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フドーイなボクら

作者: 時雨 朝
掲載日:2025/12/25

【プロローグ】


7月5日。

隕石が落ちて、世界は滅亡する。


そんなウワサが広がったタイミングで付き合い始めたらしい。


お互いが仕事についてから結婚をしてボクが生まれたらしい。


現在、ボクは高校生。


父や母が小さい時はソーシャルディスタンスとかなんとが流行りだったらしい。


あまりだから人と近づいたり。

長い時間話をしてはダメみたいに感じだったらしい。


今の時代はそれがもっと進化している。


学校には監視カメラがある。

もちろん、トイレや更衣室にはないけど。


あんまり相手に接近しすぎたり、話しかけすぎると。

学校のセキュリティに通報され。


その生徒の出席権限に関わる。


そんな時代。


なんでもね、父とか母の世代の時にリモートなんとかってのが流行って、それで話が苦手な人が増えたんだって。


別にそのままでも良かったのに。


なんかめんどくさいけど。

コミニュケーション学習。


という名目で、1週間に3日くらいは6時間、学校がある。


別に、自宅の端末で、AIを通してなんでも学べるし。


日々の学習スコアから、企業にその情報が行き。


スカウトなんてのも珍しくないのに。


なんで学校なんて来るんだろう?


とか考えてないと、やってられないくらいヒマなバスの中。


やっと学校の近くのバス停にたどり着く。


今年の4月から3回目の登校。


すごくぐったりする。


校門の前に、風紀委員が立って。


「おはようございます」


とかあいさつしている。


それになんとなく返しつつ。


ボクはなんとか学校にたどり着く。


ここではすでに学校の監視カメラがあるみたい。


ボクはその制裁を受けたと事はないけども。


あまりあいさつを無視したりすると。


内申点というものが下がるというウワサがある。


だから真面目にしようと思う。


授業が始まり。

ぼんやりと過ごす。


一限目は国語。

正直AIが作ってくれる模試で何回も何回もやる範囲。


正直眠いくらい、聞き飽きている内容。


でも、ここでノートとるのをサボったりすれば。


やはり内申点が怖い。


そう言い聞かせながらなんとかノートをまとめ。


眠るギリギリで授業が終わる。


次は体育、救われた。

このまま、何か苦手な教科なら寝ていたと思う。


なんとか着替えて体育。

今日は体力測定。


計る項目がずらりと並んでいる。

あまり体力に自信のないボクには少し億劫だけど。


なんとかやっていく。


握力、垂直跳び、ソフトボール投げとかをクリアして、次は前屈がどれほどできるかという測定を待っていた。


こちらに並んでくださいと言われて待っていたら、わきから何か騒がしい声が聞こえる。


「……てください」


よく聞こえない。


「よけてください!」


同じ声の主がそう言った時、もう遅かった。


目の前には高速で迫るソフトボール。

多分誰かが投げるのに失敗したやつだ。


考えている場合ではなかった。


避けようと思っても、もう無理だった。


キレイにおでこに直撃し。

一瞬、世界の明るさが増したかと思ったけど。


真っ暗になり、力が抜けて行った。


目が覚めたとき、自分の感覚では数秒だった。

目を開ける。


頭に鈍い痛みがある、すると目の前に見知らぬ女性がいた。


「えっと、富樫太一さん?」


その人がボクの名前を呼んだ。


はいと返事をすると。

指を出した。


「何本に見えますか?」


「2本です」


その返答を確認すると。


女性は指を一本減らす。


「この指を目で追ってくださいね?」


指示に従い、何回か左右に動かされる指を目で追うと、彼女は何かを端末にメモしていた。


「すみません、ボクはどうなったんですか?」


よくわからないので女性に聞いてみる。


「体力測定中に事故に巻き込まれて、この保健室に運ばれたの、40分くらい気を失っていたの」


それを聞いて、結構強くあのボールかぶつかったんだなと、驚いた。


「あ、ありがとうございます」


それしか言葉が出ない。


「そういえば、大切な事を聞き忘れてました、お誕生日言えます?」


「えっと、令和〇〇年8月1日です」


