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ドキドキ



 さて、数時間ほどバスに揺られた俺たちもいよいよ目的地に着いたわけなのだけれど、俺はある事を失念していた。


「……ここ、どこ?」


 俺、友達と遠足に行けることが楽しみ過ぎて、目的地を全然調べてなかった。

 いや、馬鹿だと思われても仕方ないけど、今の今まで、何処に行くかも分かっていなかったのだ。

 視界に映るのはものすごく広い駐車場と、日本離れした大きな建物達。


「夢の国でごわす。初めてでごわすか?」


「うん……」


 千葉ネズミっちランド……。

 死ぬまでに一度は行ってみたいと思っていた場所の『トモ100』補正バージョンの夢の国だ。


「外国に来るなんて初めてだ!」


「いえ、ネズミっちランドは一応日本ですよ」


 鋭い指摘をありがとう。


 俺は赤服くんと柏卯さんと合流して二重さんを待つ。少し遅れてやって来た二重さんを混じえて俺たち4人班のメンバーが全員揃った。


「よし! じゃあ、しゅっぱーつ!」


 俺は今にもスキップし出しそうな足取りで門を潜った。




「すっげぇ……」


 さすがは夢の国。

 ここだけ別世界みたいだ。

  どこもかしこも人で溢れかえっているのだけれど、何故か混んでいるようには感じられない。


「うわあ、やばあ〜」


 もはや語彙力も消滅してしまう程度にはテンションが上がっていた。


「秋梔さんめちゃくちゃはしゃいでるじゃないですか。精神年齢9歳くらい下がってません?」


「えへへっ。なっくんは無邪気で可愛いな〜」


「うっ」


 柏卯さんと二重さん、二人のニヤニヤする顔を見て急に恥ずかしくなってきた。


「と、とりあえずだけどさ、早速アトラクションの方に行こうよ! 何処かオススメはあるかな」


「クックック。我、汝のその言葉を待ち侘びていたぞ。魔女に綴られし禁書の出番のようだ」


 俺の言葉を聞いた柏卯さんはうさぎの鞄から黒くて分厚い本を取り出した。

 表紙には「遠足のしおり」と書いてある。


「え、もしかしてシロちゃん、それ自作したの!? すごーい!」


「否。これは禁書で──」


「それで? そのしおりにはどうするべきと書いてあるでごわすか?」


「え、あ、はい。ちょっと待ってください」


 どうやら柏卯さんは厨二病よりも人見知りが勝ったようで、ペラペラと普通にページをめくりだした。

 柏卯さんって、シロちゃんて呼ばれてたんだ。俺も今度呼んでみようかな。多分殴られる。


「では、まずは上に行きましょう」


「「「上?」」」


「北という意味です」


「「「ああー」」」


 もしかして柏卯さんは東西南北を右左上下で表現する人?


「で。北はどっちです?」


「……えっと、午前9時28分の太陽の位置はて……うん! 影の方向的にあっちだね」


「柏卯殿も大概でごわすけど、秋梔殿もなかなかでごわすな……」


 え? 俺なんか悪いことした!?


「ほらほら〜時間は有限なんだしさあ? 早く行こーよっ」


 二重さんは俺と柏卯さんの手を握って引っ張るように歩き出す。赤服くんはそれを見て少し残念そうな顔をしたけれど、ここは運が悪かったという事で。

 俺も生まれて初めて女の子と手を繋いで、内心胸がドキドキしています。


「えーっとーここだね! 宇宙山!」


「宇宙山……。えっとこれって」


「ジェットコースターですね」


「ジェットコースター! いいね! 乗ってみたいって思ってたんだ!」


「ふふっ。なっくん、その言い方だとジェットコースター自体に1度も乗ったことがないみたいだよ」

 

「え? あ、あははー、ごめん、そうだよね」


 実際、一度もないのだ。前世でも、今世でも。

 冬実々や春花も、本当はこういうところに着たいと思っているのだろうか。


 ……金か。


「どうしたんですか? 秋梔さん、怖い顔してますよ」


「むん。もしかして秋梔殿、ジェットコースターが怖いとでも言うつもりか、でごわす」


「な、な、な、何を言ってるんだい? 全然余裕だよ。3歳の頃から余裕だよ!」


「いや、身長足りませんから……」


 なんだと!? ジェットコースターには身長制限があるのか!


「ま、まあ、なんであれ、俺にかかればジェットコースターなんて余裕ってことよ」


 俺は秋梔夏芽だぞ!

 何を怖がることがあるだろうか。


 俺は強く意気込んだ!


 のだけれど、薄暗い雰囲気や音。やたらと多い途中退出用の非常口を見ていると段々神経がすり減ってくる。1時間ほど並んで、いよいよ自分たちがジェットコースターに乗り込んだときには心の中で大失禁をかましていた。


 安全レバーを確認し、手を振るお姉さんの笑顔がまるで悪魔のように見える。……やばいかも。



「大丈夫でごわす。秋梔殿はひとりじゃないでごわす」


「あっ、赤服くん……」


 そっと手を握ってくれた赤服くんの手から伝わる熱が少しだけ安心を与えてくれる。


 トゥクン……。


 これが吊り橋効果ってやつか?



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