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白黒ゲーム

作者: 猫人鳥
掲載日:2026/03/09

人狼という概念のない世界の人狼ゲームです。

白→村人 黒→人狼 混色→狂人

魔術師→騎士 透色師→占い師 彩色師→霊媒師


誰が人狼なのか、是非推理してみて下さい。

「フィールさん。これ、知ってますか?」

「白黒ゲーム? 知らないわ」


 アキナ様と私、そしてカイの3人で街歩きをしていた時、カイが変わった物を見つけた。


「フィー、カイ、どうしたの? 欲しいものでもあった?」

「あ、いえ。見慣れないカードゲームを見つけただけです」

「ん? あぁ、騙し合いのゲームよ」

「騙し合い……」

「折角だし、買って帰って皆で遊びましょうか!」


 アキナ様はとても楽しそうに笑われていた。

 そして私達はこの後、普段は信頼し合っている仲間達と、互いに騙し合いをする事になった。


「さーてと、じゃあ始めましょうか」

「「「「「よろしくお願いします」」」」」


 集めたメンバーは私を含めて12人。

 この島の統治者であり、嘘を見抜けるアキナ様。

 アキナ様の事を愛しているカイ。

 洞察力の高いミララ。

 ミララの双子の兄、フェルル。

 物静かな最年長、ドヴィル。

 童顔だけど私と同い年、ジェイク。

 勘の鋭いリーナ、元気なユート、クールなモーネ、可愛いミーテ、ミーテ大好きキース。

 そして私だ。


「まずはルール説明ね。これは白陣営と黒陣営に別れて戦うゲームなの。毎ターンに1人を退場させていって、最終的に黒がいなくなったら白陣営の勝ち。黒が黒以外の人と同数になったら黒陣営の勝ちよ」

「チェスのように、白と黒が同数からの始まりではないんですね」

「えぇ、これは白の中に紛れ込んだ黒を見つけ出していくゲームだから。黒は自分を白だと偽らなければいけないわ」


 なるほど、だから騙し合いのゲームなのか。

 騙し合うなんて事が有り得ない私達だからこそ、こういう遊びは新鮮だ。


「今回はこの11枚のカードを使う事にするわね。各カード毎に役割が違うから、どのカードが手元に来てもいいよう、カードの役割を覚えておいてね」


 アキナ様が選んで下さったカード……

 まずは白陣営、ただの白が3枚。

 これは特に役割はないらしい。

 透色師1枚、これは毎ターン1人の色を判別する力を持っている。

 彩色師1枚、これは退場した人の色を判別する力を持っている。

 魔術師1枚、これは毎ターン1人を守る事ができる。

 ただし、連続して同じ人を守る事はできない。

 双子2枚、これは双子同士は互いに双子である事を知っている。ただし、1人が退場となったり、黒に塗りつぶされたりすれば、もう1人も道連れになってしまう。


 次に黒陣営、ただの黒が2枚。

 これは毎ターン終了時に、1人を黒に塗り潰して退場させる事ができる。

 黒が2人いたとしても、1ターンで塗りつぶせる人は1人だけ。

 そして自分が白であると嘘をつかなければいけない。

 そして混色、これは黒陣営でありながら透色師や彩色師に調べられても白だと判断される。

 ただ黒は混色が誰かを知らないし、混色も黒が誰なのかを知らない。


「あの、11枚だと1枚足りませんよ?」

「1人はゲームマスターね。全員が何色かを知っている進行役よ。今回は私が務めるわね」

「え、それってアキナ様はゲームに参加しないって事ですか? 俺はアキナ様と一緒に遊びたいので、アキナ様がゲームマスターなのは嫌です」

「でもこれは騙し合いのゲームなのよ? 私は嘘なんて見抜けてしまうし、参加するよりは……」

「じゃあアキナ様はハンデとして、嘘を見抜いても言わない事にすればいいじゃないですか。で、ゲームマスターはドヴィル、よろしく」

「分かった」


 アキナ様がゲームマスターとなるのをカイが嫌がり、ミララがアキナ様に否定する間も与えない速さでドヴィルをゲームマスターとして任命した。

 これで私達はアキナ様と一緒に遊べるんだ。


「基本的にはゲームマスターに呼ばれた人だけ目を開けて、誰に何をするかを数字で示して行くゲームなんだけど、ある程度は皆も誰が動いたかくらいは分かってしまうでしょ? だから1人10秒ずつ、別室のドヴィに話しに行く事にしましょうか」

