが…
随分ご無沙汰しております。書きたい気持ちは塵が積もるほどの思いでしたが、如何せん、受験がありました。
無事合格する事ができましたのでこれからは早めに更新していきたいと思います。
これからもよろしくお願いします。
俺たちの学校には最低限のきまりやルールしかない。例えば『髪を染めない』とか。皆の学校にもあると思う
そういうきまり故か、基本的に黒髪の人しかいない様だ。因みに俺の好きな髪色は金。金髪。嗚呼、金髪の超絶可愛い子来てくれないものだろうか。
黒髪といっても、やっぱり地毛で多少茶髪っていう人もいるようで。もう一回因むと2番目に好きな髪色は茶色。普通っぽさと異色な感じが絶妙に混じって、そこから生み出されるのは『茶』。
茶髪にも色々あって、明るい茶、暗い茶、それは人それぞれ。その色の明るさから人の性格が分かることもあるからなんか面白い。
今俺の目の前に立つのは、キャラメル色の髪を持つ、容姿端麗、学力それなり(?)、人望残念美少女。本人曰く、髪色は地毛らしい。因みに茶髪は好きだがこいつが好きなわけではない。あくまで茶髪が好きなので勘違いしないように。
勘違いしないように。
そんな二人がいる場所。1階から降りることができる地下室。人なんて滅多に寄り付かない禁断の場所だ。
何十年前かは知らないが、長きにわたって問題児を閉じ込め続けた伝説の監獄。いや、本当かは知らないので信じないほうがいい。いうあ、信じたくない。
背筋が凍るほど寒い場所で、錆び付いた丸椅子に座り、錆び付いた金属製の机に肘をつくのが俺、長谷川叶。
事務室にありそうな椅子に腰を掛け、事務室にありそうな机に向かう彼女、俺の好きな髪色ランキング2位に君臨する髪を持つ名前の知らない彼女。
そんなイチャラブ展開な俺たち。場所が場所なわけであって。
今、問いかけられる。
雰囲気を察するに、何か重たく、いかにも拷問が始まりそうなこの瞬間。
「名前を教えてくださいってば!」
そんな物騒なものではなく、とてもとても可愛らしかった。
「お前にとって俺の名前は『そんなこと』に分類されているんだろ?」
「むー!」
というやりとりを繰り返すのも片手の指では数え切れないほどやった。まあ、原因は8割がた俺にある。残りの2割の行き着く先は誰も知らない。こんな様子じゃ俺も性格悪いから友達できないみたいに思われるのかな。
尚も「むー」と喘…呻き続ける小動物。身長は下の中位だと思われるので小動物扱いしても文句は言えないだろう。
そろそろむーむーふごふご言われるのは耳障りだし、名前教えるのは減るもんじゃないしそろそろ教えてやってもいいかな。
「一つ条件がある」
条件付きでした。
彼女は「ほへ?」と首を傾げる。
ここで鬼畜みたいな条件は出さないよ?そこまでSじゃないですし。
「まずはお前から名乗ってもらおう!」
ちっさ。俺、器ちっさ。
何処ぞの悪役みたいなセリフに「えー」とだけ相槌を打ち、口を開いた。
「千里花音です。好きなものはイチゴとチョコ。誕生日は7月7日です」
「そんな情報きいてないんだけど…」
「さて、じゃあ名前お願いします」
「俺の話聞けよ!?」
という言葉は呆気なくスルーされて。
これはもう言わなければいけない空気になってしまうものであって。
俺は頭を掻くと、少しムスッとした体でいう。
「長谷川叶…。好きなものはイクラだ。誕生日は12月15日」
「そんなこと聞いてないんですけど」
「お前が言うなお前が!」
花音は「あはは」と笑い、椅子にまた深々と沈んでいった。
「そういえば、この部屋に椅子が何個かあるけど」
俺は先程から疑問に思っていることを尋ねる。いや、椅子に座ってから言うのもなんか変だけど。
「他に部員はいるのか?」
そう、部活とは同じ目標を掲げ、同じ道を歩まんとする同志が幾つか集まり結成される、謂わば組織みたいなものだ。
…が、見たところ今確認できる部員は俺を含めた二人のみ。
そして、放課後であるこの時間に来てないということは、来る確率のほうが低い。寧ろ来ない確率のほうが高いのではないか。
つまり、この部活、部員数足りてないだろ…
俺の単刀直入な問いに対し、花音はというと。
