発見
昼飯を食べた後、オレは弓を片手に仕掛けた落としてのチェックに向かっていた。もちろん目的は肉の調達だ。
「鹿とか兎がいいなあ。猫とか犬とかだと可哀想だーとか言うやつがいるし。肉も旨くねえから外れなんだよ。」ちなみに大当たりは熊とか猪である。
「ちっ、リスが1つだけかよ。こんなん俺のおやつじゃねえか。村のやつらにグチグチ言われんのやだなあ……」
どうやら今日は外れの日らしい。まあ、自分のおやつがあるだけラッキーと考えよう。そうと決まれば火を起こすために枯れ木を集めよう。
「……だろ……い……」「おい……がで……」
……?何か声が聞こえる。親父譲りのよく聞こえる耳でも誰かが話をしていることくらいしかわからない。しかし、声はゆっくりと自分の方へ近づいてきている。とりあえず近くの木の影に隠れた。
「別にここならまだ普通に話していいじゃねえか。どうせ誰もいねえよ。」
「お前……いや、いいか。とにかくだ。俺たちは偵察に来てるんだ。もっと近づいたら今度こそ黙っとくんだぞ。」
まずい。同業者だ。しかもこの話から考えるに、オレたちのような税から逃れただけの元村人ではなく、傭兵か軍隊崩れの戦いで奪う本当の山賊のようだ。
「わーってるよ。でもなんで偵察だけなんだ?偵察ってのは襲う前にするもんじゃねえの?なーに考えてんだろお頭は。」「あの村には熊でも簡単にぶち殺すっていう凄腕の狩人がいるらしいからな。弓とかでこっちだけ殺されたりすんのが嫌なのか、それとも仲間に加えたいのかのどっちかだろ。」
どうやら死んだ親父にびびってるらしい。あんなクソ親父でも死んでからでも役に立つとは。
「ほーん。まあ俺も死にたくはねえしな。だからあの戦法なんだな。」 ……え?まて、戦法?
「ああ、だから俺たちはあいつらに領主の兵隊が襲ってくるまで手を出さないってわけさ。」 うそだろ。
「兵隊が勝ったら兵士襲って、村が勝ったら浮かれてるとこにドカン、とやって男殺して女を捕まえる。ヒヒヒ、さすがってとこかねえ。」 まってくれよ
「……あ、とにかく…………」――
「…………!…………」
自分の耳のよさが、始めて嫌になった。
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ここはダイデル山脈。ロイターン帝国とニストール王国の国境となっている山脈で、お互いの国の犯罪者の逃げ場となっており、ここを抜ければ新たな人生を始められるとまでいわれている。そんな様々な理由が重なり、
この山脈は本来の名前で呼ばれず、こう呼ばれている。
山賊山脈と。
国の名前とか自分でもすぐ忘れそう。