「黒は1人しか塗り潰せないんですよね? どうやって話し合うんです?」

「互いに誰を塗り潰したいかの第3希望までを伝える事にしましょう」

「分かりました」


 アキナ様程ではないにしろ、私達は戦いに慣れた戦闘員ばかりだ。

 気配で誰が動いたのかくらいは察せてしまう。

 アキナ様は相変わらず、どこまでも公平になるように考えて下さっているんだ。


「ではゲームを開始します。まずは全員、自分のカードを確認し、順番に俺のところに見せに来て下さい」


 私がもらったカードは魔術師。

 これは白陣営で、毎ターンに1人を守る事が出来る。


「次は……ゲーム前の確認ですね」

「透色師の人が1人の色を判断して、黒と双子の人には互いのパートナーを教えてあげてね」

「分かりました。俺は隣の部屋に行くので、順番に来て下さい」

「隣の部屋とはいえ、耳がいい人には会話が聴こえちゃうだろうから、皆小声でね」

「「「「「はい」」」」」


 最初にアキナ様が行かれて、次に私……


「失礼するわね」

「ああ。フィール、お前は魔術師だからな。このターンでする事は何もない」

「そうね」

「それにしてもフィールが魔術師とは……似合っているな」

「そう? ありがとう」


 ドヴィルと他愛のない話を部屋を出た。

 そして私の次にカイが部屋に向かっていく。


「暇ね〜」

「そうですね」

「でも最初だけだから〜」

「これからどんどん退場して行くんですもんね。それはそれで寂しくなりそうですけど」

「ゲームから退場なだけよ? 部屋にはいてもらうわ。騙し合いもいい勉強になるでしょうし」


 1人10秒とはいえ11人もいるし、部屋への移動時間もあるから、それなりに時間がかかる。

 アキナ様は退屈そうにされているけど、楽しそうに笑っておられるし、元々は参加するつもりはなかったとはいえこうして皆と遊ぶ事を喜ばれているんだろう。


「お待たせ致しました。では、議論時間は5分間です。議論を開始して下さい」

「議論開始って言われても、まずは何を話せばいいんですか?」

「大体定石なのは、透色師に名乗り出てもらう事ね。勿論黒に狙われちゃうから、隠れていてもいいわ」

「はいっ! 俺が透色師です!」

「待ってカイ、それはおかしいよ。私が透色師だから」

「ふふっ、あらあら」


 議論が始まってすぐ、カイは自分を透色師だと元気よく公言した。

 その発言に驚いたようにミララも自分が透色師だと言っている。

 透色師のカードは1枚だけ。

 つまりどちらかは嘘をついているんだ。


「じゃあ2人共、せーので誰の色を見たのかを言ってもらいましょうか。せーのっ!」

「「アキナ様」」

「え、私? ふふふっ、じゃあ次はせーので私の色が何色かを言ってもらいましょうか。せーのっ!」

「「白」」

「おぉ〜」


 カイもミララもアキナ様を占い、結果は白だったと言った。

 意見が全く一緒なのであれば、どちらが嘘をついているのかを判別出来ないな。


「現状ではどちらが本物なのかは分からないけど、2人から白と判断されているから、私が白である事は確定したわね」

「カイかミララのどっちかが黒って事ですよね?」

「そうとも限らないわ。最初に透色師の対抗として黒が出てきてしまえば、2人共を順番に退場させる事にした時に、確実に黒を1人退場させれてしまうもの」

