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VSモムダ

あけましておめでとうございます。

更新遅れてすみませんでした。今年もよろしくお願いします。



「まず相手陣地にバナナの皮を仕掛けてですね……」


「ダメだよ。ダメ過ぎるよ! スポーツマンシップに則らなと!」


「Notる? ……ああ、なるほど」


「なるほどらないで? 全然理解できてないのに納得しないで?」


 久遠くんは数秒の思案後、人差し指を立てて、まるで「良い案閃いた〜」と言わんばかりに口を開いた。

 いや、これ絶対いい案じゃないよ……。


「つまり、スポーツマンシップではなく、スポーツウーマンシップに則り、男虎さんにバナナの皮を仕掛けてもらうってことですね」


「お、何だ? これは、あれか。性差別って奴だな。そうだな、夏芽!」


 そう言えば一昨日の夜にそんな感じの話したなあ。

 愛萌って覚えたばかりの言葉を遣いたがる癖があるよなあ。


 久遠くんはなんというかアレだな。馬鹿だな。

 今回の球技大会、バスケ部で唯一彼だけがキャプテンじゃない理由がよーくわかった。


 ただ、初めは嫌われているのかと思ったけれど、どうやら人見知りする性格なだけで打ち解ければ意外と話してくれる人でもあるらしい。

 スポーツマンとして、嫌な奴ともプレイ中は仲良くできる、ってだけかもしれないけれど。


「おい、夏芽聞いてんのか、おーい」


「聞いてる聞いてる」


 ちゃんと聞いてるよ、耳を塞ぎたい気持ちは山々だけどちゃんと聞いてる。

 だから耳元でそんな大きな声を出さないでください。顔を近づけないでください。


「とりあえず俺は久遠くんが教えてくれた通りに頑張ってみるよ。バナナの皮はなし。フェアプレイでいこう」


 何だか疲れが取れないままに3Qが始まった。


 とりあえずは久遠くんに教わったプレイをなぞってみる。とりあえず、自分がノーマークだったら即シュート。パスはある程度敵を引き付けてから。ドリブルは緩急をつけて。難しい技は必要ない。大事なのは相手の意表を突くこと。


 考えることは色々あるけれど、ひとつひとつ紐解いていこう。



☆☆☆



 夏芽はなんというか、バスケに関してはからっきしだった。

 あたしが誘っておいて言うのも何だが、特別戦力になっているわけでもない。

 素人と比べたら、そりゃあ上手い部類には入るだろう。ボール運びはできるし、手足も長いしな。

 ただ少し期待し過ぎていただけ。

 残念ながら今日は体育の授業や昨日のサッカー大会で見せた超絶プレイは、拝めそうにない。


 ……そう思っていた。


「あ、入った」


 始まりは、夏芽が発した間の抜けた声だった。

 幾らかマシになったとはいえ、お世辞にも綺麗とは言えないフォームで放たれたボールは綺麗な放物線を描きゴールへと吸い込まれた。

 

「ねえ見て! 入ったよ!」


 フリースローラインの少し後ろから放ったシュートはネットを揺らすことなくゴールを抜けた。


「いやあ、コツ掴んじゃったかなあ」


 前半あれだけボロボロだったのだから、少しは決めてもらわないとこっちが困るというもの。


「手打ちだし、軸がブレてる」


「き、厳しいな」


 ちょっとした意地悪を混じえつつ、ディフェンスに戻る。モムダちゃん先輩とあたしの身長差は約50cm。彼女からボールを奪うのは容易ではない。

 しかも相手には身長170cm台後半から180cm前半くらいの男子選手が3人もいる。しかもしかもそのうちの1人は明らかに元経験者の動きだ。


 頭上でボールを回されてはまず取れない。

 これに関しては夏芽や瀬戸といった高身長組に任せるしかないのだ。

 私はバスケットボールというスポーツに関しては身長を言い訳に使いたくはないが、それでも確かに高身長が有利であることは変わりない。


 結局、男子の撃ったシュートをリングが弾くも、モムダちゃん先輩にリバウンドを取られての失点。

 夏芽のボール運びで切り返す。

 作戦は逐一替えているわけではないので、基本的に5アウトオフェンス。

 パス回しでモムダちゃん先輩を外に引きつけ切り込むか、外から点を獲る戦法だ。リバウンドはどうせ取れない。


「……チッ」


「おー」


 執拗なマークにイラついていると夏芽の間の抜けた声が聞こえてきた。

 

 今度はスリーポイント。25対29と、点差を4点まで詰めた。

 点差が縮まったのは久しぶりだ。


「ナイシュー!」


 声をかけると夏芽は汗を拭ってから、小さく照れ笑いを浮かべた。普段はニヤニヤと、何だか含みのある笑顔を浮かべる夏芽。純粋な喜びから生まれた笑顔を見るのは久しぶりな気がする。


「もっと点とるぞー」


 分かりやすく調子に乗り始めた夏芽は、その後もシュートを決め続けた。

 なんだかわからないが、不思議と落ちる気がしない。


 以前、向日(むこう)が夏芽とテニスをした際に「他人の努力を嘲笑う天賦の才能の持ち主」と称していたことを思い出す。


 確かにその通りだ。

 こいつは試合中、誰に教わるでもなく、動きを最適化している。シュートフォームやドリブル、パス回しまで。

 より洗練された形へと、成長を……いや、進化を遂げている。


 そうだ。これだ。

 あたしが見たかった夏芽のプレイ。

 経験や知識を凌駕する圧倒的才能。

 初心者故に予見できない型破りな動き。


 胸に燃える熱。

 それは憧憬か。それとも嫉妬か。


 ただひとつ言えるのは、あたしもこうなりたいと強く想ったこと。

 誰かの真似事じゃない。自由な型で強者と渡り合いたい。


「まあ、ちょっとあたしにゃ無理かもしんねえけどな」

 

 いつの間にか点差はつまり、逆転。

 4Q目は夏芽のマークにモムダちゃん先輩がついたことで、夏芽がシュートを打つ機会はほとんどなかったが、適格なパス回しであたし達が得点。


 後半の怒涛の追い上げで、見事勝利した。



次回、お弁当です。

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