058(ケーイチのIQ)
ケーイチは病気の説明を受けたが、よく解らない。統合失調症は精神疾患の一種だ。光トポグラフィー検査で統合失調症のパターンが出ていた。しかし、ケーイチはもっと気になる事を上田に聞いた。
「俺のIQっていかほどですか?」
「えーっと…………」
上田はパソコンをカタカタ打ち、電子カルテを見る。
「IQは93です」
「93!? 冗談でしょ?」
「IQが全てではないので。気にする数値でもありませんよ」
「そうですか」
「睡眠薬と向精神薬を出しておきます。これで随時違ってくると思いますよ」
「分かりました」
ケーイチはIQが160くらいはあると思っていたが、厳しい現実を突き付けられた。しかし、睡眠薬を処方してくれると聞いて、楽になれると考えた。
「それでは、待合室でお待ちください」
「はい。あっ! 先生に1つ頼みが」
「何ですか?」
「閉鎖病棟に閉じ込められてる、今井市子を出してあげてください。マトモなので」
「今井市子さん…………私は担当医ではないので、なんとも出来ません。助言はしておきましょう」
「助かります。ありがとうございました」
ケーイチは待合室で椅子に座り、ソーシャルゲームを始める。しかし、すぐに呼ばれた。看護師からクリアファイルに入れられた受診票を渡されて、総合受付に行くように言われる。
ケーイチは総合受付にクリアファイルを提出して、椅子に座って待つ。周りは爺さん婆さんばかりだ。選択とシバかれに。
ケーイチは窓口に呼ばれ、実費を払う。十数万円だ。現金は足りない。クレジットカードで支払う。
事務員は、ケーイチに近くの薬局に処方箋をファクシミリしておけば、簡単に済むと教えてくれた。
ケーイチは病院を出て、道路を渡り、薬局に入って、薬剤師に処方箋を渡す。
「どれくらい待ちますか? 今日は待たされっぱなしで疲れちゃって」
「10分ほどでご用意できますので、お掛けになってお待ちください」
ケーイチは椅子に座る。左の脚がピリピリと痺れる。集中出来ないが、ソーシャルゲームのオセロをプレーする。
本当に10分で薬が用意され、ケーイチは薬剤師から説明を受ける。副作用は弱いみたいだ。つまり、作用も弱い。
ケーイチはシルビアに乗り、市役所に向かう。財布に運転免許証が入っているかを確認して。国民健康保険を発行すのに必要だ。