025(深夜に放火)
家電量販店の店員は電卓を弾く。
「毎度ありがとうございます。2機コミコミで45万円でどうでしょう」
「もう一声欲しいな〜」
「44万円!」
「43万5000」
「…………分かりました。43万5000円でお買い上げで宜しいですね?」
「ああ。市子、いいな?」
「うん」
200グラム以下のドローンと言えど、補器類を含めて、意外とデカイ箱だ。それが2つ。
ケーイチはレジでクレジットカードで支払う。
ケーイチと市子はドローンキットの箱を持ち、駐車場に行く。
「ねえ、ケーイチ」
「トランクに入るかな?」
「違うの」
「じゃあ何?」
「ありがとう。ドローンを買ってくれて」
「市子なしには、得なかったカネだ。いくらでも、お礼するよ」
「ありがとう。また降ってきたら、教えてあげるね」
「早く二十歳になりたい」
「迷惑メールはまだ来るの?」
「毎日1000件。手放しでは喜べない。クズな家族のせいで」
「私が殺っちゃおうか? 深夜に放火して」
「市子は手を汚すな。後2年我慢すれば解放される」
ケーイチはGTRのトランクを開けて、ドローンの箱を押し込む。なんとか入った。
ケーイチは市子を自宅まで送り、箱を1つ渡す。
「またな」
「本当にありがとね」
ケーイチは帰ろうとGTRのトランクを閉めた時に、黒いR32スカイラインGTS―tタイプMが来た。洋介だ。
「ケーイチ、久しぶり」
「お久しぶりです」
「35Rか。高級スポーツカーだな。市子の未来予知で宝くじ当てた?」
「ええ、まあ」
「俺にも教えてくれりゃいいのに」
「そうですよね。S15シルビアも買ったので、いつでもドリフト出来ますよ」
「じゃあ、今夜辺りに山に行くべ」
「峠ですね。行きましょう」
「また後で連絡するから」
「電話でお願いします。メールだと、詐欺メールに紛れちゃうので」
「分かった」
「それでは、また後で」
ケーイチはGTRを運転して、自宅マンションに帰る。途中、コンビニでペペロンチーノを買う。ふと、マイとの初デートを思い出した。あの時もケーイチはペペロンチーノを食べていた。そして、初キッスを躊躇った。
ケーイチは思い出を大切に、自宅マンションでペペロンチーノを食べる。
「マイ…………ちゃんと耐えてるよ」