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日本の文化です

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします!




「これより鈴音学園文化祭を開始致します!」


 生徒会を代表し、放送室で開催宣言をした俺は、そのままの足で風紀委員と合流する。


「ちっ。クソがよ、俺の文化祭マジックはどこにいったんだ?」


「カップルは優先的に補導しましょう」


「スカート丈、制服の改造には目を光らせなさい。少しでも違反する者は即刻会議室送りにして、2日じゃ終わらない量の反省文を書かせるのです!」


「リア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処すリア充処す……」


「………………相変わらず荒ぶってるなあ」


 この学園の風紀委員は皆、職務に忠実すぎて逆に風紀を乱している感がある。とくに恋愛事には厳しい、いわゆる非モテ軍団で、日頃からカップルに対しては目を光らせている。


 そんな彼ら彼女らと、俺は見回りの仕事をしなければならない。


「今日はよろしく頼むよ、書記殿。それから君は……会計の子だったかな?」


「よろしくお願いします、管木先輩」

 

「生徒会会計の一二三です。よろしくお願いします」


「うむ。爽やかないい笑顔だ、共に文化祭を盛り上げていこう!」


 風紀委員会の委員長の管木純愛は、今日も元気いっぱいだ。彼女は風紀委員の中でもかなり練度の高いリア充キラーのバーサーカーである。

 美人で気遣い上手でとても優しい。どうして恋人ができないのか、不思議なくらいだ。


「くそぅ……ボクだって文化祭までに恋人を作るはずだったんだぞ? なのに隣の席の山崎め、ボクがせっかく告白してやったのに『管木さん、俺が付き合うって言ったら即刻指導するつもりでしょう? 管木さんのような美人が俺を好きになるわけありません。……というか、三次元のボクっ娘はちょっときついです』とか言いやがった。全くもって嫌な奴だよ、彼は!」


「……ああ、なんかごめんなさい。今日はだいぶ気合いが入ってると思ったら、密かに失恋してたんですね」


 でもまあ、それは山崎先輩の言い分もよくわかるよ。

 結局日頃の行いのせいなんだろうな。


「失恋? なんのことだ?」


「え、好きだったから告白したんですよね? それでフラれてしまったということでは?」


「ボクが山崎を? いやナイナイ。全然釣り合ってないだろう。ボクはS級の美少女だぞ? 消しゴムを拾ってやったからその対価を払えと告げたまでさ」


「そうですか」


 この人、笑顔と言動の爽やかさで誤魔化してるけど、普通に性格悪いんだな、多分。


 付き合っているという事実が欲しいだけで、別に誰かが好きだとかそういうのはないのかもしれない。

 世の中色んな人がいるなあ。多分相容れない人だ。俺は多分、自分が好きになった人じゃないと付き合えないと思う。友達を作るのに精一杯で、恋愛には疎いけれど、だからこそ初恋は何とか成功させたい所存である。


 俺はどんな人を好きになるんだろうなあ。


「この先輩、普通に変人ね……」


 隣でボソリと一二三さんが言う。

 まあ、間違いないね。


「おかしいだろう? 普通ボクの告白を断るかい? 彼は去勢でもされてるのだろうか」


 そういえば初めて会った時も、彼女は彼氏くらいいつでもできると豪語していた。

 自分に対して絶大な自信があったのだろう。

 容姿だけで言えば彼女はかなり高レベルだ。体型だってモデルみたい。

 

 人は見た目だけじゃないって言葉も嘘じゃないんだなって思わされるよ。まあ、その事実については、中身陰キャで見た目不良の俺が1番身に染みてわかっていることなのだけれど。


「それでは全員傾注。巡回は予定通り4組に分かれて行うよ。生徒会からも頼もしい1年生を2人借りたから、今日は存分に取り締まろう!」


「「「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!」」」


 すごい熱意だ。

 やっぱり俺が知ってる風紀委員とは違うんだよなあ。


 


☆☆☆



「勘違いしないでよねっ!? これはデートじゃないから。あくまで巡回だから!」


「わかってるよ」


 俺と一二三さんは同じ1年生生徒会役員として、風紀委員を手伝い、巡回中。ついでにお店の宣伝も兼ねて2人ともメイド服を着ている。


「……おとこの娘と呼ぶにはさすがに身長が高過ぎるわね」


 一二三さんの這うような視線に思わず身震いする。

 何故かよくわからないけれど、俺たちのクラスは全員がメイド服を着ることになった。当然俺だって例外ではない。


「でも貴方女装の才能あるわよ。これは垂涎ものね。手袋やロングスカートは関節を隠すためかしら?」


「……まあ、一応」


 シャツのボタンも全て閉めて、喉仏も隠している。

 我ながら完成度は高いと思うけど、どうだろう。


「メスの気が出てるわよ。そそるわね。魂が勃ちたがってるわ」


「官能小説家の語彙力は恐ろしいな……」


 一二三さんは俺のことが嫌いっぽいけれど、それでも表面上は前より対等に付き合ってくれるようになった。

 それは素直に嬉しい。……でも、この容姿を性的な目で見ることに関しては前よりも遠慮がなくなった気がする。


「一二三さんはもうBLとか卒業したんじゃないの?」


 俺は周囲に聞こえないよう耳を近づけて言う。

 最も、文化祭真っ只中のこの活気の中じゃ普通に話したところで気づかれないだろうけれど。


「してないわよ。私は私の根底にある望みに気づいただけ。BLを捨てるなんて人生を捨てるようなものだわ」


 なるほど。よく分からないけど、頷いておく。


「あの、お姉様、お写真いいですか?」


 ふいに、袖を掴まれる。

 力はそんなに強くなかったけれど、無防備な背後からのアクションに、ついドキッとしてしまう。

 それよりも今、俺のことお姉様って言わなかった?