「はい、あなたの住んでいるのはどこですか?」


「はい、S県S群T町です。」


そこまで答えると、その女性は端末をさし出した。


そこに書かれているのは、いつもの同意書だった。


現在お聞きした事は、事故により、脳に対するダメージがないかを判断するためのものであり。

第三者に提供する意図はありません。

そちらに同意してサインしていただき。

本日のこの検査の本田理奈さんの診断に関してのスコアや評価も教えて下さい。


というものだった。


サインの場所を確認し。


評価はもちろん、最高にして。

また、診断してもらいたいとかつけてから。


本田さんに端末をお返しする。


「本田理奈さん、ありがとうございます、助かりました」


きちんとお礼を言って立ちあがろうとすると。


本田さんはボクの体を抑える。


「今、急に動くと危ないので、ゆっくり動いて、保険係のわたしにできるのこれまで、あと具合悪かったら、保険の青木先生に言ってね」


「はい、ありがとうございます」


「いいのよ、保険係の仕事です、なんともなくてよかった、わたしはこれで」


そのままいなくなってしまう本田さん。


なんか憧れのような。

それとも違うような、複雑な感情を抱いた。


母親以外では初めてかもしれない。


ここまで身近で女性と接したのは。


すごくドキドキしている。


落ちついてから教室に戻り。


午後をなんとか乗り切る。


いやさ、見た目をどうのとか言っちゃうのはダメだと親に教育されたし。


そんな目で人を見てはいけないとわかってるんだけどさ。


今になってすごく思う。


まるでネコのような大きくてツリ気味の目。


主張は弱くても形は整い、特徴のある鼻筋。


色は薄くてもキレイに結ばれている口元。


そして、肩にかからないくらいで整えられた黒のセミロング。


要するにキレイな人だったなと、すごく思った。


これが父や母が言う恋ってやつ?


まさかね。


ボクは小さい時からあまり興味なかったからね。


そう言うの。


よくわからないや。


【シーン2】


ソフトボールにぶつかった事故から。


1ヶ月くらいが過ぎた。


本田さんはあれからボクのところに2回くらい来た。


手を上に上げてみて痺れはないですか?


片足で立てますか?


そう聞きながらボクのことを端末で撮影していた。


撮影が終わるたびに。

いつもの同意書。


なんか保険係のお仕事らしい。


毎回、最高評価にして。

本田さんに返す。


本田さんはあまり表情を変えず。


ボクから端末を受け取るとすぐに帰って行った。


この学校では男女があまり近づいたり。


長話するのを禁じられている。

不同意のままに異性を拘束するのは。


今は犯罪。

ボクが生まれた時にそんな法律ができたらしい。

ってのは父から聞いてる。


だから同意もなしにデートしちゃダメだぞ。


なんて話もよくされている。

でも本田さんが目の前から立ち去るたびに。


ニコリともせずにいなくなるたびに。

ボクは少し切なくなった。


これが恋愛なのか。

それとも慣れない女性と接しているからなのか。


わからなくなった。

そのモヤモヤを抱えながら家に帰り。

おじいちゃんにコールする。


少し鳴らすとおじいちゃんは応答してくれた。


かわいい孫の話ならなんでも聞いてやる。


悩むよりはワシにまず話を聞かせろと普段から言っているおじいちゃん。


それを信じて本田さんのこと。

今感じていることを打ち明けてみた。


そうするとおじいちゃんはあまり悩まないで、すぐに返答した。


「それはな、恋じゃ、太一はまだ未成年だからね、お酒飲むとかはできないが、お酒を飲んで話すのはいいぞ」


突然の提案に理解できず。

パニックになる。


「ちょっとあんた、何言ってるんだい」


後ろら聞こえるおばちゃんの声。


「なんだ、ワシだってばあちゃんとそうやって仲良くなったしゃろう、あの時はそのまま朝まで一緒に過ごしたじゃろう!」


「あんたバカかい、そんなことしたら孫が捕まっちまうよ!」


ケンカを始める二人に戸惑いつつも。


色々話を聞いていくと。


おじいちゃんとおばあちゃんが若い時に一緒にお酒を飲みにいき。


そのまま仲良くなり。

生まれたのが母だそうだ。


それを聞いてもボクは理解できず。


おじいちゃん、それって犯罪じゃないの?


