図書館で不思議な本に引っ張られ、気がついたら異世界だった。召喚スキルはSSS級なのでのんびり過ごします。
図書館で不思議な本に引っ張られ、気がついたら異世界だった。召喚スキルはSSS級なのでのんびり過ごします。④初めての護衛任務!(旧タイトル:異世界転生したけど、召喚しか使えない!最強めざせるのか?)
短編のつもりでしたが、4話目になりました。短編ゆえに色々な展開を試しています。こうしたら、もっと面白くなるなど教えていただけたら幸いです。
そうでなくても、気軽に読んでいただければ幸いです。
時々、気が向いたら続きを書いていくかもしれません。
連載中の『攻撃受けて、スキルもらって、最強を目指す~蛇だけど!~』もどうぞよろしくお願いいたします。
僕は、出雲暢気図書館に置いてあった汚れた本『召喚術(達人編)』を手にとって、読み始めた瞬間、目の前が真っ暗になり、気が付いたらシャイニアンの森の小屋にいた。手にあったのは、汚れた本と傘だけだ。その後、いきなりのヒュージデスウルフの討伐、配達任務、薬草採取などこまごまとした任務を高評価でクリアしてきた。評価点がHランクをクリアしたので、Gランクに昇格した。
暢気は、冒険者ギルド「シャイン」のある町「スプリングタウン」を拠点としてかわらない生活をしていた。ヒュージデスウルフの換金した対価で特に問題なく生活できていたが、定期的にギルドの仕事を受けないと登録はく奪があるので、久しぶりに依頼を受けることにした。
「アンナおばさん!おはようございます」
「ああ、おはよう!暢気君。今日はお出かけかい?」
「たまには冒険者ギルドの依頼を受けないといけないですから」
「そうかい、若いのに働きものだねぇ。頑張りなよ」
そう言って、アンナおばさんは不意にりんげを投げてよこしてきた。りんげは甘酸っぱくて、赤い木の実だ。僕はいつもアンナおばさんの所でこのりんげを買っていた。
「いいんですか?ありがとうございます」
僕はりんげをかじりながら、冒険者ギルド「シャイン」に向かった。両開きのドアを押し開けると、そこにはいつもの美人エルフ受付嬢のサニアさんがいた。
「サニアさん。おはようございます。やっぱりこの時間はすいていますね」
僕が訪れたのは、昼前だった。冒険者ギルドでは早朝に新しい依頼が、張り出されるため、昼前は丁度冒険者たちが少ない時間帯だった。
「ああ、暢気君いいところに来たわね。急ぎの護衛任務があるんだけど、受けてみない?」
「でも、護衛任務ってDランクからじゃないのですか?」
「本当は、Dランクなんだけど、今回は隣町「カッコー」までの大通りで距離も近くて、危険なモンスターもいないエリアまでの依頼なのよ。それに、依頼主よりFランクからでも構わないといわれているのよ。護衛というより荷物持ちとしての役割が欲しいんだって」
「えっ、でも僕は先日Gランクに昇格したばかりですよ」
「さきほど、ギルマスに相談したら、暢気君なら大丈夫だろうってお墨付きをもらったわよ」
「まあ、ギルマスの了解があるなら、受けてもいいですよ」
「そう、よかったぁ。出発は1時間後になるからよろしくね」
「えぇぇ・・・1時間ってすぐじゃないですか?」
「そう、すぐだけど、お願いね」
サニアさんはお世辞のような笑顔で依頼表にギルド印を押してくれた。
◇
1日さかのぼって午後遅くに、商人のタリントさんは黒ずくめの男たちともめていた。
「コロニさん、約束が違うじゃないか?」
「タリントさんよ、そんなことは知ったこっちゃねぇぜ。親分から言われた通りに伝えているだけだ。期日は明日の午後夕刻前だ。わすれるなよ、夕刻前だぞ」
「そんな、急にいわれても・・・」
◇
「えーと約束の場所は、スプリングタウンの入り口の側に軽馬車があるとの事だったけど・・・あれか!」
暢気は何時ものように『召喚術(達人編)』を出して、Ⅲ召喚:マジックバックを方から下げていた。今回の任務は1泊2日で食事つきとのことだったから。対して荷物はなかったが、万が一の為に、食事と水は準備していた。
軽馬車の側には、顔色の悪い男が1人立っていた。暢気はおそるおそる声をかけた。
「あの、護衛任務で来ました。出雲暢気です。暢気と呼んでください」
「なんだよ、お前、若けぇなぁ。仕事出来んのか」