「黒は慎重に行動した方がいいって事ですね」

「つまり、カイかミララのどっちかは、混色の可能性が高いんですね」


 カイは動揺しているように見えるけど、それが嘘をついている事の緊張なのか、ミララに対しての驚きなのか分かりにくい……

 対してミララはいつも通りに冷静過ぎる……


 普段の2人の事を考えると、カイが私達に嘘をつくなんて有り得ない。

 ミララはさらっと嘘をつきそうではあるけど……いや、そういう偏見に捕らわれていてはダメだな。


「とりあえずこのターンは私を退場にしておきましょうか」

「えっ! なんでですか? アキナ様は白なんですよ?」

「ここで下手に双子や彩色師を退場させてしまうよりは、何の役割もないただの白が退場した方がいいのよ。このゲームは退場したところで負けにはならないのだから」

「最終的に黒を退場させれれば、白陣営のアキナ様も勝ちですからね」

「でも……」


 最終的に白が勝つためには、最初に役割のない白を犠牲にするというのは戦略的には分かる。

 でも折角アキナ様と一緒に遊べているというのに、いきなりからアキナ様に退場してほしくはない。


「アキナ様を退場させるのは私も反対です。何の役割もない人を退場させるにしても、アキナ様以外の人がいいと思います」

「じゃあ私でいいですよー!」

「あら、ミーテも役割なしのただの白なのね」

「はいっ!」

「僕も僕もー! ミーテちゃんと一緒!」

「キースもただの白ね」

「あれ? ただの白って3人だよな? 俺もそうなんだけど……?」

「えー、ユート君もー?」


 透色師に続いてただの白の中にも嘘つきがいる。

 これだと誰を信じていいのか分からない。

 ただ、退場させる流れで嘘をついているんだから、黒である可能性は低いだろうな。

 となるとカイかミララのどちらかは黒で確定だ。


「退場させられる可能性があるのに一番に名乗りをあげたミーテは、ほぼ間違いなく本物の白じゃないですか?」

「リーナちゃん! 僕だって白だよ!」

「俺もだよ!」

「じゃあお前等、退場させられてもいいのか?」

「「もちろん!」」


 リーナの言う通り、ミーテは白で間違いないと思う。

 でもフェルルの確認に対して即座に返事をしているあたり、ユートとキースはどちらが嘘つきかの判別の仕様がないな。


「それならこのターンはミーテを退場にして、カイとミララは2人共、キースの色を見る事にしましょうか」

「「分かりました」」


ピピピピピッ!


「議論終了です。誰を退場させるのか、決めて下さい」

「丁度いい時間だったわね。じゃあ皆で一斉に退場させる人を指しましょう。せーのっ!」


 アキナ様の声に合わせて皆でミーテを指した。

 ミーテ自身も笑いながら自分を指している。


「このターンで退場するのはミーテに決まりました。ミーテはどうする? 皆の役割を知って俺と共にゲームマスターをするか、知らずに観戦し、推理するか」

「んー、知ってて見るのも面白いと思うけど、推理したいのでここで観戦してます!」

「そうか。では俺はまた隣の部屋へ行きます」


 ミーテが退場となって、次のターンに移行する。

 さっきは何の役割もなかったけど、今回の私は誰かを守るという役割があるんだ。

 誰にするべきなんだろう?