とか思いながら聞いていた。

色々おじいにちゃんとおばあちゃんのケンカをしきながらも。


二人の意見は同じだった。


まず、デートしなさい。


今は同意をとるとから大変だけど。

まず散歩でもいいし、なんなら手を繋がなくてもいい。


でもおばあちゃんはいきなり手を繋いできたおじいちゃんに対して。


この人がわたしを好きなことがわかったとかなんとか言ってるけど。


そこは状況がわからないので聞かないことにする。


そしてこのコールの内容に対して。

人生相談にチェックを入れ。

保存に同意をする。


とても参考になってと評価して。


それだけではなく。

未経験の良い話が聞けたなど評価して。


会話が終わる。


コールは終わったけど、まだドキドキしていた。


おじちゃんはいい人だし。

おばあちゃんもそんなに普段から怖くない人。


でもおじいちゃんがそんなに強引だったなんてと。


心臓の鼓動が早くなったのを感じた。


母は帰宅すると。

ボクのログをチェックする。


普段なら気にかけないけど。


母の顔色が変わる。


「おじいちゃんに何を相談したの?」


そう聞かれて失敗したとも思った。


でも隠しても仕方ないので。


全てを話した。

本田さんのこと。


彼女は一つ年上で。

保険係で。


とても親切で。

ボクはその先輩が好きなんだと思う。


って話を正直にした。


すると、母は何回か深呼吸をしてから。


大きくため息を吐いた。


え? ボクはなんかまずいことをした?


悪い子だった?


かなりドキドキしてしまう。


「まさか、太一も年上好きだとは思わなかった」


そこから始まったのは。

父と母の恋愛の話。


母が子供の頃はチャットアプリというのが流行っていて。


でも、その時は新種のウイルスがパンデミックだかを起こしていて。


あのおじいちゃんに、あまり人と長く話すな。


気安く相手にに触れるな、とか色々大変で。


その時は知り合ったののが、ボクの父でありり


毎日、父とチャットして。

通話して。


仲を深めたそう。


それから何年か経って。


世の中で変なウワサが広がったそう。


7月5日。

フィリピンに隕石が落ちて。


日本が滅んでしまう!


そうなった時に、父に対して。

最期の日はあなたといたい。


そんな風に言って過ごしていたら。

何も起こらず。


何も言えないで死ぬのは嫌とか言って。


その場で色々言ったらしく。


そこらカップルになり。

しばらく付き合い結婚して、ボクが生まれたんだとか。


ボクは何を聞かされているんだ?


って気持ちになったけど。


この話どっかで聞いたな。

おじいちやんも似たようなこと言ってたような?


