047(ドローンレース大会)
ケーイチと市子は遅れて中学校の駐車場に入る。体育館まで遠い辺りしか空いてなかった。重いR32スカイラインGTRのシートをケーイチが持ち、ドローンキット2つを市子が持って会場に向かう。
体育館の入り口で高橋さんが待っていてくれた。
「遅いよ、お二人さん。開幕セレモニーは終わったよ」
「すみません。GTRのフロントガラスを割られてしまいまして」
「そうか、悪質なイタズラだね。ケーイチ君は第1組だから急いで」
「分かりました」
ケーイチは靴を脱いでシートを持ち上げ、靴を下駄箱に入れて、中に入る。レースのスタート位置に近い、4つ並んでるパイプ椅子の内、誰も座ってない1つを畳み、R32スカイラインGTRのシートを置く。市子はケーイチのドローンキットを持ってくる。
「サンキュ」
「頑張ってね」
『スタート5分前です! 第1組は準備をしてください!』
ケーイチはシートに座り、ドローンにバッテリーを入れて、プロポとヘッドマウントディスプレイの電源を立ち上げる。ケーイチは手元からスタート台までドローンを飛ばして、準備万端。
第1組は、ケーイチ、少年、中年男性、ドローン部部長。
『準備は良いですか〜?』
「おおー!」
『3、2、1、レディーゴー!』
ケーイチ達、プレーヤーからは見えないが、スタッフがフラッグを振った。
キュー! キュー! キュー! キュー!
ケーイチはスタートダッシュに成功した。ファースト・パーソン・ビューに映し出されるコースと観客。画質は決して良くはない。それでも、難なく穴はクリアする。すぐに右コーナーだ。ゲートを潜りながら、高速でコーナーを抜けて、全速力で穴を抜ける。そして、左コーナーに入り、1周する。
『クラーッシュ!』
中年男性と少年のドローンが接触して、1機はコーナー出口のネットに引っ掛かり、もう1機は穴を形成する発泡スチロールにブレードが刺さり、止まった。
ケーイチは3周目にドローン部部長を周回遅れにしてフィニッシュした。スタッフがチェッカーフラッグを振る。
『瀬奈ケーイチ君のタイムは1分0秒57! これが、この大会の基準タイムとなります!』
ケーイチはヘッドマウントディスプレイを外すと、目の前に吉川イオリが鬼の形相で居た。
「おい、瀬奈。どんなズルをした?」
 