 個人的に一番守りたいのはアキナ様だけど、アキナ様を今守るメリットはない。

 今分かっている皆の役割は……


 アキナ様→白

 カイ→透色師か噓つき

 ミララ→透色師が嘘つき

 フェルル→分からない

 ジェイク→分からない

 リーナ→分からない

 ユート→白か嘘つき

 モーネ→分からない

 ミーテ→白

 キース→白か嘘つき


 役割なしの白が3人しかいない以上、現状で役割が分からない4人の中に双子と彩色師と嘘つきがいる。

 黒にとって厄介な彩色師や、一度で纏めて2人を塗りつぶせる双子は狙い目だ。

 だからこの分からない人達のうちの誰かを守った方がいいな。


「失礼するわね」

「フィール、誰を守る?」

「フェルルにするわ」

「分かった」


 ドヴィルに伝えて、皆の終了を待つ。

 相変わらずアキナ様は退屈そうだけど、ミーテがいなくなった事や、既に2人も嘘つきが現れている現状を楽しまれているみたいだ。


「お待たせ致しました。まずは報告があります。このターンでは誰も黒に塗りつぶされませんでした」

「あら、魔術師がいい仕事をしたみたいね!」


 という事は、黒はフェルルを塗りつぶそうとしたのか。

 これでフェルルが黒ではない事は決まった。


「では、議論を開始して下さい」


 私がフェルルを守れた事に安堵していると、


「はーい! 私が魔術師で、フェルルを守りましたー!」


と、リーナが宣言した……


「おっ、リーナが守ってくれたのか。ありがとな」

「うんっ!」

「違うわフェルル。魔術師は私よ」


 リーナの発言を否定はしたけど、先手を取られてしまったせいで信憑性が低い……

 流石リーナだな。

 とはいえ、混色には誰が守られたのかも分からないから、フェルルだと一番に言い当てられているリーナは黒で確定だ。

 ただ、私の中ではリーナは黒で確定したけど、これを皆に信じてもらう術は今のところはない。


「あらー、魔術師にも対抗が現れたわね。となるとフェルルは双子か彩色師だけど?」

「俺は双子だ」

「「「「「あっ……」」」」」

「え? あぁ、ミララと双子って意味じゃなくて、このゲームで俺は双子って役割だって意味で、ミララと双子なのは変わんないんだけど、このゲームでは……」

「フェルル、一旦黙って」

「ん?」

「言っちゃダメだよ、フェルル……」

「な、なんで?」

「もうこのターンで塗りつぶされるのがフェルルで決まったね」


 フェルルが双子だった上に今日はフェルルを守る事が出来ない。

 黒はこのターンでフェルルを塗りつぶし、もう1人の双子と共に退場させるだろうな。


「フェルルの事は一端置いておいて、今日の退場させる人を決めましょうか。カイとミララがキースの色を見た結果を同時に教えてくれる? せーのっ!」

「白」

「黒」

「あっ! 分かれた?」


 声が重なっていたとはいえ、カイが白だと言い、ミララが黒だと言ったのは分かった。

 ミララを信じるなら、キースは退場させた方がいいけど……


「今ミララが黒って言ったように聞こえたんだけど?」

「うん、そう言ったから。さっきのターンで退場させられる可能性があるのに白って言ったのは、ミーテを勝たせてあげたかったからなんじゃない?」

「な、何言ってるんだよ、ミララちゃん! 僕は本当にミーテちゃんと同じ白だよ!」

「うん、キースは白だったよ!」

「だよね、カイ君!」

「だからユートが黒か混色だろうけど、黒の可能性の方が高いと思う」

「はぁ? 何でだよ!」

「混色の人は黒を知らないんだから、ミララさんが混色でキースを黒だって言うのはリスクが高すぎる。となるとミララさんは黒で間違いないだろうけど、味方かも知れない混色を黒だとして排除しちゃうとは考えにくいかなって。だったらユートと黒同士で、キースが確実に白だって分かってたのかなって」


 カイを信じるなら、カイの推理は最もだ。

 混色が下手に黒を指摘するとは思えないし、黒も混色を排除してしまうのは勿体ない。

 ただそうなると、リーナが黒だという私の推理とは合わない。

 じゃあミララが本物の透色師か?

 いや、まだ決めつけるのは早い……


「とりあえずはキースを退場にしませんか? どの道次のターンで彩色師の人がキースの色を判断出来ますし、カイとミララのどっちが偽物なのかも分かりますし」

「そうだな、俺もそれでいいと思う」

「で、カイとミララはこのターン、2人共フィールさんを調べてね?」

「え、それならリーナを調べてほしいんだけど……」

「あー、黒っぽいですね!」

「……いいわ、調べてちょうだい」


 リーナ本当に上手いな。

 私より先に魔術師として名乗りを上げているし、今の発言も私が先に言うべきだった。

 私がリーナをと後から言っても、自分が黒だから調べられたくないだけに思われてしまうから。


 ただもしミララが本物の透色師であれば、仲間であるキースを簡単に切るのは早すぎると思う。

 もう少しミララが偽物の可能性を訴えてもいいはずだ。

 となればキースは白だというカイが本物のようにも思えるけど……

 でも逆にミララに自分を本物だと思わせる為に敢えて切った可能性も?


ピピピピピッ!


