042(ホスト狂いの女)
今日は金曜日だ。ドローンレース大会当日は日曜日。
ケーイチと市子はドローンの腕を競い合う。タイムはほぼ同格。コンマ0.5秒、市子が速い。
大会のレギュレーションは個人戦で、4人が同時に飛び、コースを3周するタイムアタックだ。大会運営の都合上、トーナメント方式や総当たり方式はできない。一発勝負だ。
みんな500万円が欲しい。ケーイチは高橋のクラウドファンディングで500万円を投資してるから、優勝すれば1000万円以上のリターンが手に入る。
ケーイチは休憩して他の参加者の偵察をする。一番強そうな、いぶし銀のオッサンだ。逆にケーイチに探りを入れられた。
「君、一緒にいる女の子は彼女かい? どんなセッティングをしてるの?」
「彼女です。セッティングは買った時からいじってないと思うけど」
「なるほど。ドバイのレースは見たかい?」
「いえ、見てないです」
「我々とはレベルが違う。優勝賞金は100万USドルらしいよ」
「そりゃ凄い」
「君とあの子はまだ若い。将来性がある。しかし、このレースでは私が勝たせてもらうよ」
「望むところです」
ケーイチは市子の元へ戻る。市子も休憩に入った。――市子は震えていた。
「ドローンの刺激が強すぎたか?」
「違うの…………」
「どした?」
「よ、吉川イオリが居る」
市子は体育館の出入口を指差す。女イジメグループのボス、吉川イオリが腕を組んで、市子にガン垂れていた。
「あんな、ホスト狂いしてそうな女、ぶん殴ってくる」
「やめて。そっとしておいて」
イオリがケーイチ達の元へやって来る。市子は更に震える。
「よう、オタク女」
「何の用だ、ブス」
「誰だ、お前」
「瀬奈ケーイチだよ」
「知らねえな。オタク女、コントローラー貸せ。私が遊んであげる」
「市子、大丈夫だからな。おい、不細工のホスト狂い、雑魚は去れ」
「さっきからウゼえな、お前。まあ、私は美女だから仕方ないけど。オタク女、貸せよ」
「鏡を見たことねえのかよ、不細工。細工するなよ。雑魚キャラがドローンなんて100年早いよ」
「てめえ、ウゼえって言ってるだろ」
「イオリだったかな? 貧しい胸は外出するな、貧乳女が」
イオリは涙目になる。ケーイチは痛い所を突いた。
「てめえら、許さねえからな!」
イオリは逃げるように去っていった。