 振り向いた先にいたのは、他校の制服を纏った女子生徒だった。胸元には大きなカメラを抱えている。


「あの、その、お姉様がとても綺麗な方だったので……も、もちろんお隣のお姉様も素敵です!」


「なんで私がフォローされてる側なのよ」


 不満そうに口先を尖らせる一二三さん。

 ……なんというか申し訳ない。もしかして、目の前の少女は本気で俺のことお姉様だと思ってる? おネエ様じゃなくて?


「あ、ごめんなさい……もしかしておふたりはお付き合いされているのでしょうか?」


「ばっ、バッカじゃないのっ!? わ、私とこいつが付き合ってるなんて、そんな訳ないじゃないっ!」


 まるでツンデレの女の子のようなセリフだけれど、俺は知ってる。この人、本気で嫌がってる。なんだよその目。おおよそ人類に向けていいものじゃないよ……。


「分かってます。女性同士ですもの。あまり大きな声で言えないですよね。私、理解ありますから」


「私の方が理解あるわよ! 知り尽くしてるわよ!」


 な、なんの張り合いだろう。

 でも確かに理解度で言えば一二三さんに軍配が上がりそうだ。なんせ男たちの愛の物語を紡いでる方ですから。


「ほら、写真でしょ? 早く撮ってやりなさいよ」


 一二三さんは少女からカメラを預かると、俺に向けてシャッターを切る。隣では少女が恥ずかしそうに笑っていた。


「ありがとうございます、あの写真を送りたいので連絡先を聞いてもいいですか? できればLlNEとか……」


「LlNE? うん、わかった!」


「はあ? あっ、ちょっ」


 俺は連絡先を交換すると、にこにこと笑う彼女を背に、巡回を再開した。


「アンタ馬鹿でしょ?」


「え、なんで」


「何簡単に連絡先教えてるのよ。危機感が足りないわよ」


「……そうかな。俺からすればお友達が増えてとっても嬉しいんだけど」


 メイド服すげえー!

 友達増えちゃったー!

 って内心思っているのを何とか抑えているところなのだけれど。


「どう見たってあの子下心満載だったわよ。写真も口実でしょ? あれは文化祭でよく行われるナンパのテクニックよ」


「そうなの?」


「後日、デートの誘いとかされてノコノコ着いて行ったらぼったくりバーとかで食事させられてしまうのよ」


「そうなの!?」


「お金を払わなかったらヤクザが出てくるわ。それで取り調べ室に連れていかれてしまうの。……男同士、密室、取り調べ。何も起きないはずがなく……フヒヒっ」


「…………そうなの」


 危うく騙されるところだったよ。

 とんだ美人局だ。まさか文化祭の闇にそんな恐ろしい少女が潜んでいるとは。


「待ってよ、だったらさっきの子は巡回係として取り締まらなきゃいけないんじゃないの?」


 一二三さんが語ったような犯罪に巻き込まれる可能性があるのであれば、その芽は摘まなければならない。


「聞いてる? 一二三さん」


「何よ。妄想の邪魔をしないで。私の妄想は金になるのよ」


「…………。」


 ごめん。

 小説家にとっては妄想ですら財産なんだね。

 一二三さんは己の性癖を吐き散らかしたらいつの間にか人気作家になっていたって話だったし。

 

「アンタには私が気持ち悪く映っているかもしれないけれど、私にとってそれは褒め言葉なのよ。腐っていて結構。気持ち悪くて結構。私は私を誇ってるわ!」


「さ、さすが先生……」


「先生言うな!」


 あ、それはダメなんだ。

 基準がわからないな、とため息を吐いた時、一二三さんの持っていたトランシーバーがガサガサと音を立て始めた。


「一二三会計、秋梔書記、聞こえているだろうか。こちら風紀委員2年の篠珠だ。応答求む」


「こちら一二三、聞こえています。どうなさいました?」


「至急校庭への応援を頼む。暴走した黒塗りの高級車が二重極に追突した! このままでは、暴力団と不良の抗争が始まってしまう! すまない秋梔! 二重極とのタイマンを制し、刃物を持った狂人を撫で、燃え盛るデパートから足でまといを抱えてもなお軽傷で帰還したお前の力が必要なのだ!」


 タイマンなんてしたことないですけど!?

 というか、暴力団と不良の抗争とか、一生徒がどうにかできる範疇を超えている。普通に警察を呼んでください!


「と、とにかく急いでくれ!」


「……分かりました。急ごうか、一二三さん」


「……フヒヒ」


 絶対また変なこと考えてる!

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お読みいただきありがとうございます。 高評価頂けると更新の励みになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。 大量のメスガキとダンジョン攻略するローファンタジー  メスガキ学園の黒き従者〜無能令嬢と契約した最凶生物は学園とダンジョンを無双する〜 小説家になろう 勝手にランキング
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