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【BL】そりは"えちぅど"。  作者: .六条河原おにびんびn


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終末を待つ年末の週末すぐ門松


***

「明後日でさ、今年が終わるぢゃん」

 大掃除を終えて、彼とこたつで休んでいた。年末の挨拶にもらったバウムクーヘンを食いながら。

 大掃除といっても、特にそんなやることはなかった。大体のことは終わらせていたし、年末はできるだけゆっくり過ごしたいから早めに済ませておいた。

「そうだな」

 あまり好景気とはいえないが、いい国だと思ってしまうのは、寒さとこたつと食事のせいか。この季節は尚のこと。

「なんかあんまり、そんな気しねぇよな~」

「暖冬だからか?」

 朝も夜も寒く、夏より気温が低いのは確かだけれど、日差しは強く、ストーブはやり過ぎで、こたつも少し熱いくらいだ。

「"慣れ"かね。昔は年が変わるってすごいことに感じたケド」

「お年玉を渡す側になったからだろう」

「それは、あるね」

 食べかすを拾う彼を、俺を眺めていた。

「意外と世界が終わるってときも、こんなもんだったりして」

 俺の悪い癖だと思う。不毛なことを考えた。明日があると漠然と思い込んでいるのと、思い込みきれないのでは、多分ここでかける言葉も違うのだろう。

「変わるのは、数字と干支だ」

「はぇ?」

「ただ、新しい0を越えて、また繰り返すってことだ」

 表現するのは苦手だった。教えるように、伝わるように……

「オレはオマエとなら、今、世界終わっても、いいケドな」

 ふと真面目な顔が、俺の目を捉えていた。何か悩み事でもあるのだろうか―……

「だってシアワセだもんな。天国に近い気がする。寒いケド晴れた日に、好きなヤツとこたつ入ってぬくぬくすんの」

 そして急に、目を眇めて白い歯を見せ、そんなことを言うものだから、俺は驚いてしまった。裏を読もうとしてしまう。捻くれた人間だから。

「同感ではあるが、困るな、それは。俺はお前とだから、次の春を楽しみにしているんだ。夏も、秋も、そのまた冬も……」

 変わるのは多分、西暦だけではないのだろう。俺も変わっていくのだろう。劇的ではないそれが少し怖くもある。けれど悪くはないのかもしれない。変わらないものもあるけれど、変わっていくものを大切にできる気がした。彼となら。

「オレも楽しみッ!」

 もし今年ではなく世界が終わるのなら、語りきれないことがたくさんある。ひとつひとつ思い出を引っ張り出して、感謝したいことが。すべて伝えきれないことも。

 そのときまで直接には言わない。遠回し遠回りでも、いずれは近付いてくるものさ。


***

2023.12.29

「世界が終わるときもこんなものかな」っていうのをやりたかった。

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