057(スキゾフレニア)
光トポグラフィー検査とは、目を閉じたところにパターンのある光の点滅を照射して、脳波の測定をするもの。装置は歯医者の処置に使うライトみたいな感じだ。
ケーイチは、技師にベッドに仰向けで寝るよう指示をされる。頭の各所に冷たいジェルを塗られ、それから、電極を20個くらい付けられた。
「10分間ほどで終わりますので。指示があるまで絶対に目を開けないでください」
「分かりました」
ケーイチは身構えながらも、返事をする。
「あまり固くならないように。それでは、始めます。目を閉じて〜」
パッパパパパと、ケーイチは瞼に強い光の点滅を感じる。じんわり暖かい。
10分間と言われたが、長く感じる。ケーイチはこれまた苦痛だ。
「まだか? まだ終わらない?」
ケーイチは堪らず、心の声が漏れてしまった。
「お静かに。後2分です」
技師がキレ気味に言う。
ケーイチの脳波には、ある病気の特徴があった。それを上田は読み取る。
パーッと、光の点滅が消える。光トポグラフィー検査が終わった。
「目を開けていいですよ」
ケーイチは目を開けるとチカチカする。
「これで検査は全部終わり?」
「精神科の待合室でお待ちください。後は診察をして終わりです」
ケーイチは頭に付けられた電極を外され、ジェルをペーパーで拭き取られる。
ケーイチは待合室で待たされる。当たり前だが、待てば待つほど、病みそうだ。ケーイチはソーシャルゲームを始める。コンピューター相手の将棋を。飛車角金銀全部を取り、180手で詰むと、次はオセロをやる。
「瀬奈ケーイチさん、診察室へどうぞ」
看護師に呼ばれ、ケーイチは診察室に入る。上田が座っていた。パソコンのキーボードをカタカタ打っている。
「どうぞ、お掛けになってください」
「はい」
ケーイチはパイプ椅子に座る。
「上田先生、睡眠薬は処方してくれますか?」
「ええ。但し一度に30日分しか出せないので、月に1回は通院してもらいます」
「分かりました」
ケーイチは、それくらい想定内だ。しかし、上田の表情から重苦しい空気が漂う。そして、上田は口を開く。
「病名ですが、よく聞いてください。統合失調症です」
「えっ? ただの不眠症じゃないんですか?」