(なんなんだ、初対面でなんでこんなこと言われなくちゃいけないんだ。嫌な感じ)
「一応、ギルマスの承認も受けていますがね。いいでしょうか?」
「ふん、ついてきな」
(随分、嫌な感じだな。まあ、1泊2日だからいいか。我慢我慢)
馬車が走り出したが、依頼人は一言も話をしてこなかった。
「すみません。よければ、名前を教えてもらえませんか?」
「なんで、てめぇみてぇなガキに名前を教えないといけないんだ。ちっ、タリントだよ」
(なんだ、名前を教えるのは嫌みたいに言っていたけど、ちゃんと教えてくれた。実はいい人)
「暑いですね。お水もらえませんか?」
「なんだよ、水も準備してねぇのか。お前冒険者だろう。馬鹿じゃねぇのか。お前にやる水なんかねぇよ。そこの水たまりの水でも飲んでろ」
(なんだよ、この男、マジむかつく。自分で護衛任務を依頼していてそれはないだろう)
「おい、小僧!そこの茂みが怪しいぞ。見てこい!」
「何もいないでしょ」
「見て来いって言ってんだろう。依頼主のいうこと聞けねぇのか?」
暢気はしぶしぶ茂みの所へ行って確認をしていた。タリントさんには見えないように、こっそりとⅠ召喚(攻撃):シャドウウルフを召喚しておいた。必要ないと思ったが、見られても困るから、隠密行動が得意なシャドウウルフにしておいた。そして、何もないことを確認し終えた後、軽馬車に戻ろうとしたら、すでに、軽馬車が動き始めていた。
「ちょっと、ちょっと待ってくださいよ。まだ乗ってないでしょ」
「なんだ、とれぇな。そんなんじゃ、護衛任務なんかやめちまえ」
暢気はこんな任務やめてしまおうと思ったが、初護衛任務を失敗したとなるのも嫌だったので、我慢我慢と思い全速力で走って、軽馬車に乗り込んだ。
「ちっ、間に合ったか」
タリントは間に合ったことに対して、不満な様子だった。
(なんで、こんな簡単な護衛任務なのに、こんなに意地悪なんだろう。僕が若いから舐められているのかな)
その後も、チビだの、役立たずだの、帰ってしまえだのさんざん言われ続けたが、言われれば言われるほど僕も意地になって、この任務をやり遂げてやるという気持ちが強くなった。
(なんだよこの子、なんでここまでしているのについて来ているんだ。普通ならとっくに文句を言って任務放棄をしているはずだ。内容をギルドに伝えればペナルティもないはずなのに。嫌な奴が護衛に来たもんだ)
タリントは思いつく限りの嫌がらせを暢気に行っていたが、一向に立ち去る気配がなかった。目的の場所までもう少し。時間がない。
太陽が傾き辺りが少しずつ暗闇に近づいているときに、暢気は軽馬車の向かっている先が違うことに気が付いた。
「タリントさん、こっちは『カッコー』とは少し道が違うように思いますが、どうしたんですか?」
タリントさんは何も言わずに黙ったまま、手綱を引いていた。
「約束の場所はこの先さ。もう着いいたも同然さ。ふふっふははははっ。俺は最低なやつさ自分可愛さに、こんな若い冒険者の命を犠牲にするなんてな。もう、いいよ。やっぱりこんなことするのは俺の柄じゃない」
そして、正面に30名位の盗賊たちが正面に集まっている所で、タリントさんは軽馬車を止めた。
「よお、タリント例のものは持ってきたか?」
「ああ、あるよ。妹はどこだ!」
「ちょっと待ってろ!おい、あの小娘を連れてこい、丁重にな」
盗賊の頭のような男が仲間に声をかけているときに、タリントさんが小声で声をかけてきた。
「すまない。暢気君。やっぱり君の命を僕たちの為に使うことはできない。これはせめてもの償いだ。今のうちに後ろから逃げてくれ。冒険者の君だったらきっと逃げ切れるはずだ」
(少しづつ、状況が読めてきたよ。タリントさんは低ランクの冒険者を妹との取引に使うためギルドに低ランクでの護衛任務を依頼したんだ。だか、やってきた護衛を見て、やはり、取引に使うことが出来なくなったが、それを伝えるとタリントさんは今後二度とギルドに護衛任務を依頼できなくなる。それでも、何とか、僕に逃げ出してもらうように意地悪をしてきたんだ。なんだタリントさん実はいい人じゃないか)
「急げ、早く逃げるんだ。僕たちはもうここで終わりだ。だから、気にせずに逃げても構わないよ。ギルドには今の状況を伝えればペナルティは無いとおもうよ。さあ、これをもって、今のうちに逃げるんだ。盗賊からは僕が絶対に守ってあげるからね」
