034(2台持ち)
ケーイチはマンションの通路に出る。警察官が数人居た。
「通報した瀬奈ですが、樋口は捕まりました?」
「瀬奈ケーイチさんですね。樋口は目下、手配中です」
ケーイチはその場で事情聴取を受ける。樋口に100万円を要求された事や葉っぱにヅケると言われた事などを話す。
ケーイチの部屋の前に警察官が2人、セキュリティ・ポリスをしてくれるようだ。樋口が戻ってきた時に取り押さえるのも兼ねて。
ケーイチはベッドで横になる。
「市子、パソコンで食料をネット注文しな。冷蔵庫が空っぽだから」
「うん」
市子は、ケーイチのパソコンを使い、スーパーマーケットのホームページに入る。
「ねえ」
「どした?」
「10億円もあるのに、殆ど無駄遣いや贅沢をしてないね」
市子は、ケーイチのカード決算を覗いてしまった。
「車2台持ちは贅沢だろうよ。R35GTRブラックエディションだぞ」
「いくら?」
「1000万円だよ」
「100台も買えるじゃない」
「市子って意外と下品だな」
「バカ。冗談よ」
「ハハハ」
「ウフフ」
今現在、市子の精神は正常だ。問題はケーイチだ。心身共に疲弊している。ロト7が大当たりしたのはいいが、それからカネを狙うクズに追い詰められてる。しかし、ケーイチは自分の利益しか考えられない。だから、市子には礼をする。
「ケーイチが真っ当で良かったよ。私の予知能力を悪用しないし」
「ちゃんと悪用させてもらってるよ。GTRとシルビア、くぅ〜! 堪らんちサマランチ」
「子供の頃からスポーツカーが好きだったもんね」
「ちょっと株で損したけど」
「いくら?」
「20〜30万円ってところだ」
「ケーイチは悪人にはなれないわね。とりあえず、食べ物を色々頼んだよ。今日の16時に届けるって」
「助かるよ。じゃあ配達が来る前にドローンレース大会の会場に行こうか」
「お腹空いた。何か食べよ?」
「寒いし、ラーメン屋に行くか」
「何ラーメン?」
「俺の行き付けは、醤油一本でやってる。病み付きになる味だぜ」
「そこに行こ」
「決まりだな」
ケーイチと市子はドローンキットを持って外に出る。警察官が待機していた。
「お出かけですか?」
「ちょっと昼飯とドローンレースに」
「ぶっ飛んでますね」
「文字通り、飛びますよ」
「そちらの女性は?」
「友だっ……」
「彼女よ」




