007(無人ヘリコプター)
ケーイチは市子の家に行く。リンゴ畑が広がり、木造2階建ての豪邸だ。18歳の男が2人居た。市子の兄、今井洋介とその友人、近藤だ。それと、黒いスカイライン。ケーイチは思わず、言ってしまう。
「あの〜、もしかして、R32スカイラインGTSーtタイプMですか?」
市子の兄、今井が振り向く。
「詳しいな、少年。そうだよ」
「市子さんのお兄さんですよね?」
「ああ、そうだけど」
「クラスメートの瀬奈ケーイチです。ラジコンのヘリコプターを飛ばすと聞いて、見に来ました」
「そうかそうか。農薬散布するだけだから、あんまり面白くないよ。それでも良ければ、見ていきな」
「ありがとうございます」
ケーイチは何故か年上とは仲良くなる傾向がある。
「じゃあ、飛ばすよ〜」
庭には白いボディーカラーの無人ヘリコプターがあった。大きさはローターの長さが1メートルほどだ。
ブォーン! とローターが旋回する。すると、フワッと浮き上がった。操作はスティックタイプのプロポだ。
山の奥へ飛び、白いミストを撒きながら、リンゴ畑を1周する。
「スゲー! 格好いい!」
ケーイチは興奮しながら、ヘリコプターを目で追う。
市子の兄の友人、近藤は双眼鏡で無人ヘリコプターを見守ってる。
無人ヘリコプターはリンゴ畑に農薬を撒き終わって、庭に着陸する。
「ふう〜、壊さずに済んだ。ケーイチ君だっけ? 操縦してみる?」
「いえ、大丈夫です。もう終わりなら、帰りますね」
「R32スカイラインのエンジンは?」
「えっ? RB20DET!」
「マジで詳しいね。18歳になったら、ドリフトを教えてやるよ」
「ありがとうございます。スカイラインを買って待ってます」
ケーイチは市子の家を後にしようとした時、ちょうど市子が帰ってきた。
「ケーイチ君、ヘリコプター見た?」
「見た見た。チョーカッチョいい」
「良かったね。私もいずれ、ヘリコプターを飛ばすの」
「そこで、アマチュア無線技士の免許か。面白そうだな」
「でしょでしょ? 味方はケーイチ君だけなんだからね」
「どうせ、田舎の小学生だ。中学校も同じだろうな」
「近くに1校しかないから、そうなるね」
「じゃ、帰る」
「うん、また来週」
ケーイチは自宅に帰る。すると、現実に戻される。今日、土曜日は柔道クラブの日だ。