「議論終了です。誰を退場させるのか、決めて下さい」

「ふふふっ、じゃあまた皆で一斉に退場させる人を指しましょう。せーのっ!」


 今回皆が指したのはキースだ。

 キースは少し複雑そうな顔をしていたけど、すぐにはにかんで、


「ミーテちゃーん! 一緒に観戦しよー!」


と、ミーテの元に向かって行った。


「このターンで退場するのはキースに決まりました。では俺はまた隣の部屋へ行きます」


 次のターンへの移行……

 このターンではフェルルが塗りつぶされて、双子の相方と共に2人で退場する事が確定してしまっているから、守る対象がいない。

 次のターンで彩色師が狙われるとなると、次のターンで彩色師を守る為にも、今彩色師を守る訳にはいかない。

 そして今彩色師の可能性があるのは、モーネかジェイクだ。

 だからとりあえずはその2人以外、ミララを守っておく事にしよう。


「失礼するわね」

「フィール、誰を守る?」

「ミララにするわ」

「分かった」

「ゲームマスターは楽しい?」

「あぁ、実に見応えがある」


 誰がどの役割なのかが全て分かっているドヴィルには、今の状況は面白いんだろうな。

 私がリーナに先手を取られたのも……なんか、悔しい。


「お待たせ致しました。まずは報告があります。このターンで黒に塗りつぶされたのは、ジェイクでした」

「え……」

「ジェイクは退場してくれ」

「僕、一言も喋れませんでした……観戦します」


 まさかの、ジェイクが退場?

 しかも同時にフェルルが退場していないという事は、フェルルの相方はモーネで、ジェイクは彩色師で決まりだ。

 これはしてやられたな……


「では、議論を開始して下さい」

「まさかジェイクが……」

「黒はなかなかの賭けに出たわね。魔術師が守るかも知れないジェイクを狙うなんて」

「ごめんなさい〜、私このターンはフェルルが狙われるものだと思って、カイを守っちゃいました」

「フィーは?」

「私はミララを守りましたね……」


 これではカイとミララのどっちが本物かの判断も出来ない。


「とりあえずフィールの結果を伝えましょうか?」

「そうね。じゃあ、せーのっ!」

「「白」」

「えっ! 嘘っ!? だったらフィールさんは混色で決まりです!」

「いいえ、リーナ。あなたが黒で決まりよ」


 リーナの驚いている迫真の演技は素晴らしいけど、これで私が黒では無い事が証明された。

 それでもまだ、皆に混色だと疑われてはいるけど。


「うーん? 頭が混乱してくるー」

「カイを信じるなら、黒はミララとユートで決まりで、フィーかリーナが混色ね。ミララを信じるなら、黒はキースで決まりで、フィーかリーナには混色の可能性があるし、カイも黒か混色の可能性がある事になるわね」

「だったら俺はミララを信じる。だって俺、白だもん!」

「でもとりあえずこのターンはユートの退場でいいんじゃないですか? さっきはミララの意見を聞いてキースを退場させたんですし」

「なんだよ、モーネ。俺の事信じてねぇのかよ」

「そういうの止めて。これはゲームでしょ」

「だなー」


 確かにさっきはミララを信じたんだから、ここは安全策としてユートを退場させておくべきだろう。

 モーネに言われて少し剥れているユートも、納得はしているみたいだ。


「でもこれで黒は双子を狙いにくくなりましたよね! 次はフェルルもモーネも守れるので、50%で塗りつぶせませんし」

「だったら狙われるのはアキナ様ですね。確実に1人を退場させた方がいいですし」

「えー! それならアキナ様を守った方がいいって事?」

「そうです! アキナ様を守りましょう!」

「カイ、私情が入り過ぎだよ。双子が狙われたら一気に2人が減ってしまうんだぜ? どちらかを守った方がいいに決まってる!」

「でも50%で結局守れないんだよ? それなら確実なアキナ様を守った方が……」


ピピピピピッ!