「いい、太一、男の子からは強引にしたらダメなんだからね?」


母の目つきが怖い。


生まれてから一度も見たことのない目だ。


そこから母に端末を渡され。

同意書にサインさせられる。


また、人生相談にチェックを入れて。


いい評価をして、送信する。


しばらく待っていると父が帰ってきた。


「ねえ、あなた聞いて」


母はボクの話を父にもした。


父はしばらく考え込んで。

ボクに聞いてきた。


「太一、お前はその、本田さんいや

理奈ちゃんのことは好きか?」


そう質問されて。


少し、考えてから素直な気持ちを口にした。


好きだと。


すると父はゆっくりとネクタイをほどき、普段は見せない、男の顔に戻っていた。


そこから色々レクチャーを受けた。


そして父が言うには。


男の作戦会議とか言うのを。

1時間くらいしてから。


父は言った。


「今は、なんでもログに残る、監視カメラも学校にある、そこで有効なのは、恋文という古典的な方法だ」


それを聞いた時に、震えた。

父よ、そんなのはもはや20世紀の恋愛小説でしか見たことないよ。


そのまま父に伝えると、笑っていた。


「そうだなオレも母さんに書いたことはない、でも好きなんだろ?」


ボクはうなずいた。


父はそれから本田さんに送る恋文の書き方を手取り足取り教えてくれた。


ボクも、強引なおじいちゃんや母の血を引き継いでいるのをひどく感じた瞬間である。


なんか社会は監視されていたり。

何に対しても、同意が求められるけど。

それよりも、ボクの気持ちが大切に思えた瞬間だった。


【シーン3】


 後日、また検査に来た本田さん。


ボクは少しためらいながらも。

本田さんに恋文を渡した。


「いつも丁寧にありがとうございます、お礼の気持ちです」


本田さんは、見慣れない手紙に首を傾げながらも。


受け取った。


心の中でガッツポーズをしつつも。

表には出さないように、なんとかしていた。


本田さんの指示に従いつつ。

遠くを見てから、近くを見て。


次に端末に映る文字を声に出して読んでみたりもした。


本田さん、その読み終わったのに対して間違ってないかを確認して。


サインしていた。


「富樫さん、何回もごめんなさいね、もう少しで終わりだから」


不意にそんな声をかける。


「本田さんも大変ですよね、大きな事故だったから、何回も来てもらって、ありがとうございます」


「気にしないで、ここでの保健係の活動は次の進路に活きてくるから」


そう言いながらいつもの同意書。

いつも通りの操作をして渡す。


そしていつも通り。

あまり表情を返さず立ち去る。


いつもと違って、切なさや。

寂しさはあまりない。


手紙を渡せたから、なんか嬉しかった。


フラれたらどうしようとか。

色々渡すまで考えたり。

不安になったりしたけども。


今なら不思議とそこまででもない。


言えないまま、何もしないで日々が過ぎ去るよりは、ずっといい。


不思議とそう思えたから。


ボクは安心して、その場を後にした。


 それから半月くらいして。

本田さんが来た。


その手には、本田さんが書いたと思われる手紙。


それを見た時にドキドキした。

まさか返事をもらえるとは思ってなくて。


かなりびっくりしてしまう。


「これ、お返事です」


なんか頭では理解していても。

かなりドキドキした。


「ありがとうございます」


どことなく声がうわずっているような感じがしながら。


なんとか受け取ることができた。


そのあと、本田さんとまた検査する。


今度は歩くところ撮影だった。


それが終わってまた、同意書にサインして端末を返す。


「次が最後ですから、お返事くださいね」


本田さんはそう言って少し笑っている。


「はい、書いてきますね」


そのまま立ち去ったけど。

まだ手紙を読んでないボクはドキドキしていた。


家に帰ってから。

親の目の届かないところで、本田さんからの手紙を開く。


富樫 太一様。


この前はお手紙ありがとう。

実は、保健室であなたを見てから気になってました。


そしてこの前のお互いに気になっていたなんて驚きました。


実はいつもやってる検査は、必ずやらなくてもいい検査も入っているの。


わたしも太一くんのこと気になってました。


でも太一くんにいきなり話したいとか、遊びに行こうとか言いづらいし。


端末から連絡すると、履歴が残りますよね。


だからあなたが不同意だったらどうしようって迷ってました。


太一くんがもし良ければ。

今度の日曜日、午後1時。


学校の近所の噴水のある公園で会いませんか?


あそこなら監視カメラがないところもあるので。


あなたの口から、直接好きって聞きたいのもあります。


なんかわがまま言ってごめんなさい。

その時にお返事のお手紙もらえると嬉しいです。

                   理奈。


それを読み切った時に心臓が爆発するんじゃないか?


ってくらいドキドキした。

そして頭が真っ白だった。


何回も深呼吸しても、落ち着かなかった。


何が起こっているのかもわからなかった。


そして、よく考えてみる。

今日は何曜日。


水曜日だ。

今度の日曜日。


え、あと3日しか時間ないよね。

とかパニックになりながら、お返事を書く。


前回の恋文よりも時間がかかりながらも。


なんとか返事を書く。


そして、書き終わると。

もう夜遅かった。


でもそんなに特別疲れたとか。


イヤな感じもしなかった。


そのまま寝ようとしても。


緊張して寝れなかった。

次の朝、ギリギリで家を出た。


 それから、金曜日までまともに受授業を受けれなかった。


日曜日どうしよう?

