091(重症)
テロリストが解放したのは男性2人と女性1人だ。
キーン! 風祭警視の耳に入れられた通信機器がデコイに反応する。
「耳が痛い!」
「バカだな、風祭」
風祭警視は銃撃された4人を見てしまった。最初に撃たれた男性とモップで反撃に打って出た男性と荻野、市子だ。風祭警視が無事に生きて帰ってきたとしても首が飛ぶ。
その頃、ケーイチはニュータイプ専用のガンドローンのフライトコントローラーの最終チェックをしていた。しかし、新たに陣頭指揮を執る中谷刑事部長は、ケーイチにストップをかけていた。そもそも民間人に火器を扱わせていいのかと。風祭警視よりは有能だが、状況把握に手間を取っていた。
「ケーイチ君、確実に制圧出来るの?」
「任せて下さい。楽勝です」
「その自信の根拠は?」
「マイが着いてます」
「マイ?」
「故人ですが、協力してくれるそうです」
「はぁ~…………」
中谷刑事部長はため息を吐き、首を横に振る。
「任せて下さい。彼女が巻き込まれてます」
「どうやら君は重症の統合失調症だね。ケーイチ君に出番はないよ」
「しかし、俺以外に状況を打破出来る者はいませんよ」
ケーイチと中谷刑事部長の議論は平行線だ。
中谷刑事部長はケーイチを無視して、人質から解放された3人の取り調べを始める。
「陣頭指揮を執る、中谷といいます。中の様子は?」
「女の子が腹を撃たれ、重症です」
「その子の名前は分かるかな?」
「今井市子と言ってました」
「市子!? 中谷刑事部長、彼女です! 今すぐ助けないと!」
「ケーイチ君、ちょっと黙ってて。今、大切な話をしてるから」
ケーイチはモヤモヤしながら、対策本部の外に出て、ガンドローンのフライトコントローラーのチェックをする。
中谷刑事部長は取り調べを続ける。
「テロリストの数は?」
「10人くらいだと思います」
「テロリストの正体に繋がる情報はないかい?」
「テロリストの1人は高松と言ってました」
「高松…………そう多くはない名字だ。すぐに調べる。他にないかい?」
「皆、流暢な日本語を話してました」
「テロリストは日本人で構成されてるか」
「ヘリコプターがどうのこうの言ってましたよ」
「高飛びする算段はついてるのか」
「それと、瀬奈建築が関わってます」
「瀬奈建築…………瀬奈ケーイチ」




