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暴走族



「はいっ! つーわけで、今日は俺達のバンド名等々色々決めることにした!」


 放課後の空き教室。

 左近に呼ばれて集まったのは、俺と夜鶴と愛萌と二重さん。

 文化祭でやるバンドについての話し合いだ。愛萌から話は聞いていたけれど、本当にやるんだね……。


「改めて見ても変なメンツだよな。まあ、全員夏芽の周りでよく見る顔だけどよ」


 愛萌の言葉に、夜鶴がコクコクと頷く。

 確かに俺からすれば、みんな普段から関わりのある人達だけれど、他はちょっと違うかもしれない。左近なんかは最近まで二重さんがアイドルをやっていることを知らなかったみたいだし、愛萌と二重さんなんかも普段から頻繁に喋っている様子もない。

 

「夏芽と仲良さそうな奴らを独断と偏見で集めた。他にも赤服を誘ってみたんだが、あいつは『ここちむが出るなら拙者は応援席にいるでごわす』とかなんとか言って辞退した」


「待ってください、辞退できたんですか!?」


 珍しく声を上げる夜鶴。左近とはバイトが同じこともあって少しは喋れるようだ。

 多分彼女も俺と同じでいつの間にか誘われてた側の住人だな。


「赤服に断らたからな。これ以上参加者が減るとマズいと思って、連絡しなかったんだよ」


「故意だったのかあ」


 多分だけどこの様子を見るに、二重さんと愛萌はちゃんと誘われていたらしい。そう考えると、愛萌がいるのはなんだか不思議なんだけれど。


「愛萌って楽器とかできるの?」


「ベースならちょっとな」


「へえ。ちょっと意外かも」

 

「意外? 何言ってんだよ、夏芽。男虎は中学時代ヤンキーやってた女だぞ? こういうやつは大概思春期に楽器とかに憧れちゃったりすんだよ。人とは違う自分に酔ってたりすンだよ」


 偏見がすごいよ。

 愛萌が顔を真っ赤にしてるじゃんか。


「ちなみに俺は酔い潰れた側だな。ドラムは任せておけ」


 おう……。

 同じ道を辿ってきたふたりなんだね。


「で、バンド名なんだが、何がいい? 一応俺は100個考えてきた!」


「じゃあ、それでいいだろ。お前が決めてきたやつから選ぼうぜ」


「うむ。男虎、お前ならそういうと思ったぜ。じゃあ、上から順にあげてくぞ。えー、放課後晩餐会、号笛と警鐘、水色炊飯器、紳士の鑑益荒男、不祥事、英雄の一撃、あとは……」


「全部やめた方がいいよ。全部よくないよ」


「なんだよ。ダメだしかよ夏芽。既存のバンド名を俺風にアレンジした良い名前だと思うけどな」


 まず、既存のものをアレンジしてる時点で間違ってるんだよ。世に出たものはそれで完成してるのだ。劣化させることはできても、それ以上のことはできない。


「大事なのは俺達らしさだと思うよ」


「らしさ、か。なるほど。……二重はなんかいい案あるか?」


「そうだねぇ。あ、そうだ! じゃあ、今から連想ゲームでもしてみない? ここら達から連想される単語の中からかっこいいものを選べばいいんだよ」


「なるほど。そりゃあ、いいかもしれないな。よし、まずは朝比奈からだ。コイツから何を連想する?」


「陰キャ」


「はうぅ」

 

「ちょっ、愛萌!?」


 ストレート過ぎるよ。

 早くも自分の番が怖くなってしまう。


「まままままま待って。確かに、連想ゲームはいい案だと思うけど、それだと個人の特徴になっちゃうから、まずはテーマ──そう、テーマを決めようよ。なんでバンドをやるのか、音楽を通して何を伝えたいのか、それを決めてから、テーマに沿って連想ゲームをしよう!」


「なんだ夏芽、さっきから文句ばっかだな。だが良いだろう。たしかに今のは聞く値打ちのある意見だ。──俺は単純にかっこいいと言われたいからバンドをやろうと思った。モテたい、バンドでモテたい。もちろん俺には春花がいるから彼女はいらないが、かっこいいとは思われたい!」


 ストレートな意見だった。

 音楽はモテないと気付いてからが本番だとは言うけれど、文化祭で行うバンドくらいなら、そんな下心有りきでもいいのかもしれない。


「気持ちは分かります。私もカッコイイって思われたい……です。陰キャでも、できるんだって、思って欲しい。やるからには勇気を与えられるような人になりたいです!」


「いいじゃねぇか。男虎はどうだ?」


「あたしは別に伝えたいこととかねぇよ。ただまあー、なんつーかちょっとしたチャレンジ精神? みてぇなのかな」


「二重は?」


「私はもちろん、みんなを笑顔にしたいからだよ。アイドルを始めたきっかけも同じ。私を応援してくれるみんなの笑顔が見たいの!」


「じゃあ、最後。夏芽は?」


「俺は……」


 どうだろう。

 正直に言えば、バンドなんて考えたこともなかったから、あまり自覚を持てていない気がする。

 でも、もしも今の俺にできることがあるとするならば、そのチャンスを逃したくない。


「俺も愛萌と同じかな。多分、自分の殻を破るとしたら、きっとこの経験は大きなチャンスなんだと思う。だから俺は闘志を。自分の弱さと闘う姿をみんなに見せたい」


「夏芽…………。まあ、よくわんないけど、意見は全部出たということで。これをどうテーマとするかってことだな」


 あれ。

 今ちょっとかっこいい風なこと言わなかった?

 軽く流されちゃったんだけど、みんな聞こえてなかった?


「まとめると、かっこよさと勇気と笑顔を与えられるバンドにしたいってことだな。はい。ということで、俺達のバンド名は『株式会社アットホームヒーローズ』になりましたー!」


「「「異議なし」」」


 ないの!?

 連想ゲームは!?


「大事なのはバンド名よりも歌だよね。デビューするわけじゃないんだし」


「そういうものなのかな」


 音楽に関しては一番詳しいであろう二重さんに言われてしまうと反論もできない。


「というわけで、次に歌う曲の方へ移りたいと思います。文化祭では4曲+アンコールで、最大5曲まで歌えるらしい。今回はちょうど5人なので、持ち歌はひとり1曲とします」


「ん? ちょっと待った。みんな歌うの?」


「たりめぇだろ。作曲は二重の知り合いがしてくれるらしいから、詩だけ自分で考えるように。もちろんデュエットでもサブボーカルありでもいいぜ?」


 なんだそれ。

 めちゃくちゃ大掛かりじゃないか。

 文化祭まであと2ヶ月切ってるんだよ?

 なんで今言うの!?

 

「ちなみに俺はソロで歌うつもりだが、デュエット組みたいやつとかいるか?」


「左近、お願いします。一緒に歌ってください」


「いいぜ」


「じゃあ、ここらはみんなと歌いたいなー」


 なんて。話が進んでいった結果──


 1曲目・男虎&二重

 2曲目・秋梔&郷右近

 3曲目・朝比奈&秋梔

 4曲目・郷右近

 5曲目・二重&みんな


 という割り振りで歌うことになった。


「作詞は金曜日までにお願いします」


「……明後日じゃんか」

 

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