胎動
「結構貯まったわね」
―――あれから一週間。裏路地とはいえ、あれだけの騒ぎを起こした訳で。
何かあるかもしれないと気を張っていたが、どうやら杞憂だったようだ。
「お仕事楽しかったよ!フィーネ頑張った!」
「そうね、ありがとうフィーネ」
「えへへ」
コーディリアに頭をなでられてニコニコしている。この間の一件以来、親密さが増しているのは気のせいではないだろう。
「どうする?もう切り上げて帰るのか?」
「そうね、十分だと思うわ。フィーネ、接続は大丈夫?確か一・二週間は大丈夫って言っていた気がするけれど」
「うん、大丈夫だよ。いつでも大丈夫だよ」
「じゃあ明日の晩くらいには帰りましょうか。明日の昼間はお土産でも観光でも自由にしましょう」
「了解した」
「フィーネお菓子買いたい!」
「明日連れて行ってあげるわ。おいしそうな所を見つけたの」
「ほんと!?楽しみ!」
「こんな所か。じゃ俺は寝るぞ。お疲れさん」
「おやすみー」
「おやすみなさい」
因みに、当然だが部屋は別である。
「―――定域レイトス。異常な魔力反応を確認しました。死霊魔術の類です。恐らく“あの”事件の生存者かと」
「余計な詮索をするな」
「・・・失礼致しました」
「ふん、だがその予想は正しいだろう。死霊魔術など一部の禁呪使いか吸血鬼くらいしか使えんからな」
「恐縮です」
「・・・機会を待て。わずか二名とはいえ非常に強い力を持っている。確実に仕留める準備とタイミングで行え。いいな」
「了解いたしました」
さて、どうしたものか。死霊魔術を完全に使いこなせるようなら厄介だが」