032(アクシデント)
ケーイチは自宅マンションにて、ウェブで高橋主催のドローンレース参加者の一覧を見ていた。高松と守山の名前があった。
「圧倒的センスで軽く、のしてやるぜ」
高松と守山はスタート3というタイプの200グラム以下のドローンを用意していた。安定性のスタート3、機動性のSS1C、と僅かだが差がある。
市子はまだ閉鎖病棟に監禁されていた。ケーイチは大会3日前にステルスミッションをするつもりだ。市子から病室の詳しいポイントや面会用の扉からの距離、外からは鍵が開くが、中からは開けれない等を確認する。
――次の月になり、いよいよ、ドローンレース大会の3日前になった。会場は仕上がっている。コースは8の字で交差する所は上段と下段に別れ、1メートル四方の穴を抜けないといけない。1周130メートルほどだ。コーナーには網でバンクが付いてる。観客のキャパは100名。ローカル放送のテレビ局も入念にカメラリハーサルをやってる。
ケーイチは実行に移す。携帯電話で連携する。
「必要最低限の物は持ったか?」
「準備OK」
「じゃあ、123GOで扉を開けるぞ。市子」
「1…………2…………3…………GO!」
ガチャ。……サッ、ガチャン。
ケーイチと市子は一連の動きをして、市子は“外”に出る。
「急ぐぞ、市子」
「うん」
ケーイチと市子は走って階段を降る。5階から一気にかけ降りる。
カツン……!
「あっ!」
「市子!」
市子がつまずき空を飛ぶ。ケーイチは咄嗟に受け止めて、背中から落ちる。グキッ。
「…………ケーイチ、大丈夫?」
「ううっ……腰が痛いけど大丈夫だ。行こう」
ケーイチの左足が痺れる。
ケーイチと市子は1階まで降りて、駐車場へ出る。ケーイチは左足を引きずっている。
「ケーイチ、早く〜! 車はどれ?」
「青色のシルビアだ。鍵は開いてる」
市子はシルビアのドアを開けて、荷物をリアシートに投げ込む。
ケーイチは何とかシルビアの運転席へ乗り込み、シートベルトをする。
「ケーイチ、早く出して」
「分かっている。また左足が痺れる」
「大丈夫なの? …………ごめん、私のせいだ」
「気にするな。俺のヘマだ」
ケーイチは何とかシルビアを運転して、自宅マンションへ帰る。
作戦では、この後に直接レース会場へ行く手筈だったが、ケーイチは休憩する。