018(過小申告)
土曜日の朝10時にケーイチは再び宝くじ売り場へ行く。
「当たってるか調べてください」
ケーイチは財布からロト7の券を出す。
「はい。お預かりしますね」
40代のオバチャン店員が対応した。
ピー……カタン…………ビービービー。
「当たった?」
「お、お、お、おめでとうございます! 1等10億円の大当たりです!」
「やったぜ!」
「この当たり券をお近くのみずほ銀行へお持ちください」
「分かりました」
ケーイチは券を返される。
「あの、随分とお若く見えますが、未成年の場合は保護者と一緒に銀行へお越しください」
「…………分かりました」
ケーイチは自宅アパートに帰り、ベッドでじたばたする。
「嬉しいけど…………嬉しいけど…………親にバレる。あっ、市子にお礼をしなきゃな」
ケーイチは市子にショートメールを送る。
『ありがとう。宝くじが当たったよ。いくらか分けようか?』
『要らない。マイと仲良くね』
ケーイチは市子の素っ気ない態度が理解出来なかった。ケーイチは何度も市子に救われている。
ケーイチは原チャリに乗り、実家に帰る。母親が玄関掃除をしていた。
「ただいま」
「会社をクビになってカネがないからって、無心しに来たの?」
ケーイチはカチンと来たが、ぐっと我慢した。
「ちげーよ、クズ。宝くじが当たった」
「嘘。いくら? クズ?」
「10万円。未成年の場合は銀行に保護者が帯同しなきゃいけないって」
ケーイチはちゃんと過小申告をする。
「仕方ないわね。着いていってあげるから20パーセント寄越しなさい」
「2万円ね。いいよ。じゃあ来週の月曜日に迎えに来るから」
ケータイはS13シルビアを売却して銀行までのタクシー代を捻出する。売却価格は10万円程度。
そして、月曜日の朝。ケーイチは印鑑や免許証を持ち、タクシーに乗り、自宅へ行く。玄関には、父親、母親、兄、弟が待っていた。
「お客さん、お出迎えですか? それとも、皆さん乗せてくの?」
「聞いてきます。待っていてください」
ケーイチはタクシーを降りて、玄関に行く。
「何やってるの? 母さん、行くぞ」
「ケーイチ。父さん達も一緒に行く。社会勉強だ。いいな?」
「仕方ねえな。母さんだけタクシーに乗って、後は自家用車で着いてこい」