「議論終了です。誰を退場させるのか、決めて下さい」

「退場させる人を指しましょうか、せーのっ!」


 今回皆が指したのはユートだ。

 これで対抗していたユートとキースの両者が退場したんだから、確実に黒陣営を1人は退場させた事になる。

 あとはリーナと、カイかミララのどちらかだ。


「このターンで退場するのはユートに決まりました。では俺はまた隣の部屋へ行きます」

「じゃあ俺も観戦する!」


 次のターン……ここはかなり重要な局面だ。

 双子であるフェルルとモーネが狙われる可能性は高いけど、50%の確率でしか守れない。

 黒にとっても同様で、50%の確率でしか退場させられないんだから、だったら確実に退場させられるアキナ様を狙うべきだと考えるかもしれない。


 こういう考え方が良くないのは分かっているけど、カイが偽物の場合はアキナ様を狙う確率は低いと思う。

 でもリーナは確実にアキナ様を狙って来るだろうし、黒達は相談し合う事はできない。

 互いに誰を狙うかの第3希望までを決めているだけなんだから、カイの第2や第3希望とリーナの第1希望がアキナ様なら、アキナ様が狙われた事になってしまう。

 ミララが偽物の場合は、ほぼ間違いなくミララもアキナ様を狙うだろう。

 リーナもミララも確実性を重視する方だから。


「失礼するわね」

「フィール、誰を守る?」

「……」

「決まっていないのか? 10秒の決まりだからな、早く決めてくれ」

「……アキナ様にするわ」

「分かった」


 フェルルかモーネを守り、仮に守れたとしても、次のターンで確実にリーナを退場させない限りは、守れた方がまた狙われてしまう。

 賭けに出て敗れて、2人を失う事や、アキナ様を失った後に結局2人を失う事を考えると、今はアキナ様を守るのが最善だろう……と、思っていたんだけど、


「お待たせ致しました。まずは報告があります。このターンで黒に塗りつぶされたのは、モーネでした。モーネと双子のフェルルも、同時に退場になります」


という残念な結果で、フェルルとモーネが退場となってしまった。


「俺はミララとも双子だけどな!」

「うるさい。余計な事言ってないで、早く退場して」

「へーい……」

「行こ、お兄ちゃん」

「何かモーネにそう呼ばれるの、変な感じ」

「だろうね、私も」


 黒は50%のリスクを選んだのか……いや、これは単にリーナに私の思考が読まれた結果だろうな。

 リーナなら確実性を重視すると思ったけど、私だって結局は確実性を重視している。

 私がアキナ様を守ると読んでいたんだろう。


「では、議論を開始して下さい」

「いよいよ5人になっちゃったわねー」

「あのっ! 俺はミララさんを調べて、黒でした!」

「私もカイを調べて黒でした」

「まぁこうなったら、互いにそう言うしかないですよねー」


 残りはアキナ様、カイ、ミララ、リーナ、そして私の5人だけ。

 しかも黒で間違いないリーナはまだ残っているし、カイが本物だったとしてユートが混色だった場合、ミララも黒という事になる。

 このターンで確実にリーナを退場させたいところだ。


 ……ん? ミララが本物だった場合は、キースとリーナが黒になるはず。

 それなのにミララは今、カイを黒だと言った?

 リーナが混色の可能性はほぼないと思っていいはずだ。

 あそこでフェルルを守ったと言えるのは、フェルルを塗りつぶそうとして失敗した黒だけだから。

 でも一応は適当にフェルルを守ったと言った可能性もあるか……?

 たまたまフェルルだと当たっただけで、リーナが混色の可能性も……?


「カイかミララのどっちが本物かは分かりませんが、私はカイの方が信用出来ると思います!」

「なんで?」

「やっぱり最初のキースが黒っていうのがおかしいと思うんだよね。いくらミーテを勝たせたくても、黒がああも堂々と、退場させられる可能性の中で出てくるかなって。ユートならやりそうだけど」

「おい、リーナ!」

「ちょっと、観覧席は喋っちゃダメだよ!」


 ……私も、どちらかといえばカイの方が信用出来ると思うけど、何故リーナがそう言うんだろう?

 こんな、ミララが狙われるような事を?


「俺はミララさんを退場させるべきだと思います! それでゲームが終わらなければ、リーナさんを退場させればいいだけですし」

「うん、私も賛成だよ! フィールさんは混色だろうから、退場させる必要はないし」

「カイが黒なんだから、私よりカイを退場させるべきでしょ。カイを退場させれば、既に黒のキースは退場させてるから、白の勝ちで終わりだから」

「ふふっ、フィーは? フィーはカイとミララ、どっちを信じるの?」

「私は……」


 フェルルを当てた事からリーナを黒だとすれば、ミララは怪しい。

 でも黒であるリーナがカイと共にミララを退場させようとしているとなれば、ミララは本物でリーナは混色だ。

 リーナが混色であるなら、カイとキースが黒だった事になるけど……


 混色のリーナがここまで堂々と動けるものだろうか?

 混色は誰が黒なのかも分からないのに?

 カイかミララのどっちが黒かも分からないのに、ミララを退場させようと言うなんて不自然過ぎる。

 それにカイに同意してるのも怪しい。

 リーナが愚策を講ずるとも思えない。


 だったらやっぱりリーナは黒で、ミララが偽物という事になるけど、そうなればリーナはどうやって勝つつもりなんだ?

