012(ダサ坊には厳しく)
――ケーイチと市子はアマチュア無線技士4級に受かった。ケーイチは市子に大きな借りができた。
学校でのイジメは、守山というクラスメートが主導してケーイチをいじる。ケーイチが痔だと噂を流して、陰湿陰険なイジメを行う。しかし、守山はダサ坊で発信力がなく、噂は3〜4人程度しか拡がらなかった。
休み時間になると、ケーイチは守山を殴る。
「ちょっ、待て! 何で俺にはやり返すんだよ!?」
「黙れ、ダサ坊」
「痔! 痔! 痔!」
ケーイチは守山の顔面をボコボコにしてから席に着く。
守山は殴り返されるのは計算になく、呆然とする。それから、守山はケーイチの後ろに立ち「背骨を殴るからなー!」と、ほざいて、拳でケーイチの背中を殴ろうとした時、ケーイチは椅子を持ち上げてガードする。ガン!
「いっっってぇぇーーー!」
「ざまあ」
守山の指の骨が折れてしまった。雑魚には厳しく、イケイケには優しく。
守山を病院送りに出来た。ケーイチは満足だった。
その日の夜、ケーイチの家に、守山の母親から電話がかかってきた。出たのは、父親だ。
「うちの息子が、お宅のケーイチって子に指の骨を折られたのよ。家庭裁判所へ訴えますからね」
「すみません、すみません。すぐに謝罪に伺います」
「来なくて結構!」ガチャン!
父親は子供部屋に行き、ケーイチの頭をいきなり殴る。
「何しやがる!?」
「いい加減にしろ! 何のために柔道をさせてやっとると思うのよ!? ちゃんと三食食わせてやってるんだぞ!」
気違いの親が怒ってる。ケーイチはこういう時に黙ってしまう。
『この気違い! 虐待だろ! 暴力で“いい子”にコントロールしたいのか!? クズ!』とケーイチは心の中で叫んだ。
ケーイチの父親はまたチープな自尊心が傷付いてしまった。自分で立ち上げた建築会社が傾きつつあるからだ。『倒産させたら、世間体が! 取引先に怒られる!』それしか、頭になかった。
大人の都合に振り回される、ケーイチ。ついテロを起こして楽になりたいと考えてしまう。
「いいか!? 2度と人様に暴力を振るうなよ?」
『イジメのサインに気付かない、お前らが諸悪の根源だろ』とケーイチはまた心の中で叫ぶ。
ケーイチは心のモヤモヤから、祖母の年金を盗む。100万円ほどのタンス預金。5万円を抜き取る。