麦わら帽子
2年前に買った麦わら帽子
強い日差しを避けるため
まさか本当に、これが必要な街に暮らすなんて
あの頃の私は思いもしなかった
小学生の頃 欲しかったのは
赤いリボンがついた麦わら帽子
アンに憧れた、あの頃の私
親にせがんでも
「そんなもの、何に使うの。必要ないでしょう」
そう一蹴されて終わった
北の地の、あの薄い陽射しの中では
帽子をかぶる生活なんて、どこにもなかったから
母の言葉も、今なら少しだけわかる
けれど私が欲しかったのは「役目」じゃない
アンになりたかったのだ
もし今、我が子に同じことを言われたら
「もっと日よけになる帽子にしなさい」なんて
実用性を勧めてしまうかもしれない
そう、今の私には、帽子が必要だから
それでも帽子をかぶれば、空想がはじまる
花を挿して日曜学校へ出向いたアンのように
長いリボンをなびかせて、私はお迎えへと向かう
ふさわしいかどうかより、胸に小さな遊び心を
アンがキャメロットの小百合姫になりきったように
私もそっと、なりきってみる
目深にかぶり直した帽子の下
静かに微笑む私の顔を、誰も知らない
アンが帽子の両端を引っ張って顔を隠した、あの仕草
真似をして、きらめく陽の光を遮る
帽子を帽子として使う正しい使い方
私がずっと欲しかった麦わら帽子
あの頃 夢見た使い方とは違うけれど
いま、私の頭上で、夏の日差しに耐えながら
少しの空想と少しの現実のはざまに生きている。




