014(再会)
ケーイチは優しく教えてくれる洋介を尊敬していたが、車に乗ると左足が痺れる。上手くクラッチを操れない。
「どうした、ケーイチ。ステアリングを切ったら、アクセルを吹かして、一気にクラッチを繋ぐんだ。同じミスを繰り返すのは悪い癖だぞ」
「腰が痛いんです」
「その年で腰痛持ちか。整形外科には行った?」
「2年前に行ってますよ。安静にしてれば治ると言ってましたが、2年経っても一向に快方に向かいません」
「そうか…………。やっけいだな」
「もういっちょ、お願いします」
ケーイチは円書きを難なくこなせるようになった。痺れる脚で。
そして、会社で近藤の僻みはエスカレートする。洋介の居ない所で、ケーイチの胸ぐらを掴み「生意気なんだよ、クソガキ! お前は免許がないんだぞー!」と幼稚な脅し文句を言う。
『お前のがクソガキだろ、大人子供、アダルトチルドレン、逆コナン』とケーイチは心の中で叫んだ。
ケーイチは仕事帰りに、不穏な空気を察知した。眼鏡をかけた女子高生がヤンキーに絡まれてる。
「助けて!」
「ちょっと待てよ、ねえちゃん。セックスは気持ちいいよ」
ケーイチはヤンキーの背後から熊落としを決める。暴れる男は次第におとなしくなっていく。失神してくれた。
「お嬢ちゃん、大丈夫?」
「ケーイチ君?」
「誰」
「忘れちゃったの? マイよ、マイ。中学生の時、隣の席だった」
「ええ! マイさん? 久しぶりだね」
「久しぶり〜。助けてくれたお礼に何か奢るよ」
「気持ちだけでいいよ」
「じゃあ、私と付き合わない?」
「俺と付き合っても、マイさんには良い事ないよ」
「ケーイチ君に良い事があるなら…………ねえ、付き合って」
「お、おおぅ」
ケーイチはマイに気圧された。
ケーイチとマイは近くのファミレスに入る。
「何でも好きなのを頼んで。私が出すから」
「いや、デートなら男が出さなきゃ」
「チンピラから助けてくれたお礼がしたいのよ」
「…………分かった。今日のところは、ね」
「じゃあ、まずはドリンクバーね」
「おおぅ」
ケーイチはペペロンチーノを注文してドリンクバーでコーラを淹れてくる。マイはハンバーグステーキのセットと烏龍茶だ。
「何か新鮮ね」
「そうだね」
ケーイチは携帯電話とウォレットチェーンを確認してからユックリ飲み始める。




