038(ネットスーパー)
高橋も市子の元へ来た。
「お二人さん、手応えはどうだい?」
「すっげえ面白いっす」
「私も! …………手が震える」
ケーイチも市子も手が震えてる。初めてのコース体験だ。刺激が強すぎた。
ケーイチに話しかけてきた男子中学生は40秒台だった。新たに設けられたドローン部の部長だ。
ケーイチはバッテリーの充電を繰り返し、休憩も挟みながら、ドローンをコースで飛ばす。4時間ほどトレーニングを続けていると、高橋が声をかけてきた。
「ケーイチ君、市子ちゃん。明日までは、自由に練習していいからね。でも今日はお開き。カメリハが入るよ」
「分かりました。市子、帰ろうか」
「うん」
ケーイチと市子はドローンキット一式を持ち、体育館から出る。
ケーイチはGTRのトランクを開けて、ドローンキットを仕舞う。
「ねえ、ケーイチ」
「どした?」
「大会が終わったら、私、病院に戻るね」
「そうか…………そうだな。ホスピタル・ブレイクは大会のためだもんな」
ケーイチと市子は、ケーイチの自宅マンションに帰る。駐車場でバックモニターを見ながら、駐車する。
ケーイチと市子はドローンキットを持って、エレベーターで上がる。マンションの5階にはまだ警察官が居た。
「瀬奈さん、お帰りなさい」
「お疲れ様です」
ケーイチと市子は部屋に入ると、すぐに呼び鈴が鳴る。ケーイチは防犯モニターを見ると、スーパーマーケットのユニホームを着た男性が立っていた。
「瀬奈ケーイチさん、居ますか?」
「はい。ネットスーパーですか?」
「食材をお持ちしました」
「すぐに開けます」
市子はバッテリーを充電していた。ケーイチはソファーで横になる。
「市子、力仕事させて悪いけど、食料を受け取って」
「腰、痛い?」
「痛くはない。痺れるだけだ」
「ごめん…………。行ってくるね」
「市子が謝るな。俺のヘマだ」
市子は玄関に行き、ドアを開ける。
「お待たせしました。ネット注文でご購入された品です」
「ご苦労様です」
ボックス3個に、野菜、肉、魚、調味料などがパンパンに詰まっている。
「冷蔵庫までお運び致しましょうか?」
「お願いします」
店員は一箱ずつ運び、冷蔵庫の前にボックス3個を置く。
「お、今流行りのドローンですか。最先端ですね」
「ええ、まあ」
「では、僕はこれで。ご利用ありがとうございます」




