020(死別)
――ケーイチは無事に10億円を手にする事が出来た。アパートを出て、3LDKのマンションに引っ越した。後1年で車の免許が取れる。ケーイチはドリフト用にS15シルビアのスペックRと町乗り用に市販車最速のR35GTRブラックエディションを考えていた。R35GTRはニスモのが馬力が高い。しかし、筑波サーキットではブラックエディションが最速だ。
数日後、ケーイチの知らない番号から電話がかかってきた。適当に無視していても、何度も着信を残す。仕方なく出てみる。
「もしもし、どちら様?」
「アフリカに投資しませんか? 投資額に応じっ……」ピッ。
ケーイチは速攻で電話を切り、着信拒否に設定する。すると違う番号から電話がかかってきた。
「もしもし、どちら様?」
「中国の不動産に投資しませんか? 年利50パーセントでっ……」ピッ。
ケーイチはその番号も着信拒否に設定する。
ケーイチの家族が嫌がらせで、SNSにケーイチの個人情報をアップしていた。『宝くじが当たって10億円持ってます』と。
ケーイチの携帯電話にひっきりなしに詐欺電話、メールが来る。しかし、携帯電話の名義人は父親、電話番号やメールアドレスを変えてもバレてしまう。ケーイチは携帯電話の電源を落とした。
ケーイチは、たまに携帯電話の電源を入れると、1000通の詐欺メールが入っていた。
「…………うんざりだ!」
ケーイチは怒りと伴に自分が壊れていくのを感じ取っていた。しかし、精神科へは行かなかった。ケーイチのプライドが許さない。
ケーイチは原チャリに乗り、今日もセミナーへ行く。
公民館には人だかりができていた。
「おお! スゲー!」
「浮いてる!」
「あれ、ラジコンかな」
「いくらするんだろ?」
「何かゴーグルかけてない?」
ケーイチは人混みをかき分けて、公民館の中に入った。
そこには、ドローンが浮いていた。操縦者はセミナーの座長、高橋。ヘッドマウントディスプレイを装着していた。
「高橋さん、それは…………」
「ちょっと待ってね〜」
高橋はスティックタイプのプロポを操り、ドローンを着陸させる。そして、ヘッドマウントディスプレイを外す。
「ケーイチ君、平然としてるね」
「えっ? どういう意味ですか?」
「マイちゃんが亡くなったよ」