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はじめの一歩

ちょっと短いです。



「眼圧によるプレッシャーの付与。じーじろじろじろ」


「……な、なにかな?」


 文化祭を目前に控えた月曜日。

 メイド喫茶の内装も、最終調整の段階に入った。

 教室にはオシャレな置物や、メイド服姿の先生に群がる男子たち。とても良い雰囲気だった。


 そんな中、まるでキスをするかのような至近距離で俺の顔を覗く生徒──安藤ロイ子だった。


 相変わらず美しい顔だ。

 これがアンドロイド──つまりは人工物だということは、つまり人間は芸術という点において、神に並んだという証明だ。


「私の使命は貴方を卒業させること。なのに貴方は少しも適性がありません。どうしたものでしょう」


 うーん。と考える素振りを見せる安藤さん。

 そんな愛らしい姿とは裏腹に、彼女の頭部では恐ろしいスピードで演算が行われているのだろう。

 

「そんなこと言われても……。そもそも適性ってなんなのさ」


「それはわかりません。でも貴方はまだ仕舞いこんでいる。大事なピースを、大事にしたまま、閉じ込めてしまっているのです」


 そう言って安藤さんは、俺の胸に拳を当てた。


「貴方は臆病。気持ちに蓋をしています。すべて解き放てばいいのに」


 そんなことを言われても。


「でも卒業適性がなかったら、俺留年しちゃうんだもんね」


「はい。死にます」


「死ぬの!?」


 恐ろしい……。

 いや、多分死なないけど!


「男虎愛萌とデートに行った日── 貴方が私を置いていったあの日以降、少しずつですが彼女の適性は上がりつつあります。それに加え、貴方と交友関係にある人間の卒業適性は非常に高い偏差値をもっています。貴方と同様に、朝比奈夜鶴だけは適性が低い点は気になりますが、このクラスにおいて秋梔夏芽が鍵を握っているのは間違いないと考えます」


「………………。」


「悪く言えば、自分はできないくせに周りの人間には何かを強要しているとか?」


「それは本当に悪い言い方だよね!」


 でも。


 その言葉を聞いてしまったいま、俺の仮説はいよいよ確信に近いものとなった。

 卒業適性とは試練のことだろう。

 主人公とクラスメイトたちの絆を繋ぐ試練。

 それを乗り越えたか、乗り越えていないか。

 それが直接そのまま卒業適性に繋がっている。


 愛萌は文化祭を期に己のコンプレックスを克服することになるだろう。文化祭は彼女の試練の場でもある。


 だが俺は──秋梔夏芽は、何も為していない。

 何も乗り越えてなんかいない。


「…………。」


「大丈夫ですか? 顔色悪いですよ」


「ああ、ごめん。何でもないよ。ただ──そうだね。俺は秋梔夏芽なんだもんね」


 何処か他人事のように思っていた。

 秋梔夏芽は秋梔夏芽であり、前世の記憶を持った僕の自我は未だ水無月透として生きていたのかもしれない。


「ありがとう、安藤さん。目が覚めたよ」


「良かったです。2度寝しないでくださいね」


 あはは。

 善処します……。


 さて、いよいよ明後日は文化祭だ。

 めいいっぱい楽しもう。

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