 カイが本物の場合、ミララを退場させてもゲームは終わらない。

 この後にアキナ様を塗りつぶしたとしても、私は既にカイから白と判断されているから、リーナが確実に黒だと判断されてしまう……それはカイの言う通りだ。


 となればミララが本物か?

 本当にそうなんだろうか?

 何か、違和感が……


 ……これはもう、これまでの前提が間違っていたとしか思えない。

 どこで何を間違えていた?


 …………あっ!


「カイっ! これは……」


ピピピピピッ!


「議論終了です。誰を退場させるのか、決めて下さい」

「これが最後になるかも知れないわね。皆、心の準備はいい? せーのっ!」


 私とカイはミララを指した。

 でも、ミララ、リーナ、そしてアキナ様はカイを指した……

 そうだ、いくらリーナが話し合い中にミララが怪しいと言っていようと、最後に指を指す人さえミララじゃなければいい話だったんだから。


「え? なんで……?」

「ごめんね、カイ」

「このターンで退場するのはカイに決まりました。そしてその結果、黒陣営の勝利が確定しました」


 ……負けた。

 気付くのが遅すぎた。

 この最終ターンが始まった時点で、既に私達は負けていたんだ。


「……アキナ様が、混色だったんですね」

「あら、気づいた?」

「アキナ様が、混色?」

「そうよ、皆もっと疑わないとダメよ。あと、自分の役割を素直に話し過ぎ」

「ホントですよね〜。特にキースとフェルル、良くなかったよ」

「リーナは凄く良かったわね」

「えへへっ、フィールさんにそう言って頂けるのは光栄ですね!」


 かなり悔しいのは事実だ。

 でも素直にミララとリーナを凄いと思う。


「ミララもリーナも、私が混色だってすぐに気付いていたわね」

「アキナ様があんなあからさまに嘘を言うからですよ。自分に混色の可能性もあるのに、白で確定だと思わせるなんて」

「あれはミララがすぐに透色師の対抗として名乗り出てくれたからこそよ。あの状況なら、皆カイとミララのどっちが本物の透色師かが分からなくて、悩んでいたでしょ? 黒以外の人達はね」


 確かにそうだ。

 あの時アキナ様は、カイとミララの2人から白と判断されたから、自分は白である事が確定したと仰られた。

 でも本当は混色の可能性があったんだ。

 あの何気ない発言や、最初に退場しようとされた事で、アキナ様が白なのだと信じきってしまっていた……


「じゃあ混色なのに、自分が最初に退場するって言ったんですか?」

「嘘を見抜ける私を、ハンデを付けてまでわざわざ参加させたんだから、そう言えば誰かは引き止めるでしょ? そうして本物のただの白が出てくる」

「じゃあ私が出たのが良くなかったんですね……」

「いいえミーテ、あなたまでは良かったわ」

「そうだよ、ミーテ。ミーテが変わったのは良かったけど、つられてキースも名乗りを上げたのが良くなかったね。あれでユートも出てきて、私達にはただの白が誰なのかが分かっちゃったもん」


