048(イジメ女の弟)
ドローン部部長の中学生はイオリの弟だ。イオリはケーイチに掴みかかる。
「おい、よせよ。貧乳」
「てめえな…………!」
「良かったな。全国放送じゃなくて」
3台のテレビカメラがイオリを抜いていた。
「コイツ、ズルをしました! コイツ、ズルをしました! そのせいで弟が負けました!」
リポーターがイオリにマイクを向ける。
「ズルとは具体的にどんな手法ですか?」
「ズルはズルだ」
「ジメジメと陰湿でしょ。この女は」
高橋は円滑な運営すべく、吉川イオリを会場から連れ出す。
「お嬢ちゃん、今のが視聴率に影響したら訴えるからね」
「なっ、何でよ。脅すつもり?」「反省はしないようだね。よし、いいだろう。法廷で待ってるね。大会中は会場に入らないように。これはレッドカードだよ」
「ちょっ! 待てよ!」
高橋は会場に戻る。第2組がレースの準備をしていた。
ケーイチはシートをシルビアのトランクに入れて、仕舞う。イオリの弟、吉川が後を着けてきた。
「瀬奈ケーイチさん! 姉の無礼をお許しください!」
吉川は頭を下げる。
「あんな姉を持って君も大変だな」
「すみません…………。シルビアも所有してるんですか?」
ケーイチは少し考える。吉川はケーイチのGTRに発狂していた。よほどの車好きだろうと。
「君は車が好きなんだな」
「フロントとリアに付けられたキャンバー角にリアタイヤの焦げの跡。ドリフトやってます?」
「お前には関係ない」
「えっ?」
「恨むなら、イオリを恨め。イジメグループを仕切ってた女の弟だ。俺は、お前を恨むからな」
ケーイチはシルビアの鍵を確認してから、会場に戻る。市子がうろうろしていた。
「どした?」
「ケーイチ、大変」
「吉川イオリなら退治したよ。あのゴキブリ女」
「そうじゃないの…………私、ドローンを壊しちゃった。ごめん!」
市子は手を滑らせてドローン本体を落としてしまっていた。
ケーイチは市子に待つように言って、高橋の元へ行く。
「ケーイチ君、トラブルかい?」
「市子のドローンが故障したようです。俺のを一式貸しても良いですか?」
「問題ないよ。貸してあげて」
「ありがとうございます」
ケーイチは自分のドローンキットを持ち、市子と落ち合う。
「高橋さんがOKしてくれた」
「良かった〜」
『おおー! 1周19秒だー!』
 