何を話そう?


なんか持っていこうかな?


そんなことを考えていた。

でも、バスのカメラには映るし。


とか、もう心ここに在らず。


ほとんど授業で何をしたかなんて覚えていなかった。


でも帰ってからチェックできるのでいいやと開き直りながら。

校門まで行くと。


そこには、本田さんがいた。


一瞬ドキッとした。


「た、たい……いえ、富樫さん、明後日の件なのですが」


なんかぎこちない感じで話しかけているけど。


何を言おうとしているのかは、察した。


「はい、ここの先にある公園すよね」


公園のある方向を指さしながら。

そこの公園であることを確認する。


「そうですね、東と西があるんですが、西の方でお願いします」


本田さんは冷静な風を装っているが。


どこか声がソワソワしているのを感じた。


「わかりました、ありがとうございます」


そう言って頭を下げると。

本田さんも深々と頭を下げる。


このまま手を引いてそこに行きたいくらいの衝動もあった。


でもこの様子は学校の監視カメラに映っている。


ここはグッと我慢する。


お互い距離をとって下校していく。


それから家に着くと。

ものすごくドキドキしすぎて、何も手につかなかった。


母に、ちょっと話聞いてるの?


なんて何回も言われた。


聞いてるよとか言いつつも、実は何話してるかあまりわかっていなかった。


母よ、本当にごめん。


と思いつつも。


頭の中は本田さんのことでいっぱいだった。


気が利いたこと。言えるだろうか?


ヘマしないかな?


そんな心配ばかりをしていた。


そしてその緊張は土曜日も継続して。


ぼんやりしたまま。

気がついたら。


もう日曜日まで、8時間くらいだった。


今日は寝なきゃと思いながら、慌てていた。


布団に入って、1時間。

明日はなるようにしかならない。


そう思えた時に、初めて眠くなった。


とりあえず明日は遅れなきゃいいや。


なんか眠る直前はそんな気持ちになっていた。


【エピローグ】


「太一くん待った?」


本田さんが公園の西口に到着したのは、午後0時58分。


「ボクも今きたんですよ、本田さん」


そういいながら手紙の返事を渡す。

本田さんはそれをカバンにしまいながら。


「えー、監視カメラないところでもその呼び方なの? 理奈って呼ばないの?」


不満を漏らす。


「えっと、じゃあ、り、理奈さん」


「…………」


呼んでみると、いきなり黙ってしまった。


そして少し経って落ち着いてから、理奈さんは言葉を続ける。


「なんか、いきなり呼ばれると、少しテレるね」


普段はなかなか見せないはにかんだ表情にドキドキしてしまう。


理奈さんにあっちの方だと小さくしか映らないんだって。


そんな話をされながら監視カメラの死角になっているところを目指す。


その間いろんな話を聞いた。


常に監視されていることへの不満。

どちらの性別でも、同意がなければ近づいてはいけないと言う制約。


そして死角に入ってから。

理奈さんは言い始める。


「太一くんが良ければなんだけど、手え、繋がない?」


「うん、理奈さんが良ければ」


ものすごくぎこちない感じだった。

フィクションみたいに、すんなりとは行かない。


手を繋いだ時、手のひらで感じる体温。


言葉はなくても通じ合う感覚。

ボクも手紙で好きだと書いたし。

そのお返事ももらっている。


同意書なんか書かなくても。


不思議な安心感があった。


誰か近くを通るのを感じては離したり。


また、手を繋いだり。


第三者による通報を警戒していた。


多分、父や母の世代は結構当たり前にしてたこと。


でも今ボクたちはとてもいけないことをしている気分だった。


「ねえ、太一くん話したいことあるの」


そう言われてボクは続きが気になると、話を聞くことに同意する。


すると、理奈さんから言われたのは。


実は保健係の仕事は結構、マニュアルの中でも必須ではない項目を実施していたり。


色々撮影した画像とかも、必要ないものもあったという話。


正直、会う理由を作っていたり。

工夫したりしていたそう。


そんな執拗なわたしを見て引いた?