 あの退場発言も、本物の白を炙り出す為の策だったんだ。

 普段、強過ぎるアキナ様と共に遊ぶ事など不可能だ。

 それでも私達は一緒に遊びたいと思っている。

 その思いすらも利用されていたんだな。


「しかもミーテは確実に白だろうからミーテを退場って、おかしいじゃないですか。対立したのなら、キースかユートを退場させるべきなのに」

「あっ! ホントだ! 私、自分が退場ってすんなり受け入れちゃってた!」

「だから余計にアキナ様が変だって分かったんです。でもそれは、疑心になっていない私とミララだからこそ気づけたんでしょうけど」

「ふふふっ、そーねぇー」


 思い返せばアキナ様の言動はおかしい事ばかりだったんだ……

 こうして感想戦をすると、自分の思考の反省点が目立つな。


「フィーがフェルルを守ったのは凄かったわね」

「たまたまですよ。フェルルかジェイクかモーネの誰かが狙われる事は分かっていましたからね」

「因みに私の第一希望はフェルルでした」

「私もフェルル」

「なっ、2人して? なんでだよ!」

「ずっとそわそわしてたから、多分双子なんだと思って」

「私もそう思った。珍しくモーネの方をずっと見てたし、多分モーネと双子だろうなって」


 流石は普段からフェルルと共にいる2人だ。

 双子の妹であるミララも、ペアを組んでいるリーナも、フェルルの事をよく分かっている。

 私もそういう皆の機微を見ていないといけなかったんだ。

 ずっとカイとミララばかりを見ていないで。


「リーナが私より先に魔術師だと言ったのも上手かったわね」

「先手必勝ですから! でもやっぱり、アキナ様の誘導は流石でした! 一応フェルルとモーネが双子だろうとは思ってましたけど、あれで確信できましたから!」

「え、誘導……?」

「まだ気付いてなかったの? フェルルはアキナ様に誘導されて双子って言ったんだよ」


 思い返して見れば、アキナ様がずっと場を回しておられた。

 それが私達にとっては当たり前の事だし、アキナ様を絶対的な白だと思ってしまっていたから、全く疑わなかった。


「フェルルとモーネが双子だろうと思ったので、ジェイクを狙ったんです!」

「キースが白だって分かって、ミララさんが偽物の透色師だと分かったので、それを報告する重要な役だと思っていたのですが、まさか何も言えずに退場になるとは……」

「ごめんね、ジェイク。私、ジェイクが第1希望だった」

「ミララさん、謝らなくていいんですよ。ミララさんの勇姿が見られて、嬉しかったです」

「勇姿って程活躍してないけど?」

「そんな事ないです!」

「そうよ、ミララが透色師だと最初に名乗り出たのは、本当に凄く良かったんだから」

「……ありがとうございます」


 ジェイクとアキナ様に褒められて、ミララは目を反らして少し俯いた。

 多分照れているんだろう。

 うん、可愛いな。


「私もアキナ様に誘導されていたんですよね。リーナがカイ守ったと言った時、私にも誰を守ったのかを言わせて……」

「そうね。次に双子を狙ってもらいたかったし、あそこでフィーが誰を守ったのかは聞いておきたかったのよね」

「その上で、私がアキナ様を守るように誘導したのね」

「誘導出来たらとは思いましたけど、やっぱりフィールさんですからね。誘導されてくれるかなって不安でした。でもフィールさんは確実性を重視されるだろうと!」

「そうね。私もリーナなら確実性を重視すると思ったわ」


 あそこでちゃんとモーネを守れてさえいれば、まだ勝ち目はあったかもしれないのに……


「とりあえず悔しすぎるので、2回戦をしませんか?」

「そうね、カイ。激しく同意するわ」

「僕も今度は活躍してみせます! ミララさんも守ります!」

「さっき私にやられたばかりでしょ?」

「私も頑張るーっ!」

「僕もだよ、ミーテちゃん!」

「キース、私の為にってわざと負けたりしないでよ?」

「しないよっ!?」

「俺も次はガキに惑わされねぇからな」

「ふふふっ、頑張ってね」

「俺等もやられるだけじゃねぇーぞ! な、モーネ?」

「まぁね。リーナ程上手くは動けないだろうけど、頑張るよ」

「私は今回はたまたま運が良かっただけだよー!」

「もう誰の事も信じませんからね!」

「カイ、それはどうなの?」

「じゃあ、2回戦を始めましょうか!」


 普段は互いを信じ合い、共に戦っている私達。

 そんな私達の騙し合い。

 これはまだまだ楽しく続きそうだ。


fin


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

評価、感想をよろしくお願い致します。

大変勉強になると共に、励みになります!


最終結果


フィール→魔術師(騎士)

カイ→透色師(占い師)

ジェイク→彩色師(霊媒師)

フェルル・モーネ→双子

ユート・キース・ミーテ→白(村人)


ミララ・リーナ→黒(人狼)

アキナ様→混色(狂人)


ドヴィル→ゲームマスター


でした。

いかがでしたでしょうか?


本作は『奴隷の国』のスピンオフ作品です。

奴隷の国は、魔法や魔物が登場するファンタジー作品です。

フィール達の普段を気にしていただけた方は、是非奴隷の国も覗いてみて下さい。


https://ncode.syosetu.com/n1234gm/


長篇ですので読むのも大変だとは思いますが、お楽しみいただけますと幸いです(*^^*)


※奴隷の国はR15作品です。

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