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社会的立ち位置が危うくなりましたが...

先生のありがたい説教を仕方なく受け取ってやった俺はトホホ...と教室へと向かっていた。

音をあまりたてないよう開けたつもりのドアは悪戯のようにガラガラと鳴く。と同時に、皆が一斉にこちらに眼差しを送る。そして、爽やかイケメン男子が歩み寄る。クラスの中心人物なのであることは、いっしゅんで見てとれる。

「さっきサイコーに面白かったぜ!これからよろしくな!」

親指をピシッとたて、つき出してくる。イケメンはこう言うことをいっても似合うのが、少々鬱陶しい。

呆然と突っ立っている俺を察してか、「それじゃあな!」とだけ、言い残し席に戻る。静かだった教室は賑やかさを取り戻した。

とは言え、今はただの授業と授業の休み時間なので、直に授業開始のチャイムが鳴り、皆席に座るのだろう。そう、席。

ここで、『席』という単語が俺の脳内で何十にもリピートされ...。

俺の席って、どこだ?

落ち着いて思い出してみよう。これで教室にはいるのは2度目のはず。1度目は自己紹介をしていた。つまり、当然ながら席には座っていない。もっというと、確認すらしていない。

おい、そこ。今ウロウロしてんじゃねーよ。とか思っていたな。席がわからねーんだよ。

こうなれば、一番最後、空いていた席が俺のになるはずだ。

と、教室の後ろでウロウロしている俺と、窓際の一番後ろの女生徒と目が合う。

なぜか冷たい目をして、彼女の口は開かれた。

「何を探しているんです?ハイエナみたいですよ?」

思ってもいない言葉が飛んできて、若干戸惑う。彼女の言葉はまだ終わってはいなかった。

「そんなウロウロしても何も出てきませんよ?ハイエナは匂いで探すものです」

多少のドヤ顔からは意味不明な自信が満ちているが、そんな知識中学生でも知っているはずだ。ソースなどいらん。

それ以前に初対面の人にハイエナはないだろ。彼女のドヤ顔にも怒りがあったので、俺も口を開く。

「初対面の人に向かってハイエナはないだろ。そもそもハイエナは群がって行動するものだぞ」

彼女は一瞬顔を掠める。

ここで終わりにしておけばいいものを、俺の口は閉じなかった。

「今の俺の状況を見るとぼっち。つまりハイエナという表現には無理があるんだよ!

それより、俺に友達ができると思うか!?思わないだろ!!俺はハイエナにはなれないんだよ!!ああ、できることならハイエナになりてえよ、畜生ッ!!!」

「えっと、その...すいません...」

彼女がなぜ謝ったのかは周囲を見れば一目瞭然だった。

同情を送る目、俺とは関わりたくないという目に加え、思想まで入り込んでくるのだから、嫌でもわかる。

こうなっては、責任をとることができるのは俺だけなので、深々と一礼をし、

「えっと、その...すいません...」

かくして、早くも俺の居場所はなくなりつつあった。



*

「あ、あと席は私の隣ですから」

「最初からそう言えよ...」

それが最後の会話となり、家に無理矢理連れ込んだ(深い意味はないよ?)こともあってか、一言もしゃべらぬまま、一時間の授業を過ごした。

皆が待ちに待った昼食。

この学校では、弁当を持参する人もいれば、購買、食堂というやけに待遇がきいている、万能な学校であった。

教室で昼食をとるのは抵抗があってか、基本的に食堂へと足を運ぶ。

勿論俺は誘いを受けるわけがなかった。

俺のようなぼっちは確実に教室へと取り残される。

何人かのグループが数個結成され、教室を去っていく。

ガランとした教室はとても静かだった。

そんな聖地に取り残された俺。

----と俺のとなりの席の名前も知らない美少女。これは大分予定が狂った。

流石に便所飯は辛いので一人だったら教室で済ませようと思ったのだが、それは無理っぽい。

一人で食べられる場所と言えば、屋上だろうか。と思い付いたときには既に体が動き始め、ドアを通過しようとしたところで、

「暇なら、ついてきてください」

「え、あ、ああ」

唐突な彼女の言葉に半ば疑問符混じりの返事を返す俺。

そんな俺をおいていくかのように、というかおいていっているんだが、本当についてきてほしいんですかね?

どこへ、なんの目的かもわからないまま、階段をひとつふたつと降りる。

元いたのが2階。つまり、地下室。

地下室のある高校なんてあるのだろうか、と記憶を蘇えらせるが、覚えなんて微塵もない。

結局、まあ、あるものなのだろう。という投げやりな形で終わった。

投げやりにしても気分は落ち着くもので、やや薄暗い一本道を無心で歩く。

十秒程歩いただろうか、彼女は急に立ち止まり、俺はぶつかりそうになる。こちらに視線をよこしていた。

すぐさま前を向き直し、古く錆びついたドアノブに手をかけ、ゆっくりゆっくり捻る。

ギギギィィ、と悲鳴をあげ、扉が開く。

彼女がスイッチを押すと、部屋は次第に明るくなり、

「えっと、部屋片付けようか」

第一声はこれだった。

彼女は顔を赤らめる。

「これは使うものです!!!」

という様はとても可愛らしい。俺の言葉が気に触れたのだろう。

「...で、何の用だ?」

寒い部屋に留まるのも嫌なので、さっさと本題に入らせる。

コホン、と口ごもり...

「私の部活に入ってください...」


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