とか、近づく同意が欲しかったと言う話。


ボクはそんなふうに話す理奈さんの様子を見て、話していいのかな?


って心理が働き。

おじいちゃんたちに相談したこと。

両親が真面目に話を聞いてくれたこと。


そしてあの、恋文の作戦になったこと。


そこまで話すと、理奈さんは笑っていた。


ひとしきり笑ったあと。

目を見つめられ。


「わたしたちって保健室で出会ってから、お互いのことずっと好きだったんだね」


そう言われてドキドキした。

うまく言葉が出なかった。


理奈さんはそんなボクを見つめて。


ニコニコしていた。


「学校だと全部監視されてるからね、なんかここにきて、落ち着いたの」


「ボクもなんとお話ししたいなって、でもログは残るからって、ためらってたんですよ」


「わかる、なんか毎年ニュースで見るよね、親しくなりすぎたりしてしつこく連絡して、接近制限とかねー」


「あれって、すごく怖いですよね、不適切発言とかでね、そのあと大変みたいで」


そう言いながら二人で笑っていた。


ここに集まって、二人でゆったり過ごす。


公園なので、監視も少し緩くなっている。


少し大胆にしたくなるけども、小さくは映る。


理奈さんがそれに気を遣って手を離す。


なんとなく、寂しくなる。

でも、あまりくっつきっぱなしでも問題になる。


すごく近づけたけども。

そればかりでも問題。


露骨に訴えなくても。

また理奈さんが手を出してきたら。


繋いでみる。


嫌そうな顔はしない。


同意書がなくても恋愛している。


不思議な感覚。

とても悪いとをしてるかのようなドキドキ感。


離れたくなかった。

このまま、理奈さんと遊びたかった。


それでも近づきすぎ。

話し過ぎはすぐに学校に通達が行く。


それを避けながらの二人の時間。


いよいよ時計は午後2時30分になろうとしている。


そろそろ一緒にいるのも限界。


次いつ会えるかわからないけど。

理奈さんとボクがあんまり近づいてるのがバレては大事件になる。


いくらログの残らない手紙でやり取りしてても。


「ねえ、太一くん、また来週もここで会いたいな、同じ時間に、いい?」


理奈さんに不意に聞かれる。


「ボクもそう思ってだんだよね」


「そう言ってくれると嬉しいな、よろしくね」


そう約束して、離れようとする。


理奈さんの顔を見ながら、どちらもそれが嫌なのを感じる。


理奈さんは少し目で何かを探している。


そしてボクの手を引っ張って大きな木の影にボクを引っ張っていく。


多分ここなら、完全な死角なんだと気がつく。


「いきなりこんなの言ったら嫌われるかもなんだけどさ、ねえ太一くん」


「はい、なんですか、理奈さん」


「また来週会うまで我慢するから、学校では耐えるからさ、今、チューして、カメラにバレないように」


まっすぐ見つめられて、そう迫られて。


ボクには拒否する気持ちはなかった。


「太一くんは同意してくれる?」


そう聞かれてドキドキしながら。


「うん」


ってだけ返事する。


理奈さんが目を閉じる。

ボクも息を止めて顔を近づける。


唇に理奈さんの温もりを感じ。


その短い幸せを感じながら、顔を離す。


離れてから、理奈さんも目を開けて。

普段は見せないぼんやりとした表情を見せる。


ものすごくドキドキしてしまう。


言葉が出なかった。


「それじゃあ太一くん、また、来週ね」


理奈さんはそう割りきってから、ボクから離れていく。


不思議と寂しさはなかった。


来週はどんな手紙を書こう?

何を話そう?


そんな気持ちが溢れきた。


普通のカップルは同意書を書いて。

契約もして色々大変なんだけど。


ボクらはそんなのは書いていない。


フドーイなボクらの恋はそんなの書かなくても。


お互いが大好きだ。


それだけはよくわかった。


他ではあまりない形だけど。

ボクは理奈さんといつまでも仲良くできたらなと。


そんなことを願うばかりだった。


がんじがらめの世の中で。

少しの希望を見た気分だった。


-了-

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