035(ラーメン屋にて)
市子は食いぎみに彼女だと言った。警察官は苦笑いをしている。
「アハハハハ。失礼しま〜す」
ケーイチと市子は駐車場に行き、GTRのトランクを開ける。
「今度はこっちで行くぞ」
「気分で使い分けるの?」
「GTRはマニュアル車じゃないから左足に負担が少ないんだよ」
「あっ、ごめん」
「さあ、トランクにドローンキットを入れな」
「うん」
ケーイチはR35GTRを運転してラーメン屋に行く。丁度開店時間だ。市子はちょっとツラそうにしてる。
「大丈夫だからな。平日の11時だ、店が始まって間もない。客は少ないよ」
「う、うん」
ラーメン屋の駐車場に着くと、先客が1台だけだった。ケーイチと市子はGTRを降りて、ラーメン屋に入る。頑固一徹な大将とキャバ嬢みたいなケバい店員だ。カウンターが4席、テーブルが4つの小さな店。
「お客様、2名ですね」
「はい。いつものを2つと餃子」
「あら。かしこまりました」
「大将、ちわ」
「やあ、ケーイチ君にマイちゃん」
ケーイチと市子はテーブル席に座る。市子は逃げ出したい気持ちを抑える。大将が“マイ”と言ったからだ。ケーイチはそれを見抜いた。
「お水どうぞ〜」
店員が水道水をコップに入れて持ってきた。
「ありがとう」
「ケーイチ君、新しい彼女?」
「ええ、最近、付き合い出しました」
「ケーイチ?」
「ケーイチ君、モッテる〜。前の子はポイしたのね」
「ハハハ、まあ、そんなところです」
市子はケーイチを新鮮に感じた。こんな一面もあるのかと。それと、自分の異変を察知してくれた優しさに感謝する。
「貴女、名前は?」
「今井市子です」
「今井? もしかして、洋介君の妹かなんか?」
「兄を知ってるんですか?」
「なんとなく似てるな〜って思って。洋介君はこの店のヘビーユーザーよ。週に5回来る日もあるわ」
「そうなんですか。知りませんでした」
「ユックリしていってね」
店員は厨房に戻り、餃子を焼き始めた。
グツグツと煮出すスープ。カランカランと麺と菜箸が踊り、ジュワッと餃子が焼かれる。良い香りが漂う。
「美味しいのが、香りで判る。よだれが出そう」
「そうだろう。この店を、洋介さんが市子に教えてないのにビックリしたけど」
「兄貴、ああ見えてケチなんだよね」
「そうか? 洋介さんとつるんでる、近藤がヤバいよ」
「あのセクハラ野郎?」




