076(勝てる前提で勝負)
ケーイチが暮らす街だけで10ヶ所のプロ、セミプロチームが立ち上がった。東京の世界大会に向けて、各ワークスが交流戦をする。
ケーイチはゼニアに勝てるようになった。シラフなら。金城も力を付けてきている。それと、服部社長の息子の服部カナメもチームに加わる。若いが、なかなかの実力者だ。
ケーイチは服部飲料の本社に着き、カネを支払う。そして降り立ち、トレーニング施設に入る。
「わっ! 酒くさっ! ケーイチ、また、お酒を飲んできたね?」
ゼニアは飛び上がり、ヘッドマウントディスプレイを外す。ちょうど、カナメと対戦中だった。
「よう、ゼニア。元気かー?」
「飲み過ぎは脂肪肝になるぞ。人間不合格だな、全く」
「大丈夫、大丈夫。アハハ」
「ケーイチ先輩が酒臭いのは今に始まった事じゃない。通常運転ですよ」
服部社長の息子、服部カナメだ。
「カナメもゼニアくらいには勝てないと。世界大会で通用しないぞ」
「はーい」
「カナメ、仕切り直しだ。僕に勝てるかな?」
「望むところです」
ケーイチは隣のステージでAI、アーティフィシャル・インテリジェンスの機体を相手に模擬戦をする。だが、アーティフィシャル・インテリジェンスなどケーイチの敵ではない。秒で破壊する。
ケーイチはレースエリアでプレーしていた服部飲料の社員を3人連れてきて、1対3のハンデ戦をする。
『3、2、1、レディーゴー!』
4機は一斉に飛び上がり、敵機2機が突撃してくる。ケーイチはループでひらりと避けてフルオートのカウンターを喰らわす。様子見だった敵機もほぼ同時に3機のブレードを破壊する。回避とエアガンの命中精度なら、ケーイチがナンバーワンだ。
カシャン! 負けた社員の1人がプロポを地面に叩き付ける。
「クソ!」
「おい! 物を大切に扱え。俺に勝てる前提で戦ってたのか? 雑魚が」
ケーイチは社員を咎める。
「負けて悔しいのは当たり前でしょ!」
「だから! それは俺に勝てる前提で戦ってたからだろ? 三等兵じゃ相手にならねえな」
社員達はドローンやプロポ、ヘッドマウントディスプレイを片付けて去っていった。
ケーイチは、ゼニアとカナメの対戦を見る。ゼニアの圧勝だ。すると、トレーニング施設に警察官が入ってきた。
「ここが、ガンドローンの練習施設か」