バター(大) ^、
少し短いです。
「何とかしてください!!」
「あ?」
「先生、俺、4ヶ月も停学したら退学になっちゃうんですけど」
この学園に留年制度はない。
私立故に留年は学園側がどうにかしてくれるし、それでも留年になるような奴は強制退学させられてしまうのだ。
ヒヤヒヤと、冷たい汗が流れる。
やっべぇ……退学とか冗談じゃないぞ。
「先生助けてください! なんでもしますから!」
それはそれは美しい土下座だっただろう。
地面に頭を擦り付けて俺は頼み込む。
「はあ。御手洗が見たらなんと言うか」
「俺の代わりに御手洗さんを停学にしてもいいので、何とかして俺を助けてくれませんか?」
「……秋梔、お前プライドはないのか?」
だって、退学だよ? 退学はキツイよ。
俺はまだまだやり残した事がいっぱいあるのだ。
さすがに自分が退学になるなら助けたことを後悔してしまう。
「さっきは後悔してないって言ってたじゃねぇか」
「それは、女の子の前でカッコつけただけですよ。逆に『お前なんて助けなきゃよかった』とか、言えますか? 俺だって思春期の男の子です。ヒーローにだって憧れますよ」
散々御手洗さんの前ではカッコつけた俺。
そのツケがここで回ってきたようだ。
「お願いしますよ、何とかしてください。足でも何でも舐めますから。犬にだってなります!お願いします! 助けてくださいっ! 先生……いや、ご主人様!」
「誰がご主人様だっ! お前、恐ろしく情けない奴だな。御手洗はこんな奴に助けられたのか……」
先生は心底見下げ果てたような声色で、俺の頭上から吐き捨てた。俺は頭を下げている為、先生の表情は伺えないけれど、それでも彼女がドン引きしているのはわかる。
でも仕方ないじゃないか。
俺はどうしても退学したくないのだ。
「プライドなんて1円の価値にもなりませんよ」
「そう言うな。むしろプライドも持てない男にこそ1円の価値もないと思うがな。それにプライドのない奴が見栄を張ったりしないだろ? たとえ見栄っ張りであっても、お前が御手洗を救ったのは事実だ。お前は男の子として立派だったと思うぞ」
あれ? 貶されてると思ったけど、先生もしかして俺の事褒めてくれてる?
「先生……」
「べっ、別に褒めてなんかないんだからなっ! これはあくまで一般論として──」
「ツンデレかっ!」
やっぱりこの人ツンデレだよね?
前々から、ちょっと思ってたんだ。
先生は髪の先を指で弄りながら視線を逸らす。
言動だけでなく、所作までもがツンデレのそれだ。
「ふ、ふんっ! 全く、面倒事ばかり起こしやがって。……ただ、まあ、そんな奴らを面倒見るのが教師の仕事だ。私の方でも、できる限りの事はやろう」
「ありがとうございます!」
「あくまで! 私は教師として仕事をするだけだ。お前に感謝される筋合いはない! いいか? これを機にお前もしっかり学べ。自分が周囲に及ぼす影響、行動の責任、正義の犠牲、覚悟の重さ、考えるべき事はまだまだあるぞ。勉強を学ぶだけなら学校など必要ないのだ。社会に出たときに役立つのは学力よりも、むしろ対応力だ。この問題、 お前はどう対応する?」
「……俺は」
俺は──
「ご主人様、足を舐めさせて下さいだワン!」
「ガッカリだ!」
☆☆☆
放課後の生徒会室。
事務作業をする生徒会長──藍寄青士の元に一人の女子生徒が訪れていた。
「えっと〜、会長さんですか?」
「な、何故君がこんなところにっ!?」
藍寄会長は目の前の桃色髪の女子生徒の存在に、目を疑う。そう。彼女は本来この場に現れるはずのない存在だ。
「ちょっぴりお願いがあるんです」
「お願い?」
「はい」
──私とサイン交換してくれませんか?
この桃色の髪の女子生徒の正体は一体──




