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002(心の叫び)

 ケーイチは5歳の時に兄の影響で柔道を始めた。地元の柔道クラブだ。初めの3年間ほどは楽しくやっていたが、観たいアニメやテレビゲームを制限されて、次第に柔道が苦痛になっていく。ケーイチは何度もサボろうとしたが、親は強制的に連れていった。


 ケーイチの両親は、ケーイチが学校でイジメられてるのを知らなかった。柔道を強制したのは、ただ単になんとなく怪我に強く育って欲しいという親心からだ。ケーイチは、親がノープランで柔道を強制するのを薄々感じ取っていた。「辞めたい」と懇願すると、親は「初段を取るまでは続けなさい」とレールを敷く。柔道初段を取ったからといって、何がどうこうなるものではない。三段以上を取らなければ、レフェリーにすらなれないからだ。


 小学校でのイジメはそれほどエスカレートしなかったが、ケーイチの心に重度のトラウマを植え付けた。この頃から悪い事が起きると、周りの連中に謀られたんだと思うようになる。良い事が起きても、周りが上手く回してくれたのだろうと考えるようになった。


 ケーイチは両親に何度もイジメのサインを出した。それは八つ当たりだ。飼い犬を虐待したり、弟に暴力を振るったりと。両親は、北風と太陽なら北風派だ。両親は、ケーイチの頭を叩くなど暴力振るっては咎める。両親は根本的な解決をしなかった。


 ケーイチは見えない鎖に繋がれている。金剛石でできたかのような頑丈で強靭の心の鎖だ。


 ある日、小学校の給食で筍の煮物が出た。ケーイチは給食を取りに列に並ぶ。


「あっ! ケーイチ君のは特別に用意してあるからね」

「ホントー?」


 ケーイチはワクワクしながら、お椀を渡された。そこには、筍の根元が2つ入っていた。食べられる物ではない。イジメだ。ケーイチは無言の圧力を感じて、そのままお椀を持って、自分の席に戻る。


 ケーイチは給食センターのせいにはしなかった。クラスメートの連中が悪いと考える。また謀られたと。


 ケーイチは筍の煮物を残し、残飯として捨てようすると、担任の荻野が「残すなー! 食べ物を粗末にするなー!」と怒鳴り付ける。


『筍の根元を食えるかー!? そもそも食べ物かこれ? バーカ、ナード、マヌケ、ザコ、カス、クズ、アホ!』とケーイチは心の中で叫んだ。


 クラスメートの市子が間に入り、荻野に説明する。バカな荻野は理解出来なかった。「根元でも筍だろ、マザコン」だと。

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