表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/97

021(マイの死)

「マイが…………死んだ?」

「一昨日、交通事故で。相手は飲酒ひき逃げらしい。葬式に行きなさい」

「…………招待状が来てません」

「はっ? 招待状?」

「招待状が来てません、招待状が来てません」

「ケーイチ君、大丈夫? 招待状って何?」


 ケーイチは葬式や通夜に行った事がない。親がセーブしていた。意味は特にない。ケーイチは招待状が来るものだと勘違いしていた。


 ケーイチは膝から崩れる。マイとたくさんの思い出がある。ファーストキスやセックス。ケーイチの閉ざされた心を癒し、解き放った。


「マイ…………! どうして!」


 ケーイチはボロボロと涙を流す。初めてだ。ケーイチは初めて人のために涙を流す。


「ケーイチ君、今から葬式に行こう」

「えっ…………心の整理をしてから」

「葬式そのものが心の整理だよ」

「分かりました。行きます」

「私の車に着いてきて」


 ケーイチは原チャリのエンジンをかけて、高橋のホンダ、レジェンドの後を着いていく。


 ケーイチがマイの自宅に来るのは、初めてだ。マイの親はケーイチと付き合うのを反対していた。


 高橋は車を降りて、ケーイチを待つ。ケーイチはおどおどしながらバイクを降りる。


「ケーイチ君、早く」

「はい」


 マイの母親が待ち構えていた。


「あなたが、瀬奈ね? 中卒のアホの分際で、マイを拐かして。マイにはね、あなたと違って未来があるの。ねえ、マイ」

「田中さん、そうおっしゃらずに」

「イカれてる…………」


 マイの母親は、マイの死を直視出来ていない。


「帰ってちょうだい。あなたに焼香をしてもらわなくて結構。高橋さん、お忙しいところすみません」

「あっそ、帰らせてもらう」


 ケーイチは原チャリで自宅マンションに帰る。


「バカな親。跳ねた奴を恨めよ。…………俺だって…………悔しいんだよーーー!」


 その日から、ケーイチは酒に手を出すようになった。まだ17歳だ。何をどうしたらいいか解らない。とにかく、ストレスを減らそうとした。タバコも吸う。そして、我に帰る。


「結局、中卒のアホだ。ゴミみたいな人生、どう締め括るか」


 ケーイチはノートパソコンに『私財は全てユニセフに寄付します。法定相続人も無視して、全てユニセフに寄付します』と打ち込んで、プリントアウトして、テーブルに置く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