仲良く。
今日の空は灰色。
燃えた後の色。
昨日の空は青色。
空虚知らずの甘い色。
明日の空はどんな色?
甘い甘い、虹色が良い?
君はどんな、色が良い?
今日も空を見ている。
今日も隣は眠ってる。
今日も心がだるい。
今日も隣は天使。
マツゲが長かった。
男の子ってこんな長いモンかな、と思った。
すこしだけ捲くれた袖から見える手首が細い。
でもソレにくっついた手のひらはとても大きい。
面白いモンだなぁ、と魅入ってしまう。
私は自分が思ってる以上に隣の人の寝顔が好きだった。
なんだかとても楽しかった。
とはいえ、今日もその程度の生活だ。
他の子ほどきゃーきゃーしてないし、笑うこともない。
ひまだけど、ひまではないのだ。
最近は見るモノが増えたし。
空と、風の質感と、隣の人の天使の寝顔。
十分だった。
すぐに放課後がやって来る。
カバンに色々と詰め込んだ。
他の子はすぐに用意を済ませ、すぐに教室から出て行った。
他のクラスの友達が待ってるから早く行こうってな具合だろう、大半が。
つい前までは私にもそんなことがあった。
待ってるから急ごうとか思ってた。
今では待ってても特に急ごうとは思えなくなった。
何て傲慢な女!
と自分でも思うし、周りも思うかもしれない。
だが、傲慢でも良い、ゆっくりと詰め込んだ。
「なぁ、隣の人。」
私からも隣の人が不意に話しかけてきた。
「はい。何?」
「思うんだけど、俺、いっつも寝てるけどさ。誰か見てる?」
あー、やっぱ感じ取るモノかなぁ。
ただ、それだけ彼の寝顔は価値有るモノなのだ。
美しい寝顔の主が、私をじっと見つめた。
うーん、どうしようかなぁ、と迷った。
久し振りにこんな風に悩んだ気がする。私もちゃんと人間なのだ。
それもちょっとだけ嬉しく感じられた。
「あぁ、うん。私見てる。はは、ごめんなんか、変態みたい。」
正直に言ってみることにした。
ここでうへぇ気持ち悪ぅ、とか思われても良いから。
だってどうせ、天使が居なかった時と同じに戻るだけなのだから。
隣の人の表情をちらりと伺ってみた。
「えぇ、あんたが見てたん?そうそう、視線感じてたんだよなぁ。そっか、あんたかぁ。」
にこにこと笑っていた。
この人もどうやら、そうとう変な人らしかった。
だが天使の寝顔の主はやはり、ソレ相応の笑顔で笑う。
「あ、でもすっごい綺麗な顔してるよ。うん、だから見てる。」
「そうかぁ、俺綺麗かぁ。いや、ちょっと照れるかも。」
「天使みたい。」
思ったことを口に出す。
彼はさらに照れて笑う。
「天使って。俺そんな無垢に見える?」
「見える見える。」
「いやぁ、ね。俺の隣の人ってさ、すっごい俺と似てる人だと思ったんだよね。」
意味、分かる?と彼が問う。
「分かるよ。何に対しても、適当に笑ってる人、ってことでしょ?」
彼は満足そうに笑う。どうやらアタリ。
「そう。もっと言うと、あんたの場合、無関心から成り立っている仮面、かな。
ノート貸した時も返す時も、何か作り物の返答と顔するなぁって。
だからちょっと気になってた。」
天使くんに気になるなんて言われると、『無関心から成り立つ仮面』とやらにも、
何やら沁みるモノがある。
「似てるの?天使くんと私が。うん、似ては無いと思うんだけど。」
「うは、天使くんって!矢原ですよ、ノゾキ魔?」
「私だって、岩井だし。」
「いやいや岩井、俺ら似てるよ。案外、似てる。」
矢原くんが力を入れて言った。
強く諭されている気持ちになる。
そして彼は、だからさ、と付け加えた。柔らかに笑っていた。
「これから、ちょっとだけで良いから、仲良くしない?」
普段であれば。
こんな話、興味無いのだけど。
理由は天使くんだからだった。
私は一応、久し振りにちゃんと笑いながら頷いた。
彼はずっとニコニコしてて、いつもの無表情を見せなかった。
あぁそうか。ふと思う。
彼と私は、互いが思うより結構深く繋がりを持ってるんだ。
だからここに居て笑いかける彼。
なんだか酷く可笑しな話に思えた。




