序章
私は今日も仕事へ向かう、いつものように6時に起き、顔を洗い、朝食を食べ、7時には家を出る。
なにも変わらない日常、淡々と過ぎていく毎日、これといって不満があるわけじゃない、これといって充実しているわけでもなく、ただただ過ぎていく時間、良くも悪くもない日々を数十年過ごしていた、そのありきたりな毎日がどれほど幸せなことか、どれほどかけがえのないことか、私は気付いていなかった。
この日、私はいつものように会社に向かっている最中だった。
一匹の猫と目が合った、その猫は痩せて顔付きは野生を感じさせる力強さのある黒猫だった。
その瞳は不思議と吸い込まれそうになる怪しさを宿していた。
その猫はひょいと路地に入っていった、普段の私なら気にもとめず、会社に向かうのだが、なんとなく路地に目をやる、その猫はわたしをじっと見ていた。
朝だというのにそこだけは薄暗く、なんとなく気味の悪い感じがした。
私はふと、時計にめをやる
「ふむ、まだ時間には余裕があるか…」
少し考えながら、猫に再び目をやる、その猫はまだこちらを見ている。
私は何をやっているのだろうと思ったが、その猫に歩み寄った、すると猫は、またひょいと身を翻し、奥に進む、そして私を見つめる、まるでついて来いと言わんばかりだった。
この時、私は「なにをやっているのだろうか」などといい、引き返すべきだった…今でも後悔をしている。
しかしこの時の私は、何かわからない高揚感で、その猫の後をついていってしまった。
しばらく進むと、そこには、壁に大きな両開きの扉がポツンとあった。
すると突然「ニャー」と猫が鳴く、私はビックリして猫の方を見る、しかしそこには、猫の姿はない、私は首を傾げながら、扉の方へ向き直る、すると目の前に突然仮面を付けたタキシード姿の男が立っていた。
私は驚き、後ずさりした。
男は私に向かい、まるで英国紳士のようなお辞儀をした。