「それってそんな重要なことですか?」
魂が抜けたかの様に無心で机に伏せていた。
「いやいや!めっちゃ重要なことでしょ!?」
「私、一人でできるものだと思っていました」
机に顔を埋めているので声が聞き取りずらい。
「それで、それって重要なことなんですかね…?」
「もういいや…」
半ば諦めかけていた俺だったがもう一つ。
「つまり、お前一人っていう事だよな?」
「いえいえ、あなたが入って私は抜けます」
「なんだよそれ!?アメーバ○グかよ!?」
…と、簡単に説明しておこう。
時は3年前に遡る。
当時12歳だった叶君は某アメーバゲームにてネットで充実した日々を過ごしていた。やはりオンラインなので、部活と似た様な集団『グループ』が存在する。まあ、部活みたいに厳しいもんじゃないけど。同じ趣味を持った者同士集まる点では同じだろう。このゲームでは『コミュニティ』と呼ばれていた。
作りたてのコミュニティはどこもかしこも人一人でも入って欲しいのか、必死に募集していた。そこで、俺の趣味に合ったコミュニティを見つけたんだ。当然入会をクリック。
覚束ない手つきでキーボードを操作する。
「よろしくお願いします」と、一言だけ。
そう、その瞬間。
『双眼の小デブが退会しました』
………
おい。
なぜ退会したのかは2ヶ月くらい経った頃。
俺だけ退会出来なかったのだ。このゲームの仕様上、一人のコミュニティから脱退する事ができない様だ。
…よく考えてみれば、コミュニティ名が「座魔亜」だったから気づくべきだったのだが、如何せん、漢字が読めなかったのであろう。
「じゃあ後は任せました…」
「いやいや、逝っちゃダメでしょ!」
バタンキュ〜と倒れ込んだ場所にあったのはベッド。しかもキングサイズ、二人用。意味わからん。
まあ、少しでも快適に過ごしてもらいたいという配慮からなのだろう。じゃあ入れるなよっていう話なんだけどさ。にしては綺麗だな〜。まだ使用されるのか?
「ま、まあ、部員に関してはこれから増やしていけば問題ないはずです」
どこか吹っ切れたのかドヤ顔をつくる。
「お前がそれでいいと思うんならそれでいいんじゃないか?それより、よく廃部にならなかったな。人数足りないと廃部になるものじゃないのか?」
「超常現象研究部は一人でも活動できるらしいので…」
「それ、俺を勧誘する意味あったか?お前一人でできると思うんだが」
「………」
「分かった分かった。抜けないからそんな目で見ないでくれ…」
仮にもこいつは美少女だぞ。そんな潤んだ目で見つめられたら世の中の男共が黙っちゃうぞ。
…キーンコーンカーンコーン
と、この日も1日の終わりを告げる鐘の音が響いた。この学校のチャイム、抑揚というか高低の差がないから締まりが悪い。
それは、俺と花音の会話も同じで。
「じゃあ、明日からは少しでもいいから勧誘するか」
無理矢理締める。終わり良ければすべて良し。うん。
「そうですね…。流石に二人というのはその…つまらないものですし…」
少し顔が染まっているのは夕陽が注がれているからだと思う。ここ地下だし。
我が校のチャイムとは逆に、いい感じに締まった今日の部活。新たな目標も見つける事ができたので活動内容的には濃厚だった。
「さて、帰るか」 「じゃあ、寝ましょう」
「は?」 「え?」
「何言ってるんだ?」 「何言ってるんです?」
「…………」 「…………」
「てか、持ってきたのお前かよ!なんで二人用なんだよ!?」
「いずれ使う時が来るとおもうので」
「絶対に来ねえからな!?」
花音が初めて家に来た、いや、押し入れた?当時の落ち着きがあり、品格が漂う彼女はどこへ行ってしまったのだろう。そんなことを考えると不意にため息が漏れる。
まあ…なんだかんだで楽しいからいいんだけどさ。
「それじゃあ俺はそろそろ帰るな」
「分かりました。また明日です」
「おう、またな」
やっぱり、俺と花音ではいい締まりが生み出せないらしい。あまり期待せずに、温かい目で、俺の学校生活を見届けて欲しい。
むー。と言わせてみたかった。故意によるものだ。
いやいや、可愛ければ問題…はい。すいません。