015(引き寄せの法則)
ファミレスで食べてると、マイはケーイチを宗教紛いの啓発セミナーに誘った。ケーイチは乗り気だ。無料と聞いて。ケーイチは変わりたい願望が駄々漏れだ。
「この“希望のスパイラル”のセミナーを聞いてから、偏差値が78まで上がったよ」
「凄いね。でも効果は勉強だけ?」
「引き寄せの法則よ。成功に関する事なら、小さなものから大きなものまでカバーできるよ」
「そりゃ凄い。そのセミナーはいつあるの?」
「明日もあるわ。でも明日は私、都合が悪くて」
「場所が判れば、1人で行けるよ」
「そう。それなら、携帯電話のアドレス交換しておこ。私達は付き合うんだし」
「ああ、分かった」
ケーイチとマイは携帯電話のアドレス交換をする。
「キスはいつする? ケーイチ君もファーストキス?」
「ちょっと待った。ペペロンチーノを食ったばっかりだぜ? こっちにも、その〜あの〜」
「フフフ。また今度ね」
マイは良い子だ。それはケーイチの閉ざされた心を開こうとしているからだ。
外は暗くなり、雨が降ってきた。
「どうしよ。傘持ってない」
「ケーイチ君、大丈夫。タクシーを呼ぶよ」
「マジか。金持ちだな」
マイは携帯電話でタクシーを呼ぶ。
ケーイチとマイは店内で雑談をしながらタクシーを待つ。
「ケーイチ君、ドローンって知ってる?」
「蜂?」
「違う違う。う〜ん……、4枚羽の無人ヘリコプターみたいな物かな」
「マルチコプターってヤツ?」
「よく知ってるね。それなら、話は早い。セミナーではドローンの研究も平行してるの」
「面白そうだな」
チカチカとヘッドライトが点滅する。タクシーが来た。
ケーイチとマイはタクシーに乗り、まずはケーイチのアパートへ向かう。
「明日は公民館でセミナーを開くよ。あっ!」
「マイさん、どうした?」
「今日のセミナーに間に合う時間だ。ドライバーさん、公民館に行き先をチェンジして」
「わっかりました。公民館ですね?」
タクシーは左折レーンから右折レーンに入る。
「ドキドキしてきた」
「私が着いてるから大丈夫よ」
タクシーは公民館に着き、マイは料金を支払う。
「行こ。セミナーの座長は高橋崇さんよ。優しい人だから」
「お、おおぅ」
ケーイチはマイに連れられて、公民館に入る。50人ほどが椅子に座り、講義を聴いてる。