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005(チープな自尊心)

 ケーイチは下校中に昨日、ラジコンカーで遊んでた下級生が、金属バットで武装して待ち構えていた。頭には包帯が巻かれている。


「昨日はよくもやってくれたな! ラジコンを弁償しろ! …………さもなくば、お前をぶっころっ……」


 ガツン! ケーイチは下級生が金属バットを構える前に間合いを詰めて、渾身の右ストレートパンチをお見舞いする。下級生が踞ったところで、金属バットを奪い、顔面に降り下ろす。口がぐちゃぐちゃになった。


 ケーイチは金属バットを田んぼに投げ捨て、なに食わぬ顔で家に帰る。


――ケーイチの家に、殴った下級生の親から電話がかかってきた。父親が出る。


「瀬奈さん、一体どんな教育をしてるんですか! お宅のケーイチ君に、息子は永久歯を5本もダメにされたのよ!」

「すみません、すみません。すぐに謝罪に伺います」


 ケーイチの親は詳しく事情も調べず、ケーイチを車に乗せて下級生の自宅へ行く。


 そして、ケーイチの親は、玄関でケーイチに土下座を強要する。ケーイチは渋々手を着く。抵抗したら、更に肩身が狭くなるから仕方なくだ。


「それが謝る態度ですか! 瀬奈さん、一体どんな教育をしてるんですか!」

「すみません、すみません。ケーイチ、ちゃんと謝りなさい」


『うるせえよ、ババア。白粉が干からびて地割れを起こしてるぞ、ババア。そもそも、そっちから突っかかってきたんだろ。自業自得だ。金属バットで武装してたんだし』と、ケーイチは心の中で叫んだ。


「瀬奈さん、訴訟を起こしますからね! 覚悟してください!」

「すみません、すみません」


 ケーイチの父親は、ケーイチの頭を押さえ、地面に擦り付ける。ケーイチは屈辱の何物でもなかった。暴力と恐怖心で意志疎通を封じている親は、子育て失敗だ。子と親は同時に、一緒に成長するもの。それが出来ない家族は所詮、ごっこだ。子育てに責任を持つという事は、おままごとから卒業しなくてはいけない。


 その場は、一応、収まった。


 帰り道で父親は「何のために柔道をやらしてやってる!? いい加減にしろよ!? 当分ゲーム禁止だからな!」と逆ギレをする。父親は小さな会社社長だ。チープな自尊心が傷付いたのだろう。


 ケーイチはいつか、コイツを殺してやろうと考えた。人生の一番の邪魔者は親だと思う。

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