表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

学校という監獄に囚われましたが...

ありふれた街角。

この道何回往復してるんだよ。

目で確認できる城壁、否---監獄。

何百人もの生徒がそこに囚われ、毎日毎日同じことを繰り返す。

時に叱られ、時に褒められ、時に...仲間割れをする。

俺はそんな場所が大嫌いだった。幾度も消えてしまえと望んだ。

結論なぞ、言わなくても分かると思う。

高校に上がれば、もう行かなくてもいい、自由になれるんだと思っていたが、そんなことはなかった。半分以上自業自得なんだが。

と、難しい表現はやめて、俺の目先には、学校がある。つい2時間前の午前9時30分、学校の先生から電話がかかり、学校へと呼び寄せられた。

不登校になろうとしていた俺が、「すいません、今行きます」なんて言えるはずもなく。

なん十回もこの道を歩いていたのである。

すぐ近くにある、駄菓子屋の古びた時計は11時30分を示す。

このまま待てば、今日も学校を休むことになるのではないか、と悪事を浮かべる。

だが、母さんのあの手紙...約束を破るわけにはいかない。

という気持ちも少なからずあるわけで、着々とは言えないが、学校との距離は短くなっていた。

不意に、学校のチャイムがなる。

授業が終わったのだろう。

これはチャンスと思い、俺は全力で校舎へと走り出す。

そう、常識的に考えると、今この瞬間に4時間目が終わり、次は給食なのではないか。つまり今いけば特になにもしなくても、給食食べて休み時間と言うわけだ。

学校の前の道が上り坂なんて知らないほどの速度でかけ上り、開きっぱなしにされている玄関を潜る。

クラスは分からないので、下駄箱の名前表記を確認。1-Cだ。

1階は職員室やら保健室やらだったので、2階へ。

1-Cと記された札を確認し、勢いよく、ドアを開く。

席につく皆の声は一瞬にして静まり...

「おお、サボりのお前にしては早かったな」

「いえいえ、それほどでもないです」

「時間もちょうどいいし」

この言葉を待っていた、と言わんばかりの面立ちをし

「給食ですね」「自己紹介を頼む」

二人の全く違う声が教室に響いた。

あれ...と思い時計を見ると、10時30分。

「ほら、早く自己紹介しろよー」



*

今俺の目の前に広がるのは、椅子に腰かけた約40人の人参。あ、人間。

なぜこうなったか?そんなのは簡単な話だった。

駄菓子屋にはめられた。あいつ、時間ずらしてやがったな。いや、そんなことないと思うけど。

隣には、先生が立っている。

この状況の中、皆はなぜか、俺が面白いことを言ってくれると期待しているようだ。

無理だろ。

だが、思想の読めない彼女は、皆と異なった、喜怒哀楽を示さぬ、無表情で窓際の一番後ろの席に座っている。

そちらに目を向けると照れているのか、はたまた興味がないのか、目を背けた。恐らく後者だろう。

自分ではあまり時間が経った気がしないのだが、

「長谷川ッ!早く自己紹介しろよ!!」

という声で我にかえり、何故か背筋がのびる。

その姿勢を見るに、自信満々な感じが犇々と伝わってくるが、これはあくまで先生の声の効果であって、自己紹介の言葉が思い付いた訳ではない。

その結果...まだまだ硬直します。ということ。

やっぱり、面白いことを期待している人を裏切るわけにはいかないのだから、面白いことを言うべき。それが♂というもの。

さあ、意は固まったか、長谷川叶。今こそいい放つ時。

心は芸人、心は芸人。

「え、えっと、長谷川叶です。その...連続で休んで、今日遅刻したのは、寝てたからです...」

あ、これしまったな。と思うのも束の間、教室は笑い声でいっぱいに包まれた。

大声で笑ってくれる人、クスクスしてくれる人。本当にいって良かったと思う。

隣にいる先生も、鬼の形相をしてくださったしな。

後々、職員室に呼ばれ、怒られました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