093(主犯格そしてアタック)
中谷刑事部長は、田辺巡査を呼び出す。
「何用でしょうか、刑事部長」
「瀬奈ケーイチを見張れ。単独で動こうとしたら撃っていい。奴は人間不合格だ。意味不明な事をほざいてた」
「し、しかし!」
「ゼニア、カナメ、金城の3人でガンドローンを突撃させる。残り36時間半。後30分、深夜0時に作戦決行だ」
「風祭警視と島田警視庁長官はどうなりますか?」
「人柱になってもらう。これ以上、民間人に被害が出たら小暮内閣は終わりだ。何しろ娘が人質だからな」
その頃、銀行の中で動きがあった。バン! テロリストのボスは拳銃で風祭警視の脚を撃つ。風祭警視は踞る。
「なっ、何をする!?」
「5年前。俺は自由になった」
「怨恨か? こんな商売だ。恨みを買う事には慣れている」
「俺は無実だった。たったの3000円だ、3000円」
「3000円が何だって言うんだ?」
「風祭、お前が俺を取調室で追い詰めた。俺は道端に落ちていた財布を拾った。交番に届けた。しかし、落とし主は3000円が抜き取られていると言い、俺が疑われた」
「悪いが、詳しく覚えてない」
「だろうな。だが、やられた側は一生忘れない。俺の名は、北原照夫。俺は真犯人を見付けるべく、弁護士と共に戦った。結果は、理不尽にも1年間も拘留された挙げ句、3000円は落とし主が遣っていたというオチだ。笑えるだろ? 笑えよ。日本の司法は中世と変わらん」
テロリスト、人質は黙って聞いている。
「俺は無実の罪で拘留された。だから、警察を訴えた。不当拘留だと。しかし、警察は賠償金を払わないどころか、謝罪の一言もなかった。おかしいだろ? だから、俺はテロを起こした。拘置所で俺は絶望に耐えた。いつか恨みを晴らしてやろうと」
「北原とやら、それは司法に則り、拘留したんだ。警察に落ち度はない」
バン! テロリストのボスは風祭警視の腕を撃つ。
「いってー! 痛いー!」
「何百万回と聞いたよ、そのセリフ。宝くじを当てて調子に乗ってる瀬奈ケーイチをネットで見た。許せなかった」
「大々的に有事を起こした割には、動機が幼稚だな」
「風祭、まずはお前からだ」
バン! テロリストのボスは拳銃で風祭警視をヘッドショットした。即死だ。
「満足かい? ボス」
市子を庇うテロリストが聞く。
「まだだな。仮想通貨はいくら振り込まれた?」
「ざっと3000億円だよ」
ガタン! 銀行内が暗転した。
「アタックだ! デコイと煙幕を撒け!」