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【BL】そりは"えちぅど"。  作者: .六条河原おにびんびn


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26/59

重なってズレるcircle

* * *


 何となく立ち寄ったペットショップで、彼は安売りになったねこじゃらしを見比べていた。地域猫がたまに遊びに来るのだという。赤トラの太々しいやつと、陰険な三毛猫なら俺も見たことがある。




 俺はペット売り場をふらふらしていた。誰も彼もがガラスケースでおとなしくしている。綿飴みたいな白いポメラニアンは商談中の札があった。ペキニーズは隅で寝ている。柴犬はぼろぼろになったぬいぐるみを引き千切ろうとしている。大きなケースのゴールデンレトリバーは黒い玩具を咥えて暴れている。無邪気に見えた。可愛らしい。良い飼い主に貰われて、幸せに暮らして欲しいと思ってしまう。彼等がこのままここに居た後のことを多分俺は知っているから。そこには完全な善意がなければ積極的な悪意もない。ただただ理解のできない相手に感情移入し、あるいは自己投影をして、彼等を人間なりの範囲、人間の尺度、人間の知識で分かった気になる。分かった気になっただけということにも気付かないまま。




 上段の猫たちはあまり俺を見なかった。青い目をしたラグドールが人間臭く驚いているだけだった。仔犬たちとは何度か目が合い、俺の気配を感じている。黒いプードルの子供がガラスケースに毛を押し当てながら寝ていたが、俺が通りかかったとき起きてしまった。またもや目が合う。俺たちにある自由と彼等の自由は大きく違う。それでも俺は可愛らしく無邪気なこの場所に重苦しさを覚える。



 彼は日常、人懐こく柴犬に似ていていざスポーツとなるとゴールデンレトリバーのような逞しさを見せつけてくる。寝ている時は俺が近付くと腕に絡み付いて膝枕をねだる。何が気に入らないわけでも、何が悲しいわけでもなかった。怒ってもいない。不機嫌でもない。ただ靄がかかる。会計を終えた彼が、長いこと店に置かれ古びたねこじゃらしで俺を弄ぶ。




 些細なことでいい。幸せなんて大それたものは約束できない。ただ彼を悲しませたくない。


 俺を不安にする無邪気の塊に寄り添う。




* * *

陽気ワンコに理想抱きがちなスパダリ超絶美男子クールデレ少々メンヘラ傾向攻め。


2021.1.7

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