078(奇跡)
次の日の朝、ケーイチは久々に酒を飲まず、GTRを運転して病院へ行く。ビクビクしてしまう。酒に頼って強気になってたのに。数時間、酒が抜けただけでワナワナと震える。
ケーイチは病院の駐車場にGTRを停めて、まずは精神科の窓口へ行く。待合室は空いていた。ケーイチはソーシャルゲームで遊んで時間を潰していると、新しいカードの出現率3倍キャンペーンのお知らせが入った。5万円も課金ガチャをして、お目当てのカードを手に入れる。満足だった。
「瀬奈ケーイチさん。中へどうぞ〜」
ケーイチはソーシャルゲームをやめて、診察室へ入る。上田が座っていた。ケーイチは用意されているパイプ椅子に座る。
「宜しくお願いします」
「はい、おはようございます。この1ヶ月はどうでしたかね?」
「酒がやめられません」
「そうですか。アルコール依存かもしれませんね」
「もっと強い睡眠薬と向精神薬を処方してください」
「分かりました。ちょっとこちらで調合を考えてみますね」
「お願いします。酒に頼らず、暮らせるように」
「分かりました。仕事の方はどうかな?」
「順調です」
「良い事ですね。どうしてもね、お酒が入ってると仕事に影響が出かねないのでね。肝臓にもダメージが蓄積して脂肪肝になったり。作用の強い薬が取って変われば、それも抑えられると思いますよ」
「ありがとうございます」
「来月も今くらいの時間帯の予約を取っておきますね」
「はい」
「では外の待合室でお待ちください」
「ありがとうございました」
ケーイチは待合室で診察票を返され、総合の窓口へ出す。10分ほどで呼ばれ、診療費を支払う。手が震える。震えるなと思えば思うほど手が震える。ケーイチは予約一覧票を財布にグシャグシャに入れた。それから、薬局へ処方箋をファクシミリで送ってもらい、市子の病室へ行く。
ケーイチは、市子の病室に入ると、洋介が過放電していた。
「よ、洋介さん?」
「ケーイチか。市子が…………市子が…………!」
「死…………?」
洋介は、市子の顔に目を遣る。市子は目を開けていた。
「市子!」
「だ、誰? ……眩しい。か、カーテンを…………カーテンを…………」
「ケーイチ、カーテンを閉めてやってくれ。俺は先生を呼んでくる」
「はい!」
洋介は病室から飛び出した。ケーイチは冷静にナースコールを押す。