トリントさんは本来の笑顔なんだろう。優しく微笑みかけてくれた。
(こんな優しいトリントさんにこんな苦しい決断をさせた盗賊たちめ。絶対に許さない)
「ねぇ、トリントさん。約束のものってどれなの?」
「暢気君、もういいんだ。逃げておくれ。君一人では絶対にあの盗賊たちに勝つことはできないよ。だから・・・」
「これだね」
トリントさんが手に大事そうに握っていたものを、奪い取って、盗賊の方に歩いて行った。
「だめだ。暢気君。ああ、僕は取り返しのつかないことをしてしまった。すまない、暢気君。本当にすまない」
トリントさんは軽馬車をたたき、大声で泣きながら足元に崩れていた。
暢気はゆっくりと、盗賊の頭らしき人のところまで歩み寄っていった。その時、トリントの妹が声を荒げた。
「兄さん、なにばかな事をしでかしたの。こんな若い青年の命をいいようにもてあそんで、本当にダメな兄さんなんだから。それから、ばかな兄さんの為に命を失わせることになって本当にごめんなさい。ごめんなさい」
妹は状況を認識すると、大粒の涙を流しながら、僕に謝ってきた。
暢気は軽く妹さんに会釈をすると、盗賊の頭に話しかけた。
「あなたがこの一味の頭さんですか?そして、この人があのトリントさんの妹さんですね」
「そうだ。それで、お前の手にあるのが例のものか?」
盗賊の頭が、暢気が手に持っているものを受け取ろうとした丁度その時、暢気は小さくつぶやいた。
「シャドウ!妹を救ってくれ頼む」
「相手は生かしたままは無理だぞ」
「仕方がない、妹とその兄が無事な状況になったらその後は出来るだけ生かしてくれ」
「たやすいな」
シャドウウルフが返事をするや否や、妹をつかんでいる男が倒れていた。そして、妹を背中に乗せるとあっという間に妹はトリントの側に来ていた。
「お前ら気をつけろ!シャドウウルフが出やがった。くそぉ、こんな時になんでこんな厄介な魔物が出やがったんだ」
盗賊たちは突然現れた魔物に翻弄されていた。数分後瀕死の状態で倒れている30名の盗賊たちがそこにいた。
シャドウウルフが暴れている間に、ゆっくりと暢気はトリントとその妹の所にやってきていた。暢気がトリントさんのところに到着した時にはすでに、盗賊たちは片付いていた。
「あっあの魔物は暢気君のものかい?」
「はい、そうですよ。強いでしょ。僕もびっくりするくらい強いんですよ」
シャドウウルフの強さにトリントさんはあっけにとられていた。
その横で、妹さんが声を出してきた。
「暢気さんというのですね。今回は兄さんが、本当に兄さんがばかなことをしてしまってごめんなさい。ほら、兄さんも誤りなさい」
「暢気君、道中件もそうだが、本当にごめんなさい。申し訳ないことをしたよ。こんなことをした商人は今後二度とギルドに依頼を出せなくなるから、商人廃業だな。だけど、暢気君が無事で本当によかった」
「トリントさん、商人廃業しなくて大丈夫ですよ。僕はこの件を冒険者ギルドに報告はしませんから」
「いっいやしかし・・・」
「暢気さんだめです。やってしまったことはやってしまったこととして責任を取ることが必要です。兄はそれくらいの分別はきちんとありますから」
「う~ん、ではこうしましょう。僕は冒険者ギルドに今回の件を報告しない。それで、トリントさんは僕がシャドウウルフを従えていることを冒険者ギルドに言わない。これで、お互いに秘密を保持するということでどうでしょう」
「そんな、本当に・・・本当にありがとう。生涯この事は忘れないよ」
「よかった、こんばんはここに泊まって、明日まで護衛任務を全うしますね」
隣町の『カッコー』までの護衛任務を終え、帰りは同じくトリントさんの護衛任務を指名依頼で受けた。
盗賊たちは『カッコー』の役人の手でとらえられた。討伐報酬をトリントさんと山分けしようと言ったが、どうしても受け取れないといわれ。全額自分がもらうことになった。
「スプリングタウン」に戻り、冒険者ギルド「シャイン」で護衛任務クエストの完了報告をした。先方からの強い要望でAランク評価となった。1泊2日の護衛任務でどうしたら、Aランク評価になるのか美人エルフ受付嬢のサニアさんは不思議に思いながらも完了印を押してくれた。
読んでいただきありがとうございます。
面白かったでしょうか?
たぬき